FOCUS

野生の本能で生きる獣・プロデューサー 西崎義展の功罪
「『宇宙戦艦ヤマト』をつくった男 西崎義展の狂気」発刊記念
牧村康正氏+山田哲久氏インタビュー


フリージャーナリスト 牧村 康正  株式会社アストロビジョン 代表取締役 山田 哲久
株式会社アストロビジョン 代表取締役
山田 哲久 (写真:右)
フリージャーナリスト
牧村 康正 (写真:左)

音楽のステージ制作プロデューサーとしてキャリアをスタートさせた西崎義展氏は、アニメ業界に歩を進め、『宇宙戦艦ヤマト』で空前のヤマトブームを生み出す。一匹狼の独立プロデューサーとして、周囲を巻き込みながら栄光をつかみ、破産と刑事事件(覚せい剤・銃器所持)によって転落し、そして復活から事故死へと続く激動の人生を送った。その西崎氏の実像に迫る書籍「『宇宙戦艦ヤマト』をつくった男 西崎義展の狂気」が話題を呼んでいる。西崎氏は映画音楽のプロデューサーとしても実績を残し、ヤマトのLPアルバムは昨年『アナと雪の女王』に記録を破られるまで長期間にわたり売上枚数1位を記録していた。悪評、罵詈雑言、あるいは賞賛と評価真っ二つのプロデューサー 西崎義展とはどのような人間なのか? 本書執筆にあたったフリージャーナリスト 牧村康正氏と、かつて西崎氏の部下であったアストロビジョン 代表取締役 山田哲久氏に話を伺った。なお、インタビュアーの屋代卓也(Musicman発行人)は若かりし日の数年間、西崎氏の書生として一緒に暮らしていた過去がある。
ちなみにこのインタビューは、自社の社員からの情報でこの本を知り、読後30数年ぶりに山田氏に屋代が連絡を取ったことがきっかけとなり行われた。
(インタビュー:屋代卓也)
2015年11月16日 掲載
書籍「『宇宙戦艦ヤマト』をつくった男 西崎義展の狂気」
Amazon:http://www.amazon.co.jp/dp/4062196743
講談社:http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062196741

その人生を文章にしたらこんなに面白い人物もいない

—— この書籍「『宇宙戦艦ヤマト』をつくった男 西崎義展の狂気」は山田さんが企画されたんですか?

牧村:はい。山田さんがこの企画を発案して、資料もある程度先行して集めていたところに私が加わりました。

—— 山田さんにとっては、自分の若き日の存在の証明でもありますよね。

山田:そういう部分も少しありますけど、企画の一番の動機は、映像業界、あるいは音楽業界でその人生を本にしたらこんなに面白い人物はいないと思っていたんですよ。

—— そうですね(笑)。

山田:だから何人かに書かないかという話をしたこともあるんですが、やっぱりノンフィクションの経験のある書き手には敵わないと実感しました。牧村さん以前にアニメ系の二人に依頼したんですが、「手に負えない」と降参しました。二人とも何冊か本を出している方なんですけどね。決して彼らの能力が低いということではなくて、一人の人間の裏表とか人生を掘り下げるのが得意な方でないと、西崎さんの人生は書けないと思ったんです。そんなことを考える中で、牧村さんと出会ったということですね。

牧村さんは、文章力はもちろんのこと、人間観察力、洞察力に非常に優れた書き手なので、何度読み返しても面白い作品に仕上がっていると思います。テーマが西崎さんですからエピソードが詰まりに詰まっていますし、大変読み応えのある本になりましたね。すでに多くの反響を頂いていますし、業界関係者も読んでいる人がかなりいて「話題になっているね」なんて声を掛けられると、作ってよかったなと思います。

書籍「『宇宙戦艦ヤマト』をつくった男 西崎義展の狂気」
書籍「『宇宙戦艦ヤマト』をつくった男 西崎義展の狂気」

—— 牧村さんは本を書き始めた当初はどのようなことを考えられていましたか?

牧村:前提として、僕自身は西崎氏と面識があるわけじゃないですし、アニメ業界のことも専門的にやっていたわけではありません。また、バブル期には西崎氏のように一攫千金で大金を稼いで転落していくというパターンの人たちが結構いたので、ものすごくめずらしい題材という認識もなかったです。割とありがちな栄光と転落の人生だなという気が最初していたんですね。

ですから、事前にざっくりとした資料はいただきましたが、即座に興味を持ったかと言うと、なかなかそういうわけでもなくて、考える順番としては「なぜ山田さんがそこまで時間をかけて、かつての上司の一代記をまとめたいのか?」ということを、自分なりに理解するところから入りました。それで最初に思ったことが、これは山田さんにも言いましたけど、「悪女に取り憑かれた男」みたいなことで(笑)。

山田:そんなことないんだけどね・・・いや、潜在的にあったのかな(笑)。

—— ありますよ(笑)。西崎さんはとてつもない毒気なので中毒になりやすいんですよ。

牧村:まあ毒気にあてられて一度は離れたものの、どこかで気になってしょうがないという愛着はあったんでしょうね。もう死んじゃったけど、ここらで一肌脱いで彼の一代記をまとめることが、自分に残された大きな課題だと思い至ったんじゃないかなと勝手に推測しました(笑)。ただ、山田さんが西崎氏について思っていることをそのまま反映させたら本ができるかと言ったらそういうことでもないですし、僕自身は山田さんの代弁者にはなれないですから、山田さんが考えていることを一度自分で噛み砕いて、一代記という形に表現し直そうと思いました。同時に関係者に話を聞いていったわけですが、最初の何人かの印象をまとめると、山田さんと同じように「悪女に魅入られた男」という印象を持ったんですよ。悪口や愚痴も相当聞きましたしね。西崎氏を無条件に褒めちぎる人は全くいなかったですよ(笑)。

