ー LIVING LEGEND シリーズ ー
【後半】新たな音楽&才能との出会いは一種の“麻薬”である

Tom's Cabin代表、SXSW Asia代表
麻田 浩 インタビュー


「国内で売れないなら逆輸入させよう」ピチカート・ファイブの成功

—— その後、日高さんとスマッシュを設立されますね。

麻田:日高氏とジェニカをほぼ同時に辞めて、83年にスマッシュを設立するんですが、2人ともやることがないので、最初は僕の伝手で昔のアーティストをやろうと、いくつかアーティストを呼びました。ただ、その頃、僕は呼び屋稼業にほとんど興味がなくなっていて、ジョニーのところでやっていた日本人アーティストをやりたいと思っていたんですね。でも、日高氏は呼び屋稼業に目覚めちゃってね(笑)。それで、SIONというアーティストに出会って、「よし、彼だったら」とSIONを連れてスマッシュを辞めたんです。

—— そこからコレクターズ、コシミハル、ピチカート・ファイブと仕事されることになるわけですね。

麻田:そうですね。呼び屋さんって何も残らないというか、権利をほとんど持ってないんですね。マーチャンダイジングといったって、そんな大して売れるものじゃないですしね。そこで音楽の権利ビジネスというのを教えてくれたのはジョニーなんですね。

—— また、麻田さんはSXSWへ日本人アーティストを送り込んでいますよね。これはどういうきっかけからだったんですか?

麻田:ピチカート・ファイブをやっていて、僕は個人的には良いアルバムを作っていると思っているのに、全然売れなかったんですよね。それで、ソニーを解雇されちゃって、コロムビアに飯塚さんというディレクターの方がいて、飯塚さんに相談して、レーベルを作ったんですね。だから、その頃やっていたコレクターズだとか、みんな一緒にして、セブンゴッド・レコードというのを作ろうということになったんです。それで、コロムビアに移籍してやったんですけど、やはりなかなか売れない(笑)。特に、ピチカートは関係者の評判はいいのに全然売れないんですよ。

—— 玄人受けする感じだったんですね。

麻田:そうですね、ただ僕の友人の外国人はみんな良いって言ってくれるんですよそこで、YMOの例じゃないですが、アメリカで売れていると言われれば日本の人も買うんだろうなと思ったんです。当時すでにSXSWはやっていたんですが、今ほど大きいイベントではなくて、もう一つの「ニューミュージックセミナー」という音楽コンベンションにピチカートを出したんです。そこで「サイコ・ナイト(Psycho Night)」というのを立ち上げました。日本語の「最高」と向こうの「サイコ」をかけて。それこそ、近田春夫くんのバンドやボアダムス、少年ナイフといったバンドを連れていってショーケースをやったんです。ピチカートは2、3年出したかと思います。

そうしたら、アメリカのソニーの人が凄く興味を示してくれて、その人は日本人アーティスト、例えば、NOKKOとか松田聖子をやっていたんですね。それで「ピチカートをやりたい」と言われたので、「500ドルでシングル3曲」というプランを作ってプレゼンしたんですが、ソニーで会社の配置換えというか、その人の上司が辞めてしまって破談(笑)。最終的にマタドールというレーベルの人が興味を示してくれて、マタドールからリリースして20万枚以上売れました。日本人で言ったらそれまで坂本九、ラウドネスが売れていたんですが、それに次ぐぐらいピチカートは売れました。

—— 20万枚は大成功じゃないですか。

麻田:そう思いますけどね。その後「ニューミュージックセミナー」が倒産しちゃうんですが、「ニューミュージックセミナー」にはSXSWの連中も来ていて、「オースティンでも日本人のショーケースをやってほしい」と言われていたんです。僕はそのときSXSWについてよく知らなかったんですが、「ニューミュージックセミナー」が潰れた途端にSXSWが急浮上してきて、そこで「Japan Nite」をやりだしたんです。

—— それが94年頃ですね。

麻田:ですから、もう20年以上やっていますね。本当は第二のピチカート・ファイブを出さなくてはいけないんですが、なかなか出なくてね。ある程度のところまで行っている連中もいるんですが、やっぱり難しいです。そもそも音楽ビジネスのシステムがだんだん変わってきたじゃないですか。

昔は、例えば、トーキング・ヘッズやB-52'sがいたサイアー・レコードはシーモア・ステインという男がやっていて、彼は直接電話してきて「何か必要なものあるか?」と言ってくれたり、向こうのレコード会社の人やマネージャーと一緒に取り組んでいたんですが、最近はそういうことがなくなっちゃったんですね。

—— アメリカのインディーズレーベルもシステムが変わってしまった?

麻田:そうですね。アメリカもレコードビジネスというのが本当に厳しいですよね。だからライブ・ネイションみたいな会社が、マドンナの権利を全部買っちゃうわけです。レコードが売れなくてもライブで儲かるとか、そういうシステムになるしかないんです。

—— 実際CDを売ろうというやり方ではもう通用しないですからね。逆にCDが売れなくてもライブでちゃんとビジネスになっているアーティストもいっぱいいますよね。

麻田:いますよね。

—— となると、今、コンサート・プロモーターがみんな儲かっているように見えるんですけど、麻田さんはもう1回やらないんですか?(笑)

麻田:僕も毎年、細々とはやっていますよ。2つ、3つとか。ちょうどSIONと独立した頃も、やっぱりSIONだけでは食っていけないから、呼び屋さんもやっていたんですよ。例えば、ラウンジ・リザーズとか、そういうのをやっていました。ラモーンズもその頃です。だから、今でも時々やっていますね。特にラウンジ・リザーズだとマーク・リボーというギタリストがいるんですが、彼関連はずっとやっています。

—— ちなみにスマッシュとはもう一緒にやらないんですか?

麻田:向こうは大きい会社になりましたからね。でも、マーク・リボーは一昨年、フジロックに出してもらったりしています。それこそ、彼はトム・ウェイツのバックだったり、本当に色々な人とやっています。今、アメリカで一番売れっ子のギタリストじゃないですかな。




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