ー LIVING LEGEND シリーズ ー
【後半】スターの概念を打ち破ったビートルズとの日々

元『ミュージック・ライフ』編集長
星加ルミ子さんインタビュー


ジョン・レノンは日本で「ビートルズは解散だ!」と叫んだ

—— しかし、どう考えても若干24歳の、唐突に肩書きを与えられて行った人がそこまでの成功を収めて帰ってくるというのはすごいことだと思います。

星加:知らないってことが強いんですよ。

—— 快挙の中の快挙ですね。

星加:結果的にはね、全部成功しましたから快挙でしたけど。

—— 草野さんからのご褒美はハワイ休暇だけですか?

星加:そうです。

—— それだけ(笑)?

星加:あと、草野さんはこのときの写真をマスコミのあちこちにばらまいていて、帰って来たときにはある程度知れ渡っていたんですね。そうすると、テレビとかラジオからゲストで出てほしいとオファーがあって、「嫌だ」と言ったら草野さんから「星加さん、この2ヶ月の旅行でいくらかかったと思っているの?」と怒られました(笑)。

—— 星加さんだって「いくら売ったと思っているの?」と言い返したいところなんでしょうけど・・・(笑)。

星加:元は取り返していますからね(笑)。それで「これからそういうオファーが来たら全部引き受けるから、星加さん出てよ」と。それで必ず「ミュージック・ライフ編集長」という肩書きをつけて出なさいと言われました。それからの私はすごかったですよ。深夜放送のラジオまでやらされましたから。「パック・イン・ミュージック」からNHKの「昼の憩い」まで(笑)。

—— 働き通しですね・・・。

星加:そうですよ。これを広告に換算したら大変なことですし、ここが草野さんの商売人としてのすばらしさですよ(笑)。当時は知りませんでしたけど、私はタレントでもないし評論家でもないですから、出演料はくれるんですけど特に安かったらしいんですね。草野さんは「それはあげるから」と(笑)。

—— 一年後の66年にビートルズは来日しましたが、ジョン・レノンは相撲力士に会えたんですか?

星加:いや、ホテルから一歩も出られなかったですから、それは無理ですよ。私が取材で会いに行ったら「買い物にも行けない」というから、お土産物屋さんをホテルの部屋まで呼んだんですよ。カメラ屋さんや紳士服屋さんとか、みんな呼ばれて来ていて。ちょっとしたバザーでしたね(笑)。

彼らは日本だけじゃなくて、どこへ行っても缶詰で、つくづくライブが嫌になったと言っていました。だって、彼らは遊びたい盛りの24~25歳の若者ですよ。それが、どこへ行っても一歩も出られずに缶詰でうんざりしているわけですよね。ジョン・レノンなんかは日本で買った法被を着て「ビートルズはミリオネア(億万長者)になったけれど、ブライアン、俺たちはいつ使えばいいんだい?」と言っていました。

—— (笑)。

星加:そして「ビートルズは解散だ!」と叫んだんですよ。

—— 冗談とは言え、その頃にそういうことを口走っていたんですか。

星加:ええ。ジョンはそういうことを言う人なんですよ。ブラックユーモアなんて言うと聞こえはいいですけど、単刀直入に色々なことを言う人なんです。知っている人たちは「ああ、またジョンのブラックジョークが始まった」と。私は逆にその顔を見て、「この人たちの間にそういう話があるのかな?」と思いましたけど(笑)。

—— 来日公演のあともビートルズの取材は続けていたんですか?

星加:もちろん。日本公演の終わった2ヶ月後にアメリカ公演でした。アメリカ公演で全14都市行けたんですがシカゴから始まって、ニューヨーク、シンシナティ、それからロサンゼルス、サンフランシスコとビートルズと一緒に飛行機に乗っていました。エプスタインには「もうロンドンに住めば?」とからかわれましたよ(笑)。

—— (笑)。

星加:彼らはいつ会っても、すごく感じ良かったです。本当に嫌な思いしたことは全くありませんでしたね。特に、ポール・マッカートニーなんてよく喋ってくれますし。

—— でも、星加さんはミュージシャンと仲良くなっても、「記者」としての立場という一線を意識して作っておかないとダメだと仰っていますね。

星加:そうですね。アメリカの記者、ニューヨークの記者なんかは、仲良くなって、すぐになれなれしくしたりするんですが、私はそれだけはやめようと思っていました。やっぱり私は記者ですから、一線を引いて、それ以上近づきすぎないようにしようと常に思っていました。

—— 節度のある行動を常に心掛けられたと。

星加:よく「ポライト」と言われましたね。礼儀正しいって(笑)。意識的にそうしていましたね。何回も会って、顔を会わせたりなんかしていると、ついなれなれしくなってしまうんですよ。

