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ー LIVING LEGEND シリーズ ー
【後半】スターの概念を打ち破ったビートルズとの日々

元『ミュージック・ライフ』編集長
星加ルミ子さんインタビュー


元『ミュージック・ライフ』編集長 星加ルミ子さん
元『ミュージック・ライフ』編集長
星加 ルミ子(ほしか・るみこ)

音楽ファンなら一度は目にしたことがあるビートルズと着物姿のうら若き女性の写真。その若き女性こそ若干24才の星加ルミ子さんその人だ。『ミュージック・ライフ』編集長として単身ロンドンへ乗り込んでビートルズの取材を実現させた星加さんとはいかなる女性なのか? そのキャリアからビートルズとの交流まで話を伺った。

(インタビュー・山浦正彦 / 文・Kenji Naganawa)
2016年3月14日 掲載

インタビュー前半はこちらから!
【前半】スターの概念を打ち破ったビートルズとの日々
元『ミュージック・ライフ』編集長 星加ルミ子さんインタビュー
PROFILE
1940年北海道生まれ。東洋女子短期大学英文科卒。
61年、新興楽譜出版社(現シンコーミュージック・エンタテイメント)入社、ミュージック・ライフ編集部に配属される。65年、ロンドンに渡り、日本人ジャーナリストとして初めてビートルズとの単独会見に成功。75年、シンコー・ミュージックを退社まで編集長として活躍。以後、フリーの音楽評論家として現在に至る。主な著書に、「太陽を追いかけて」、「ビートルズとカンパイ」(シンコー・ミュージック刊)などがある。
6月にはビートルズの来日50周年を記念して、大々的なイベントを行う予定。

着物をきっかけに即打ち解けたビートルズとの初対面

—— ロンドンに着かれてからは?

星加:とりあえずはEMIの方と一緒にエプスタインのところへ挨拶に連れて行ってもらったんです。そうしたら、彼は「ああ来たのか」みたいな感じで、全然ノー・リアクションで。そのときはわざと刀は持って行かなかったんです。いきなりそんなものをあげるというのは、やっぱり失礼ですしね。次に会うときに機会を作って貰った方がいいと思ったんですね。

—— 24歳にして、すごくわきまえていますね。

星加:1人になれば、人間って何でもできるんです(笑)。頼る人がいなければ自分の知恵でどうにかするんですよ。

—— でも、普通はそんな冷静に物事を考えられないと思います。

星加:でも、そうするしか仕方なかったですからね。それで、そのときは挨拶だけで「3日後にもう1度ご挨拶に伺いたいんですけど」と言ったら、あっさりアポイントが取れて、そのときに「実は日本からあなたに特別なプレゼントを持って来ました。気に入ると良いんですけど」と刀を渡したんです。そうしたら「何だコレは!」と(笑)。実はその刀の解説書をトランスレーションして一緒に持っていったんですよ。でも、そんなものを読むまでもなく、刀を抜いたらギラギラしている。ブライアンは本物の迫力に魅了されていました。

—— 本物を前にしたら説明なんていらないと。

星加:ブライアンの後ろに世界地図が貼ってあって、ビートルズがコンサートに行ったところに赤い印をつけていたんですが、秘書にそれを全部外させて、フックをその場で打ち付けて、刀をかけたんですよ。その間、わずか15分くらいです。私は思わず「やったー!」思いましたね(笑)。その価値が分からない人にあげても仕方ないですけど、彼は分かってくれたんですね。

ところが、彼はビートルズにいつ会わせると一言も言わないんですよ。それで「君はいつまでロンドンにいるつもりなんだ?」と私に訊いてきたんです。だから、私が「ビートルズに会わせていただけるまでは日本に帰れないことになっています」と答えました(笑)。「もし私がビートルズに会えなければ、テムズ川とかドーバー海峡に身投げしなければなりません」と。よく言えたなと思うんですけどね。

—— 普通は言えませんよね(笑)。

星加:そうしたら、ブライアンは「アハハ」と笑って(笑)、「だいたいいつまでいるつもりなんだ?」と。私は「最低3週間ロンドンにいて、それからアメリカに行くつもりだ」という話をしたんですね。イギリスのあとはアメリカに行って、色んなミュージシャンとアポイントメントを取っていると。エルビス・プレスリーとか、サイモン&ガーファンクルとか、ボブ・ディランとか・・・とでまかせを言ったんですよ。誰もアポイント取れてないんですけどね(笑)。サイモン&ガーファンクルだけは本当だったんですけど、エルビス・プレスリーなんて取れているわけがない。でも会う予定でいるからと言いました。