—— やはりそうですか。

牧村:まず嘆き節から入る人が多くて、合間に少し褒めるというパターンですね。でも西崎氏と関わったことを後悔しているのかというと、おそらく後悔はしてないだろうし、非常に上から目線のような言い方になっちゃうかもしれないですが、今嘆いているこの人たちから「西崎義展」という存在を引いちゃったら、味気ない人生になってしまったのではないかと思ったんです。

—— ただ、西崎さんは普通には付き合えない人ですよね。発している熱量が大き過ぎて周りがやけどしちゃうような。

牧村:人徳で惹きつけるわけではないから、ときにはやけどもするだろうけど、やっぱり強烈なエネルギーがないと、善かれ悪しかれ誰もついていかないですけどね。

—— この本を書いている過程で、西崎さんへの印象の変化はありましたか?

牧村:まずは被害者に同情しましたよね。それが最初で、もっと言うと山田さんからは「西崎氏もひどいけど、今頃泣き言並べている奴も情けない」って聞いていたわけですよ。その話を聞いた後で実際に取材に入ったときに「なるほど。やはり嘆くには嘆くなりの理由があって、やっぱり西崎はひどい奴だ」という印象の方が強かったですね(笑)。それがだんだん取材を重ねて行くにつれて、被害者と加害者のドラマではなくて、最終的に西崎氏が『宇宙戦艦ヤマト 復活編』でどん底から這い上がっていく、ここがこの人の人生の真骨頂だな、これが本のテーマになるな、という結論にたどり着いたわけです。

山田:西崎さんの再起のきっかけとなったのは松本零士さんとの著作権裁判で勝利し明確に原作者として認められたことで、そこから西崎さんも「もう一本映画を作ろう」という決意が生まれましたよね。あのまま引きずったり、解決していなかったり、裁判で松本さんが勝利していたら、西崎さんは再び映画を作れなかったと思います。著作権裁判のときの西崎さんが書いた手記・上申書なんか読むと、とにかくすごい分量を書いていて、なおかつどんどん字が上手くなっているんですよね(笑)。拘置所での西崎さんは裁判に向けてすごく気合いが入っていたんでしょう。

—— 西崎さんの立ち向かう根性はすごかったですよね。だから、松本さんが西崎さんを蘇らせたとも言えるのかもしれません。松本さんは全く望んでいなかったでしょうが。

牧村:そういう側面もあるとは思います。ただし、裁判は『復活篇』を作る環境を整える一助にはなったと思いますが、現実的に新たに資金を集めて、新しい映画を制作・公開することができた最大の要因はやはり養子になった彰司氏との出会いだと思います。

我々は彰司氏の証言をとれていないので深く言及する立場にはないですが、彼が結局資金集めの責務を負って話を持ちかけたわけですから、西崎氏にとって後半生の最大のパトロンは彰司氏なんですよ。彼がいなければ、おそらく後からくっついてきた人たちだって、「一緒にやります」とはなかなか言えなかったと思います。彰司氏を褒めそやすわけではないですが、そういう縁を引き寄せた西崎義展のエネルギーの強さですよね、重要なのは。

—— 普通、彰司さんのような人間は現れないですよね。

牧村:『復活篇』の後、ヤマトが『2199』の成功へと続いたので、「財産目当てだろう」と後から言うことはたやすいでしょうが、少なくとも『完結編』の段階でヤマトは終わっていましたからね。マーチャンダイジング展開、例えばパチンコ台のヒットなどはありましたが、当時ヤマトの映画を作ればヒットする保証なんてなかったですから。

—— 「ヤマトはもういいんじゃないか?」という雰囲気の方が強かったかもしれないですよね。

牧村:そうですね。業界の中でもそう思う人はかなりいたと思います。そんな状況で彰司氏は養子縁組したのですから、いくらヤマトの権利絡みだったとしても半端な覚悟じゃ踏み切れない話ですよね。さんざん苦労させられながら、結果として『復活編』を父親に作らせたんですから大変な親孝行ですよ。
ちなみに屋代さんは『復活編』の話を聞いたときは、どう思われましたか?

—— つい5〜6年前の話ですよね。正直、私の中でヤマトは終わったと思っていましたし、あまり興味がなかったですね。

牧村:おそらく最初の『宇宙戦艦ヤマト』から『さらば宇宙戦艦ヤマト』、そして『完結編』くらいまでは同世代のファンだったら感想に大きな差はないような気がするんですが、『復活編」になると、観る人によって全然評価が違います。それは作品としての評価だけじゃなくて、「あの西崎が制作した」という行為に対する評価も含まれていると思うんですよ。

—— 純粋に映画だけの評価ではなくなっていると。

牧村:「今さら何を悪あがきやっているんだ」という見方もあるでしょうし、「前科者で破産者の老人がよくぞここまでやりきった」という見方もあるでしょう。それまでの西崎氏の生き方に対する評価が『復活編』という映画に対して込められていて、それゆえに多種多様な声が上がるのは分かるような気がしますね。




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