「Spotifyはレコード産業の敵なのか味方なのか?」それが問題だ。結論から言うと、味方、というよりも、救世主かもしれない。Spotifyが音楽産業の将来に与える影響を知りたければ、Spotifyの普及率がもっとも高い国のレコード産業の売上を見ればいい。Spotify発祥の国、スウェーデンだ。
特集
- イギリス上陸時、エックが「Spotifyで音楽産業のエコシステムを再構築する」という志を述べたことを書いた。エックは、自分たちもその一員となった、Facebookに集ったソーシャルアプリの大群が、Facebook上に豊かなエコシステムを築き上げているのにインスパイアされたのだろう。
- イギリス上陸時、エックは、「Spotifyの平均利用時間は、72分/日です」と述べたことがある。Youtubeが平均10分/日であることと比較すると上出来であるが、アクティブユーザー数で見ると、音楽プレイヤー型のSpotifyは、ラジオ型メディアのPandora Radioに大きな差をつけられている。
- Spotifyプラットフォームをローンチさせた日。Spotifyは、ラジオ機能をリニューアルした。iPhoneにはアップル社製のアプリ、たとえば『音楽』や『天気』がデフォルトで搭載されているが、同じように『ラジオ』アプリを、Spotifyはデフォルト・アプリとして再登場させた。
- 今や無敵にみえるSpotifyだが、「弱点がいくつかある」と指摘されていた。ひとつ目はコミュニケーションだ。Spotify の「プレイリスト共有」は、サードパーティのsharemyplaylist.comで盛り上がりを見せ、「ソーシャル・プレイリスト」の世界を確立したが、例えばLast.fmや往年のMySpaceのように、会話と人間関係を伴うコミュニケーションを実現できていなかった。
- 実は、2010年にアメリカ進出、というのが元々の予定だった。だが、1年以上も手間取る事態が起こった。メジャーレーベルとの交渉である。
- イギリスで本格サービスインする際、CDとのカニバリズムを恐れるレーベルの経営陣に対して、エックは次のように説得した。「イギリス人はCDを年に一枚(希望小売価格12ポンド)しか買いません。フリーミアムに取り込めば年12ポンド以上支払ってくれますよ」
- イギリスの音楽シーンが揺れだした2009年2月、スウェーデンでも違法ダウンロード取締法が施行された。その後わずか9ヶ月で、スウェーデンのレコード産業の売上が18%も改善した。CDの売上増が9%。デジタル売上は80%もアップした。このデジタル売上急上昇の内訳が、他ならぬSpotifyだった。
- 「どうして日本にはSpotifyが入ってこないの? JASRACのせい?」そう、単刀直入にたずねたい音楽ファンもいらっしゃることだろう。そこで、ここでちょっと基礎をおさらいしておこう。著作権法では、著作権と著作隣接権がある。
- MOG(モウグ)、というアメリカ発の定額制音楽配信サービスがある。フリーミアム音楽配信ではないのでSpotifyほど爆発的に成功したわけではない。が、後発ながら、老舗のナップスターやラプソディとは一線を画した素晴らしいユーザビリティーで市場に受け入れられた。
- さて、お待たせした。本章の主人公に再登場願おう。ジョブズがiPodとiTunesを発表し、音楽とITの新時代を切り開いて間もない2002年の頃のことである。スウェーデンはストックホルム郊外の雑居ビルに、楽器好きな10代のプログラマが事務所を構えていた。
- サービスインからわずか3年後の2011年。『MySpaceミュージックを覚えていますか?』という書き出して始まる記事がITニュース・ポータルのテッククランチに掲載された。
- 「エンジェル投資家とヴェンチャーファンドから集めた数十億円を、ロイヤリティー(楽曲使用料)という装置を使って、レコード会社にごっそり移動する。音楽系ITのスタートアップというのは、そういうビジネスモデルです」
- アメリカでのPandora Radioの上場。上場すればPandora Radioを超える評価額がすでに付いたSpotify。「音楽系ITベンチャーは儲からない」というのが常識だったIT業界の常識をぶち壊し、世界では、ソーシャルミュージック・メディアは流行のビジネスになろうとしている。
- Spotifyが成功した理由の二つ目は、「違法ダウンロードよりもはるかに便利」だったからだ。「違法ダウンロードよりもずっと便利なサービスをつくる。そして、違法ダウンロードをしている層をすべてSpotifyの牧場に囲い込む」
- 2011年9月22日。サンフランシスコで開催されたf8カンファレンスには、世界中のメディアとデベロッパーが集った。スティーブ・ジョブズが壇上から去って後、世界のネチズンが最も注目するプレゼンテーションは、巨大SNSを創業した27歳のザッカーバーグのものになろうとしていた。
- 【音楽業界関係者必見!】 日本の音楽産業は鎖国状態? 世界の最新音楽ビジネスモデルを分析した特別連載特集がスタート!! 「4. ソーシャルミュージックで見えてきた 音楽産業の次世代型ビジネスモデル」
- 【音楽業界関係者必見!】 日本の音楽産業は鎖国状態? 世界の最新音楽ビジネスモデルを分析した特別連載特集がスタート!! 「3. ミュージシャンの起こした革命 ソーシャル・ミュージック・メディアの時代へ」
- 【音楽業界関係者必見!】 日本の音楽産業は鎖国状態? 世界の最新音楽ビジネスモデルを分析した特別連載特集がスタート!! 「連載第00回 2. Pandora Radioが地上波を越えNo.1に。対応に追われるアメリカ放送業界」
- 【音楽業界関係者必見!】 日本の音楽産業は鎖国状態? 世界の最新音楽ビジネスモデルを分析した特別連載特集がスタート!! 「連載第00回 1. 音楽の違法DLは世界で95% 解決できないiTunesと解決できるSpotify」