—— やりますね!(笑)

星加:慣れてきたらもうこっちのものですからね(笑)。英語、なんだかすらすら言えるようになってきていましたし、ロンドンに居ることなんかすっかり忘れちゃって、エプスタインに「できれば16日にはニューヨークへ発ちたいんだ」と言ったんですよ。それで、15日に会わせてくれたんです。これは後で聞いて「先に言ってよ!」って感じでびっくりしたんですが、EMIが言うには、イギリス人の場合、礼儀として、記者がVIPに会うときに、記者がそこを立ち去る前の日か、あるいはVIPが訪ねてきて、そこを立ち去る前の日に取材するというのが慣例なんだそうですよ。でも、そんな慣例知らねえよって(笑)。

—— (笑)。

星加:だったらもっと早く言ってくれれば良いじゃないのって(笑)。いつもEMIのスターンさんという偉い方が一緒に行ってくださっているわけですから、スターンさんが一言そう言ってくれれば、私も「じゃ、15日に会えるかな」と安心できたわけじゃないですか。でも、スターンさんは生粋のイギリス人で、イギリスから出たことがない人だから、どこの国もそうだと思っていたらしいんですね。「え、日本は違うの?」とか言われて(笑)。

—— そして、ようやくビートルズとの対面になるんですね。

星加:レコーディングの終わった夕方5時くらいに彼らに会いました。彼らはもう帰るだけだったのを「取材が1人来る」ということで、スタジオで待っていてくれたらしいんですよ。それでスタジオへ行って、まず入ったのがミキシングルームですね。そこにはジョージ・マーティンがいたので、まず彼に挨拶をして、それで、地下がレコーディングスタジオになっているんですが、珍しい格好をした見たこともない女の子が上でジョージと話していると、みんなこっちを見上げているわけですよ(笑)。

—— 「あの子は何だ?」と(笑)。

星加:そう(笑)。そしてジョージ・マーティンが「下に行こう。4人が待っているから」と。そうしたら4人がみんな手招きしているわけですよ。階段があっちにあるからと一所懸命教えてくれたりして(笑)。そこからの私は、全くの雲の上を歩いているみたいで、ほとんど記憶は定かじゃないですけど(笑)。

—— いや、誰だって舞い上がってしまうと思いますよ(笑)。

星加:それで下に降りましたら、ジョージ・ハリソンがパーッと駆け寄ってきて、私の着物に触りまくるんですよ、珍しくて。「なんでそんなに太いベルトをしているの?」とか、スリーブが何でそんなに長いんだとかって、日本人でも答えられないようなことを質問してきました(笑)。日本人も、日本人の若い女の子も初めてで、しかも着物を着た日本人を初めて見たわけですよね。「こんな格好初めてだ! これは何だ?」という驚きがあったんですね。それで、他の3人もそばに寄ってきて、「日本人の女の子はみんなこういう格好をしているのか?」と。「いや、これは特別なときにしか着ない“着物”というものなんですよ」と教えてあげました。それで、その着物がきっかけになって、4人と打ち解けられて、最初、取材時間は30分なんて言われていたんですが、結局3時間もスタジオにいました(笑)。

—— 本当に素晴らしいですね(笑)。

星加:それで、もうそろそろ失礼しようかと思っていたときに、ジョン・レノンが私に「もし日本に行くチャンスがあったら相撲レスラーに会いたい」と言ったんですよ。「どうして相撲レスラーなんて知っているの?」と訊いたら、美術学校にいたときに友達が日本の写真集を持っていて、そこにとても綺麗な相撲レスラーが載っていたというんですよ。もちろん、その時は日本に来る話なんて全くない時だったんですが、相撲と聞いて「相撲と言ったら手形でしょう!」とひらめいて、持って行った色紙に4人の手形をもらったんです。少し大きいんですけどね。すると、そこにみんなのサインまでしてくれまして。ハンドサインですね。

—— これも良いアイデアですよね。

星加:ええ。とっさに浮かんだんですけどね。日本で相撲レスラーはみんなこういう色紙に手形を押すんだよと言ったら、すごく面白がって、すぐやってくれました。

『ミュージック・ライフ』ビートルズ
『ミュージック・ライフ』ビートルズ
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