【前半】『ニッポンの編曲家』出版記念インタビュー
「熱い音楽をどうやって作っていくか」
川瀬泰雄×吉田格


2.

『ニッポンの編曲家』出版記念インタビュー 川瀬泰雄×吉田格
—— 予算がなくなることで楽曲のクオリティが下がり、CDが売れなくなり、録音物がビジネスにならなくなってしまったと…?

川瀬:もちろんそれだけが原因じゃないですが、予算がないことで楽曲が小さくまとまっちゃうから、どんどんファンも離れて行った面もありますよね。もう一つの原因は洋楽を聴かなくなったことですよ。何年か前から、売れているアーティストはAKB48とかモーニング娘。で、日本国内だけで売れていく。でも、世界からしたら「それしかないの?」っていう感じじゃないですか。世界中の色んなジャンルの音楽を知らないまま育っちゃって、こんな世界でいいのか?となっちゃうわけですよ。

—— ますますドメスティックというか、内向きの作り方になっていっているんですね。

川瀬:まだ、K-POPのほうが世界を見ていますから見込みがありますよね。東南アジアに進出したりスケールが違うじゃないですか。お金のかけ方も違うし、育て方も3〜4年ずっと練習だけやらせて、残った人たちがやるからすごく洗練されているんですよ。

吉田:作曲家も作詞家もそうでしたけど、みんな当時は若い才能を育てていましたよね。作家さんの事務所でコンペがあったりしながら、今回この作詞家さんとやって良ければ次に繋がるし。みんな一生懸命、上を向いていた。今はもう作詞家っていう職業がなくなっている気がするんですよね。作詞家だけでは食えないですし。作曲の人もアニメかコマーシャルで多少はやっているんだけど、本当に若い作曲家で「いいのが出てきたね」っていうのはいないですからね。それも含めて我々のような、メーカーのディレクターもいなくなっている時代ですし、いろんなものが消滅して、育っていくというフィールドがもうないですよね。ひょっとしたら、他の世界も同じなのかもしれませんが、それが余計、音楽離れ、洋楽離れになってしまいます。

—— この本の時代は凄かったということは誰しもが認めるところですし、理想的な音楽の作り方ができていた時代だと思うんですよ。でも、現実に「じゃあ。今からどうしたらいいんだ?」というのが誰も答えを見いだせていないですよね。ライブをやっているミュージシャンはどうなんでしょうか?

吉田:ライブはライブで絶対なくならないものじゃないですか。今までスタジオでやっていた人たちが、時代の変化と共(とも)に仕事が減少して、ライブに移ってきているというのもあるんですが、全員ベテランの一流ミュージシャンがやっていて、若い人がきてもあまり出番がなくなっていますよね。少しずつ変わってはいるんですけど。

—— プレイヤー寿命が長いですよね。

吉田:僕たちと同年代の方が未だに現役でやっているわけですからね。でも、そこに若い人たちが自力で入ってくるしかないんです。いつの時代もそういう競争ってあったわけですしね。ギターやサックスのような微妙なタッチで全然音が違っちゃう楽器は、やっぱり生でやるべきですし、打ち込みがベースだったとしても、そういうのが混ざってくれば、熱さも伝わってくると思うんです。安上がりだから全部打ち込みでやろう、ということ自体が音楽じゃないよなって気がするんですよね。

—— バックミュージシャンの競争率の高さも、若いミュージシャンが場数を踏めない、成長できない理由ですよね。

吉田:自身がライブ活動しない間にメンバーが散り散りになった事もあり、山下達郎さんは 積極的に若いミュージシャンを入れていますけどね。ドラムの小笠原(拓海)くんは、達郎さんのレパートリーを毎年ずっと特訓していて、200何曲あるんだけど、8割方叩けるようになったって言っていました。彼は本当に上手くなっています。サックスの宮里陽太くんも若いですし、達郎さんがミュージシャンを育てているんですよね。宮里くんは「エグゼクティブプロデューサー:山下達郎」でアルバム作ったりしていますし、佐橋(佳幸)くんも自分の作品のドラムは小笠原くんにお願いしたりしています。だから、そういった交流を見てると、まだ捨てたもんじゃないなと思うんですよ。今はCDが売れなくてもコンサートやっている人はいますからね。そこで、新たなミュージシャンが育ってくるというのはあるのかなって気はしますね。

川瀬:逆に言うとそれしかないんですよ。若い人でも上手い人は入ってきましたよね。当時、スタジオ・ミュージシャンは1回認知されると、ものすごい仕事の量になるわけですよ。

—— ミュージシャン同士の横の繋がりで仕事が回っていましたよね。

川瀬:スタジオ・ミュージシャンで同じ力量の人はいっぱいいたけど、人間関係が上手くできなくて仕事ができなかったってミュージシャンもいますよね。

吉田:人間関係で仕事が決まることが多かったですからね。技量はみんなすごかったけど。あの頃って、アレンジャー同士のネットワークが強くて、隣のスタジオで誰がやっているとか、誰が良かったっていう情報交換ができていて、人づてで仕事が増えていきましたよね。アレンジャーの人たちもそうですから。コーラスの広谷順子さんの、あの頃のスケジュール帳を拝見させてもらったら、すごかったですね。もう、毎日真っ黒で。

川瀬:一番乗っているときに、みんながそうさせちゃったのがいけないんだけど、ダビング1回するごとに同じ金額とるみたいなことになって。例えば、アメリカなんかだったら、1セッションいくらだから、その時間内ならどうダビングしたって変わらないじゃないですか。

—— 日本では3回ダビングしたから3倍みたいな。

吉田:バブルというか、潤沢でしたよね。

—— キーボードとシンセとかスタジオに積み上げるのが1台いくらみたいな時代もありましたし。

川瀬:ギタリストもギターとかアンプのレンタル料を請求していましたよね。バイオリニストはバイオリン代請求してこないのに。バイオリニストは可哀想だったな。家買うかバイオリン買うか迷うくらいの高いもの使ったりするのに、かたや、10万くらいのベース持ってきてベース代請求して、そんな馬鹿な、と思いましたね(笑)。

—— 何となくまかり通っていましたね。

川瀬:「楽器だったら、俺が持ってきたやつを貸してやるよ」って言いたいくらいでしたよね(笑)。




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