FOCUS

世界中の人たちが口ずさむ“日本音楽”を届ける
10周年を迎えた日本音楽アウトバウンド番組『J-MELO』
チーフ・プロデューサー 原田悦志氏
インタビュー

『J-MELO』チーフ・プロデューサー 原田悦志
日本国際放送『J-MELO』 チーフ・プロデューサー
原田悦志

日本の音楽を海外に紹介する音楽番組『J-MELO』が今年10月に10周年を迎えた。昨今「クールジャパン」と盛んに喧伝され、アニメ、アイドル、ヴィジュアル系などに代表される日本のカルチャーが世界を席巻しているとされているが、果たして現場では何が起こっているのか? また、日本の音楽・アーティストの海外進出は可能なのか、そしていかにして実現すべきなのか?10周年記念で発行された書籍【『J-MELO』が教えてくれた世界でウケる「日本音楽」】でも監修を担当、海外と日本の音楽の関係を見つめ続けてきた『J-MELO』チーフ・プロデューサー 原田悦志氏に話を伺った。
(JiRO HONDA, Kenji Naganawa)
2015年12月2日 掲載

J-MELOは外国人と日本の音楽を結ぶ「出会い系番組」

—— J-MELOは今年10月に放送10周年を迎えられましたが、率直なご感想をお聞かせ下さい。

原田:よく10周年を迎えられたなと思います。10年前は日本の音楽に対する関心が今ほどなかったので、現在これだけ多くの視聴者の方が観てくださることは大きな喜びであり驚きです。

—— 番組を始めた当初は番組が10年続くと考えられていらっしゃいましたか?

原田:全然考えていなかったですね。最初は番組へのリアクションも全くありませんでした。番組開始から半年後にインドネシアの視聴者から初めてメールがきて、それが最初のリアクションだったんです。ですからその半年間は誰が観ているのかも分からなかったですし、非常に辛い立場でした。

ちなみにその一通のメールはGacktさんのファンの方からだったんですが、それから少しずつメールが来るようになって、やっと5通集まったところで5曲のリクエスト特集をやったら、リクエストが集まるようになったんです(笑)。そこで、私は世界中の視聴者たちが「自分たちは○○が好きだ」と言う場所がなかったことに気づきました。それから視聴者を最優先で考えるようになりましたね。

—— 最初の頃はマーケティングも手探りだった?

原田:その通りです。今みたいにホームページもしっかりしていなかったですし、我々も彼ら視聴者が伝えたいこと、また何を欲しているのかが分かりませんでした。

—— 昔から海外に日本の音楽のファンはいたんでしょうか?

原田:いや、いなかったと思います。多くの外国人が日本の音楽にファーストコンタクトしたのが2008年でした。それはなぜかというと2006年が日本のアニメのピークで、その主題歌が流行りだして1、2年後の2008年に日本の音楽を聴きだした、という人が多いんです。僕らだったら、物心ついたときから日本の音楽シーンをある程度理解していますが、今のJ-MELOの視聴者の多くは、その基礎といいますか積み重ねがなく、21世紀以降の日本の音楽しか分からないんですね。

—— 2006年のきっかけとなったアニメというのは具体的には?

原田:『ONE PIECE』や『NARUTO』ですね。面白いデータがあって、海外の人たちに「一番好きなアニソンバンド、アーティストは誰ですか?」と聞いたところ、一位がラルク アン シエルだったんです。日本の人たちは、例えばJAM projectとかがアニソンアーティストで、ラルクは違うと思っているんですが、海外の人たちにとっては「アニソンを歌っている人」は全てアニソンアーティストなんです。

—— なるほど。

原田:hydeさんも「アニメがきっかけになることに最初は抵抗があったけど、そういう入り方であるのなら開き直ってやろうと思った」と仰っていました。私は2012年のラルクのマディソン・スクエア・ガーデン公演を観たんですが、一番盛り上がった曲は『READY STEADY GO』(アニメ『鋼の錬金術師』オープニングテーマ)で、観客がみんな歌っていました。

—— 順番として、音楽ありきではなく、まずアニメ等のコンテンツがあってから音楽があるという感じなのでしょうか?

原田:ええ。これは決してポジティブな話ではなくて、アニソンしか日本の音楽にファーストコンタクトする手段がないんです。シンガポールでAFA(アニメ・フェスティバル・アジア)を主催しているショーン・チンさんにお話を聞いたところ、アニソンでしか日本の音楽が分からなかったと。それって今もあまり改善されていないと思います。J-MELOとアニソンくらいしか入り口がない。スポティファイには日本の音楽はあまりないですし、AWAやLIME MUSICは海外で聴けない。だから今も状況はそんなに変わっていません。

—— そもそも出会う手段がない?

原田:手段がない、あるいは未だに少ないので出会いがない。だからある意味J-MELOは出会い系番組なんですよ(笑)。さきほど視聴者を最優先と申しましたが、視聴者の言うことだけ聞いていると、それはそれで飽きられてしまいますので、僕らはあえてみんなが知らない音楽を伝えたりもします。ジャズもあればクラシックもある。日本の音楽ってこれだけ幅広く、多様なんだよと伝えることが大切だと思っています。

—— ポップスだけを紹介しているわけではないと。

原田:ですから、J-MELOはJ-POP番組ではないんですね。今年初めてウェブサイトの中でショーケースをやりまして、2013年以降にデビューもしくは結成したバンドやアーティストを取り上げました。そのときに知名度がほとんど0に近いアーティストにもメールが何千通と届く様子を見て、世界中の人が新しい日本のアーティストを求めていると強く感じました。

またJ-MELOは100%音楽のことのみで番組作りをしています。そこは2つ理由があって、1つは28分しか放送時間がないので、そこでできるだけたくさんの音楽を詰め込むには寄り道がし辛い。もう1つは、日本のバラエティ番組の背景が海外の人には分からないんです。日本でウケるものでも、海外の人には全部説明しなければならない。説明する時間を取るんだったら、その分、より多くの音楽を伝えた方が良いんではないかという考えで番組を作っています。




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