日本人として世界で戦うハイブリット企業
ヒット曲のプロデュースを数多く手がける株式会社ディグズ・グループ 代表取締役 工藤与明 × 音楽プロデューサー 今井大介 対談

「Unfair World」「R.Y.U.S.E.I.」 ー トレンドの追求から生まれるヒット

—— 今名前の挙がったSTYさん、Maozonさんの「R.Y.U.S.E.I.」やMitsu.Jさんの「Unfair World」など、ディグズでは多くのヒット曲を制作されていますね。お二人が考えるヒットの要因とはなんでしょうか?

工藤:そもそも、ヒットは作ろうと思って作れなくて、色んな要因が合わさって生まれるものなので、僕らだけの力じゃないです。いいミュージックビデオが出来たり、いいコレオグラフだったり、キャッチーな踊りができたり、レコード会社や事務所など関係するすべての方のチームワークと僕らのアイディアが重なり、更にその時代にマッチした時にヒットが生まれると思います。

ですから、ヒットを意識するんじゃなくて、常にトレンドセッターの感覚を持っていなければならないんですよ。海外も含めて今の時代にアンテナを張って、トレンドを追求して研究する。マーケットからものづくりに落とすのではなく、いいものを作るためにトレンドを追いかける感覚が大事だと思っています。そうやって世界中の流行を勉強した結果が、たまたま三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBEや少女時代のヒットに繋がっただけで、今イケているものを日本版に落とし込んだに過ぎないんですよね。



今井:楽曲単位でヒットを作ろうと思っても趣味嗜好があるから難しいですよね。クリエイティブとして新しい物を提供し続けなければいけないというプロとしての自覚はもちろんあるんですが、「これは絶対売りますよ」と常日頃から気にして作ることはないですから。マーケットを意識するような話はしないんです。

工藤:マーケットから落とし込んだクリエイティブはリジェクトしてしまうので、クリエイターはそういう政治的な話はしなくていいと思っています。けれども、「これは絶対にヒットする」というクリエイティブってわかるんですね。

今井:Maozonくんとやっていて面白いのは、トップラインの音が彼の頭の中で明確に鳴っているんですよ。それで「これにR&Bを乗っけてください」と言われるけど、最初は全く理解できないんです。「これにR&Bのっけていいのか…?」って(笑)。でも、試行錯誤しつつ彼に確認しながら作業をしていくと、自分の中でも振り切ったものができたりして、一回り以上歳の違う彼から教わったことがたくさんありました。変に経験値があると先入観を持ってしまいますが、彼にそういう部分を呼び覚ましてもらったというのはありますね。いい意味で彼は純粋ですし、クリエイティブに没頭しているからこそ、ヒットに繋がっていると思います。



「受け入れるべき変化」と「捨てるべき慣習」

—— 昨年は日本でも複数のストリーミングサービスがスタートしました。音楽を提供する環境、聴く環境が変わってきた中で、「受け入れるべき変化」と「捨てるべき慣習」について、どのように思われていますか?

今井:まず、CDの需要がなくなるのは受け入れざるを得ないですよね。アルバムという形態もなくなるかもしれない。毎月1曲配信して1年経ったら12曲、ストリーミングだとそれがプレイリストになるわけじゃないですか。アルバムというシークエンスをユーザーが作る世の中になるかもしれないですし、これからはどれだけ聴かれているかがバロメーターになるので、ある意味ガラス張りでフェアです。

また、著名人が作ったプレイリストの影響力も大きくなるでしょうね。例えばテイラー・スウィフトがオススメのアーティストのプレイリストを作ると、これまでほとんど聴かれていなかった曲も、次の日には100万再生になるかもしれない。そういうティッピングポイントの沸点が低くなっていくんじゃないかと思います。

ディグズ・グループ 代表取締役 工藤与明 × 音楽プロデューサー 今井大介
工藤:「受け入れるべき変化」と「捨てるべき習慣」って繋がっているように思うんですね。メディアの違いではなくて、日本のビジネスモデル自体を見直すことが先だと思います。日本の出版の考え方、クリエイティブの考え方は独特で、「日本 対 日本以外」なんですよ。それが60年以上続いていますが、今後は古き良きものは残しつつも、新しい価値観に合ったものを受け入れるべきだと思います。

これは捨てるべき習慣というより、「守るべき習慣」ですね。守るべき習慣は、音楽ビジネスにもあるし、物作りとしても日本には長い伝統と歴史があります。大事なのは日本人の古き良きものを理解して、その感覚を持って海外に挑戦することなんです。僕らはただ欧米人になりたいわけじゃなくて、日本人として海外で戦えるハイブリットな日本人企業を作りたいと思っているんです。

今井:その考えはすごく共感できます。グローバルプラットフォームに合わせたほうがいい。そのためにも英語が話せる日本人じゃないといけないんですよね。ただ、子どもに英語を習わせるときもアメリカ人にしたいわけじゃない。英語を話せる日本人、海外の文化を理解できる日本人を育てたいだけなんですよね。

工藤:ソニーや東芝など世界屈指のブランドとして事業展開している日本企業も、そういう志を持った日本人が作り上げていったんだと思うんです。今、原点回帰するべき時期にきていると思っていて、メディアが抜本的に変わっても、音楽に対しての魂、作り手の想いを忘れてはいけないですし、それがエネルギーになるじゃないですか? 僕らはそれに特化して、徹底的に集中してやるクリエイティブ集団を目指していくべきだと思っています。




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