FOCUS

JASRACのライバルとなった男
『やらまいか魂 デジタル時代の著作権20年戦争』発刊記念
(株)イーライセンス 代表取締役会長 三野明洋氏
インタビュー

イーライセンス 代表取締役会長 三野明洋氏
株式会社イーライセンス 代表取締役会長
三野 明洋

今年4月、公取委によるJASRACの独禁法違反判断が最高裁で確定した。争点となったJASRACと放送各局との包括契約に異議申し立てを行い、判決後も沈黙を貫いていた(株)イーライセンス創業者 三野明洋氏がこれまでの経緯を綴った『やらまいか魂 デジタル時代の著作権20年戦争』が出版された。今回は発刊を記念し、三野氏と旧知の仲であるMusicman-NET連載『未来は音楽を連れてくる』著者の榎本幹朗氏にも加わっていただき、デジタルという新しいメディアの登場からコンテンツ、そしてそこに紐付く著作権まで幅広く伺った。
2015年12月10日 掲載

独禁法最高裁判決まで

榎本:今日はテレビなどで度々ニュースになりつつも、なかなか表に出て来て下さらなかった方との対談が実現しました。JASRACのライバル、イーライセンスを創業された三野明洋さんです。

今年4月、JASRACと放送各局との包括契約が、独禁法違反にあたるという判断が最高裁で確定しました。この結末に至るまで本当に二転三転されましたね。

三野:はい。これは説明が難しいのですが、公正取引委員会が行った審判での「排除措置命令の取消審決」、この審決の取り消しを提訴し、最高裁で認められたと言うことです。

榎本: 読者のみなさんに説明しますと、どの放送局もJASRACと包括契約というものを結んでいるんです。この包括契約のおかげで放送局は自由に音楽を流せて便利だったのですが、その使用料徴収方法にだんだん時代にそぐわない部分が出てきました。

というのも2000年に著作権等管理事業法ができて、JASRACが音楽著作権を独占的に管理する時代は終わることになったのです。それで三野さんがJASRACのライバル、イーライセンスを創業された。

これで競争が起こり、JASRACも時代に合った音楽著作権管理団体になっていくのではないかと期待感がありました。しかし先の包括契約のせいで放送局は、使用料がアドオンされることからJASRACの管理してない曲を使用したがらないという事態に。

これではJASRACと他の著作権管理事業者とのあいだに自由競争が起こらない。独禁法違反にあたるのではないかということで、公取委やイーライセンスがJASRACのあり方に異を唱えてきました。

三野:話が非常に複雑で、最初に公取委が2009年にJASRACに対し「包括契約」の排除措置命令を出して、今度はJASRACが提訴し、その公取委が審判で排除措置命令を取り消したんです。

その取り消したことに対して、我々は取り消しの訴訟を起こして、2013年11月1日に東京高裁が再取り消しの判決を下しました。その後、公取委とJASRACが最高裁に上告したんですが、結果、2015年4月28日に上告を棄却し、我々の勝訴判決になったと。そういう流れです。

榎本:僕が三野さんと初めてお会いしたのが、 公取委の排除措置命令をひっくり返された頃でした。なんともたいへんな時期だったんですね。

三野:いやいや。大変と言っても、そのときだけ大変だったたわけではないので。

榎本:3年前の夏です。「定額制配信の時代が来つつある。日本は乗り遅れている」というテーマで連載の初回を発表するとすぐに三野さんから仕事依頼が来まして。その後、さまざまな会社からオファーいただきましたけど、三野さんのオファーが最初でした。

三野:私はそういうことが好きですね。プロデューサー時代、戸田誠司さんのデモテープを聴いて最初に音楽制作の依頼を出したのは私でしたし、放送作家だった秋元康さんが作詞家になられる前に作詞の話をしたのも私だったと思います。

榎本:すごいですね。秋元さんのその後の活躍はいわずもがなで、戸田誠司さんも坂本龍一さんや小室哲哉さんと並んでデジタル時代の到来をミュージシャン側から引っ張ってきたオピオンリーダーになりました。

三野:彼とはShi-Shonenというグループでのデビューからの長い付き合いなんですが、彼も音楽プロデューサーからパソコンフリークになり、その後ゲームの世界でも活躍してきた人なので、デジタル的なコンテンツをクリエイトしていくということに対して、早い時期から取り組んでいたんです。

榎本:三野さんもそうで、コロムビアのプロデューサー時代から、新しいものにアンテナを張る方だったんですね。それから独立し、JASRACに次ぐ著作権管理事業者イーライセンスを創業されました。

今回、三野さんの著書「やらまいか魂 デジタル時代の著作権20年戦争」を一足先に読ませていただきましたが、インターネットの普及からこの20年にわたって、世間の知らないところ、著作権管理の最前線ですごいドラマが繰り広げられていて(笑)。

三野:ここに至るまでの発端は1995年、Windows95が出た年から始まっています。その年はコンテンツのデジタル化とメディアのIT化が一挙に始まったときで、残念ながらそういうことに対して音楽著作権の管理が追いついてなかったんです。

榎本:でも当時、日本の音楽業界は絶頂期で危機感は薄かったですよね。「ネットの時代に合わせて音楽業界は生まれ変わるべき。そうしないとたいへんなことになる」という話題はちらほらありましたが、実際に危機感を持って声を上げるアーティストは少なかったし、行動に移した業界人も少数派でした。

三野さんがいちはやく行動に出たきっかけは、森高千里さんの「渡良瀬橋」というCD-ROMを作ったらJASRACが時代にそぐわない判断をしてきて、揉めたからだそうですね。

三野:私が始めてCD-ROMに触れたのは、ピーター・ガブリエルの「XPLORA1」という作品なんです。それを見て「これだ!」と思いました。そのピーター・ガブリエルのCD-ROMを紹介してくれたのが先の戸田誠司さんです。

それまで私は音楽のプロデュースをやっていて、音楽だけ創っていたんですが「もう音楽だけではダメだな」と。なぜかというとMTVとかが出てきて、若い人たちが映像に当たり前に触れているのに、商品になると音だけしか聞こえない。

榎本:YouTubeに代表される、インタラクティブな動画の時代をいちはやく予見したことになります。当たりましたね。

三野:はい。「XPLORA1」は色々なドアがあって、入って行くと映像やらなにやら色々なコンテンツに辿り着くことができたんです。それで映像も含めて色々やりたいなと思い始めたのが1992年頃だったんです。

榎本:ここを読んで「CD-ROM、ふーんそお」と感じる方かもいるかもしれませんが、実はCD-ROMって今への影響がすごく大きいんです。mp3はほぼほぼCD-ROMのために開発され、ファイル共有の席巻につながっていきます。CD-ROMの動画圧縮技術も、動画共有の時代につながっていきました。

実際、アメリカでもCD-ROMに関わった人たちはその後、インターネット時代における仕組みづくりを先導していってるんです。テッド・コーエンというひとはワーナーでCD-ROMを手がけた後、AmazonがCDのネット通販に進出するのを手伝ったり、iTunesミュージックストアの設立時、裏で業界側のオピニオンリーダーになって導いたり。結果、アメリカからCDストアは消滅しました。

日本でも三野さんが、インターネット時代の新しい仕組みづくりへ向かって行くことになりました。

三野:そうですね。そして、その前提になったのがNapsterなんですね。




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