—— 向こうが優しくしてくれると調子に乗りますよね(笑)。

星加:図に乗ります。それだけは気をつけようと。その代わり、彼らが活動している間は、長く取材させて貰えるので、エプスタインに気に入られ、4人にも嫌がられないようにしようと。それは思っていましたね。

—— ところで星加さんは映画「レット・イット・ビー」のいわゆる“ルーフトップ・コンサート”も現地で観ていらっしゃるそうですね。

星加:ええ。あのときはウォーカー・ブラザーズを日本に呼びたいというので彼らに会いにロンドンへ行っていたんです。それでついでにアップルにも行ってビートルズに会えるものなら会わせてくださいと頼んだんです。そうしたら次の日に電話がかかってきて「今、屋上でビートルズが演奏している」と(笑)。

—— それはビックリしますよね(笑)。

星加:何が何だかよくわからないですよ(笑)。それで「来てみたら?」と言うので、他の仕事をキャンセルして行ったら、道路は通行止めにはなっているし、みんな鈴なり状態で観ているわけですよ。それで、私は事情を話して建物の中へ入れてもらって、電話をくれた人と話したら「屋上は撮影していて関係者以外入れないから、みんなが降りてくるのを待っていたら?」と言われて、1階のロビーで微かに音が聞こえてくるのを聴いていたんです。それがレコードになるのか、映像はどうやって使うのか、誰も把握していないわけですね。つまり4人が勝手にやって、それを観て良かったら後でどうにかしようということだったと思うんですが、その後、あれがあんな映像作品になるなんてね。想像以上によくできていましたね(笑)。

—— 歴史的現場にいたというだけでもすごいですね(笑)。

星加:偶然なんですけどね。




特別連載企画『未来は音楽が連れてくる』榎本幹朗氏 NEWマーク画像【音楽業界関係者必見!】
日本の音楽産業は鎖国状態?
世界の最新音楽ビジネスモデルを分析した特別連載特集。

連載第70回 音楽消費の場となったYouTube。音楽使用料は70円/人。定額制配信2030円/人に対し〜スティーブ・ジョブズ(22) <7/26 更新!>

【後半】インターネットの恩恵を受けたアーティストKOHHとマネージメントの新たな挑戦
【特集】ミレニアル世代のアーティストが創る新たな音楽シーン【後半】インターネットの恩恵を受けたアーテ…

【特集】ミレニアル世代のアーティストが創る新たな音楽シーン
2015年に世界の音楽産業で史上初めてデジタルの売上がフィジカルを上回り、ライブ市場が急拡大するなど…

「ヒット」を再定義して音楽の未来を描く『ヒットの崩壊』著者 柴 那典氏インタビュー
音楽ジャーナリスト・柴那典氏による著書『ヒットの崩壊』が発売された。CD時代の終焉が迫り、オリコンラ…

独立系レーベルの楽曲をメジャーと同等の条件で世界に配信 デジタル・ライツ・エージェンシー「マーリン」インタビュー
世界中の独立系レーベルのデジタル権利を支援する団体マーリンの日本オフィスであるマーリンジャパン…

「歌詞を味わう」体験をアップデートする 〜歌詞が浮き出る革新的スピーカー『Lyric speaker』インタビュー
音楽と同期して歌詞が表示される次世代型スピーカー『Lyric speaker』が各所から注目を集めて…

「音楽オタク」としてファンの望む音楽映像を届け続ける WOWOW 取締役コンテンツ本部長 山下浩志郎氏インタビュー
開局当初よりビックアーティストからマニアックなアーティストまで、硬軟入り交じった番組プログラムで、音…

【後半】『ニッポンの編曲家』出版記念インタビュー スタジオ・ミュージシャンの生演奏の素晴らしさを伝えたい 梶田昌史
70〜80年代の活気に満ち溢れたレコーディング・スタジオで音と格闘を続けていた編曲家に焦点を絞り、た…

【前半】『ニッポンの編曲家』出版記念インタビュー「熱い音楽をどうやって作っていくか」川瀬泰雄×吉田格
70〜80年代の活気に満ち溢れたレコーディング・スタジオで音と格闘を続けていた編曲家に焦点を絞り、た…

日本人として世界で戦うハイブリット企業 ディグズ・グループ 代表取締役 工藤与明 × 音楽プロデューサー 今井大介 対談
STY(エス・ティ・ワイ)、HIROを筆頭に次世代クリエイターが数多く所属するクリエイティブ・チーム…

世界のトップ・アーティストが指名するマスタリング・エンジニア ー メトロポリス・スタジオのスチュアート・ホークスに会ってきた
過去25年間におよぶマスタリング・エンジニアとしての経験とノウハウを持って、無名の新人からトップ・ア…

