ー LIVING LEGEND シリーズ ー
【後半】スターの概念を打ち破ったビートルズとの日々

元『ミュージック・ライフ』編集長
星加ルミ子さんインタビュー


若い人たちは一流のものを聴きなさい

元『ミュージック・ライフ』編集長 星加ルミ子さん
—— 『ミュージック・ライフ』は星加さんのビートルズ取材をきっかけにかもしれませんが、その後、洋楽路線にシフトした感じがするんですが。

星加:そうですね。それから後も邦楽を全く入れなかったわけではなくて、渡辺プロとかホリプロの広告をもらっていたので多少は取り上げていました(笑)。でも、ほとんどがアメリカ、イギリスの音楽になりましたね。

—— 私もその頃の編集部にお邪魔していたんですが、編集長から編集部員みんなが熱烈的な音楽ファンであるという熱量が部屋に充満していましたよね。

星加:だって、ファンじゃなかったらいられなかったですから(笑)。それで、女の子ばかりの編集部でした。なぜかというと、女の子の方がミーハーなんですね。「ビートルズの次は誰をスターにしようか?」と言ったときに、そういうことに敏感なのは女の子なんですよね。「この子たち絶対人気が出るわよ」とか、そういうことが感覚的に分かるんです。男の子はどうしてもギターがどうとか、そういう話になっちゃいますから(笑)。それで『ミュージック・ライフ』の編集部は若い女の子ばかりにしたんです。

—— 星加さんは面接官とかもされたんですか?

星加:そうですね。新興音楽出版社の社員として採るんですが、「『ミュージック・ライフ』に入れる」とは言わないんです。みんな『ミュージック・ライフ』に入りたくて来るわけですが、1年くらいは営業とかの出向期間で(笑)。その後に適性を見る。ミーハー根性をね。

—— それで入られたのが水上はる子さんや東郷かおる子さんたちですね。

星加:東郷さんはミーハーの最たるものでしたからね(笑)。記者である前に、本当にそういうミーハーな思いだったんですよ。スコット・ウォーカーが日本に来て、会わせたときなんて、泣き崩れて取材にならないんですよ(笑)。

—— (笑)。

星加:「だって、スコットがここにいるんだもん」って完全にファンになっているわけです。

—— 実は洋楽のディレクターとかみんな『ミュージック・ライフ』編集部へ行くのが楽しかったんですよ。やはり熱烈に「好きだ!」と言ってくれる人がいると、レコード会社側の人間もやっぱり一緒に盛り上がれるんですよね。

星加:編集部は若いディレクターさんたちのたまり場みたいになっていましたからね。みなさん自分のレーベルのアーティストを何とか売りたいという熱意がもの凄くありましたものね。ミッシェル・ポルナレフの高久さん、グラムロック、T−レックスの石坂さん、カーペンターズの寒梅さん、とにかく皆さん個性的でした。

—— 星加さんはシンコーミュージックを何年にお辞めになったんですか?

星加:75年ですね。ちょうどクイーンが来日のときで、そこで東郷さんや水上さんにバトンタッチしました。私はクイーンの取材、1度は行っていますけどね。ウッドストックを境に音楽業界がガバッと変わりましたよね。それまでグループとかアイドルという感じだったものが、ギターが主役になってきたんですよね。私が一番びっくりしたのはジミ・ヘンドリックスを表紙にするという案が出たときで、「え? 彼を表紙にするの?! とても私の手に負える人じゃない!」って思ったんですよね(笑)。実は私はその3年ぐらい前にロンドンでジミには会っているんです。会ったときの印象はとても良かったです。

—— 70年代はプログレッシブ・ロックやハードロックとか、色々出て来て幅が広がりましたよね。

星加:そうすると、私のようにアイドルを捜して追いかけてきたような人より、東郷さんや水上さんたちの方が適任なんです(笑)。やはり、こういうファン・マガジンはビジュアルを無視できないと思っていたんですが、これからは彼らに任せようと。でも、フランク・ザッパのときはさすがに「前衛的過ぎじゃないの?」と言いました(笑)。

—— やはり『ミュージック・ライフ』はビジュアルのイメージが強いですよね。

星加:そこは非常に意識していました。私の時代と違って、70年代は海外へ簡単に行けるようになりましたから、編集部のみんなにはあちこちに飛んでもらって、取材してきてもらいました。それで、できるだけ写真を見せる。それが、アイドルだろうとなかろうと「こういう人たちなんですよ」というのが写真だと一目瞭然ですからね。それで、音楽的な難しい考察は「ミュージックマガジン」に任せましょうと(笑)。

—— (笑)。それにしても『ミュージック・ライフ』のビートルズの写真は、どれも良い表情をしていますよね。

星加:それはカメラマンの長谷部さんの力ですよ。長谷部さんはもともと映画のスティールなんかを撮っていた方で、草野さんとたまたま知り合いで、ビートルズをきっかけに『ミュージック・ライフ』の仕事をしてもらうようになったんです。それ以降の『ミュージック・ライフ』の写真は全部長谷部さん。今も現役でやっていますよ。

—— 長谷部さんは貴重な写真をたくさん撮影されていますね。

星加:表紙で使ったビートルズの写真は大きなカメラで撮っていましたが、そのカメラでは3枚しか撮らなかったんです。あとは小さなカメラ。それで、目線がみんなカメラの方を向いていて、しかも何の気負いもない表情をしているんですよね。本当にリラックスした、こんな良い表情をしたビートルズの写真って、他に私は見たことがないです。

—— 本当に良い表情をしていますよね。

星加:それを引き出したのは間違いなく長谷部さんです。長谷部さんは写真を撮るときに人を柔らかくさせるんですよね。私は色々な意味で、長谷部さんのような周りのスタッフに恵まれていました。

—— 星加さんに、未だにビートルズのことでオファーがくるというのは、本当にすごいことですよね。今も「ビートルズの音楽はすごい!」と若い人に聴き継がれていることの証明なわけですから。

星加:若い人たちには「一流のものを聴きなさい」と常に言っています。ビートルズみたいな「これが一流なんだよ」というものを聴けば、あなたたちの中からもっとすごいものが生まれるかもしれないよ、と。逆にレベルの低いものばかり聴いていたら、そういうものは生まれない、と必ず言うんです。すごく偉そうに聞こえるかもしれませんが、私は本当にそう思っていますし、もう、この歳だから偉そうに言っても良いかなと開き直っています(笑)。



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