【後半】新たな音楽&才能との出会いは一種の“麻薬”である
モダンフォークカルテット、ソロとアーティスト活動を通じて、60年代後半のアメリカを“実体験”した麻田…

過去最大規模の650社が出展「第4回 ライブ・エンターテイメント EXPO」「第4回 イベント総合 EXPO」今年の見所は 過去最大規模の650社が出展「第4回 ライブ・エンターテイメント EXPO」「第4回 イベント総合 EXPO」今年の見所は
イベントに関する演出機材やグッズ、各種サービスが一堂に集まる日本最大級の見本市「第4回 ライブ・エン…

1億人を超える楽天会員基盤を最大活用 〜 定額制音楽配信サービス「Rakuten Music」 1億人を超える楽天会員基盤を最大活用 〜 定額制音楽配信サービス「Rakuten Music」
楽天が2016年8月に提供を開始した定額制音楽配信サービス「Rakuten Music」。サービス開…

「More than a ticket」を標榜し世界へアプローチするPeatix 〜ピーティックスがチケット再販機能をリリース 「More than a ticket」を標榜し世界へアプローチするPeatix 〜ピーティックスがチケット再販機能をリリース
誰でも簡単にグループ・イベント管理、チケット販売・集客が行えるウェブサービス・モバイルアプリ「ピーテ…

利用者の約7割が「CD / DVDを購入するきっかけになる」と回答 パッケージの価値を高める「プレイパス」サービスが拡大 利用者の約7割が「CD / DVDを購入するきっかけになる」と回答 パッケージの価値を高める「プレイパス」サービスが拡大
CDやDVD/ Blu-ray Discに封入されているパスコードを入力することで、リッピングなしに…

インターネットテレビの視聴“体験”を“習慣”に変える AbemaTV 編成制作局長 藤井琢倫氏 インタビュー インターネットテレビの視聴“体験”を“習慣”に変える AbemaTV 編成制作局長 藤井琢倫氏 インタビュー
2016年4月に開局したインターネットテレビ局「AbemaTV」が11月に1,000万ダウンロードを…

日本初!ダンス・ミュージックの国際カンファレンス&イベント「TOKYO DANCE MUSIC EVENT」開催 日本初!ダンス・ミュージックの国際カンファレンス&イベント「TOKYO DANCE MUSIC EVENT」開催
ダンス・ミュージックに焦点をあてた日本初の国際カンファレンス&イベント「TOKYO DANCE MU…

【13th TIMM】BABYMETAL、スカパラ・・・日本人アーティスト海外公演の舞台裏を語る「キー・プレーヤー:ザ・ブッキング・エージェント」 【13th TIMM】BABYMETAL、スカパラ・・・日本人アーティスト海外公演の舞台裏を語る「キー・プレーヤー:ザ・ブッキング・エージェント」
10月24日〜26日にかけて開催された、日本音楽の海外進出を目的とした国際音楽マーケット「第13回東…

新しい時代を鳴らす楽器クリエイターを輩出したい オリジナル楽器のコンテスト「THE 楽器 DE SHOW!?」が開催 新しい時代を鳴らす楽器クリエイターを輩出したい オリジナル楽器のコンテスト「THE 楽器 DE SHOW!?」が開催
ソニーミュージックによるエンタテインメントの学びの祭典「SONIC ACADEMY FES 2016…

【チケット不正転売問題】「コンサート文化について考え直す岐路に立たされている」 — ACPC会長/ディスクガレージ代表取締役社長 中西健夫氏インタビュー 【チケット不正転売問題】「コンサート文化について考え直す岐路に立たされている」 — ACPC会長/ディスクガレージ代表取締役社長 中西健夫氏インタビュー
8月23日、日本音楽制作者連盟(以下、音制連)、日本音楽事業者協会(以下、音事協)、コンサートプロモ…

多彩なビジネスセミナーで海外進出の糸口をつかむ 「第13回 東京国際ミュージックマーケット(13th TIMM)」10月24日より開催 多彩なビジネスセミナーで海外進出の糸口をつかむ 「第13回 東京国際ミュージックマーケット(13th TIMM)」10月24日より開催
日本音楽の海外進出を目的とした「第13回 東京国際ミュージックマーケット(13th TIMM)」が1…

ニューミドルマン座談会「ナイトエンターテイメント」と「フェス」、注目シーンの最先端から見た、新時代音楽ビジネスの可能性 ニューミドルマン座談会「ナイトエンターテイメント」と「フェス」、注目シーンの最先端から見た、新時代音楽ビジネスの可能性
IT、デジタル化の波は、音楽、エンターテイメントにも訪れている。新しい時代に対応した人材を育成するこ…

バザール12020701【居抜スタジオ】 プロユーススタジオ機材を大放出中!
新商品【居抜スタジオ】が出品されました!NEWマーク画像