【前半】『ニッポンの編曲家』出版記念インタビュー
「熱い音楽をどうやって作っていくか」
川瀬泰雄×吉田格


3.

『ニッポンの編曲家』出版記念インタビュー 川瀬泰雄×吉田格
—— 当時、すでに海外レコーディングもされてましたよね。

吉田:そうですね。たまたまロンドンレコーディングのときに山田直樹くんってエンジニアが、「海外のエンジニアのレコーディングを見たい」って言ってついてきて、僕らのセッションやっているとき以外もずっとスタジオにいたんですよ。それで帰国したら全然レベルが上がっていましたね。それから、エンジニアの藁谷(義徳)くんもついて来て、帰ってきてからユーミンの専属になっています。エンジニアも海外を見ると見ないとじゃ、吸収力が全然違うんだなと思って。

川瀬:最初にアメリカに行ったとき、エンジニアもミュージシャンなんだなと思いました。メーターを振り切るからダメとか言う人は一人もいないんですよ。ドラムのセッティングを見ても、バスドラの前にめちゃくちゃ古い過去の遺物みたいなマイクを置くわけです。今度はハイハットのところに小さい細いマイクがあって、場所によってマイクが全部違うんですよ。日本では全部同じのを使っていたのに。そのときに全然発想が違うなって思ったんですよね。

吉田:エフェクターの使い方も全く違いますよね。海外は1個のエフェクターを120%使おうとするんだけど、日本のエンジニアって、スマホなんかと一緒で色んな機能はあるけど、一部しか使ってない。彼らは100%以上、さらにどうしたら面白くなるか、みたいな考え方なんですよ。あれはすごかったですね。まずモノラルで聴いていい音か確かめるんですね。それから、スタジオの入り口とかセンターとか端っことか裏側に行っても同じ音に聴こえるかチェックして。そのとき「日本でもラジオで音楽が流れるだろ? 1個のスピーカーでどう聴こえるかも、大事にしたほうがいいんじゃない?」って言われて。ああ、そういう感覚でトラックダウンするんだ、って驚きましたね。

川瀬:だから、帰ってきてみんなカセットに落として聴き始めたじゃない?

—— あれは海外の影響なんですか。

川瀬:そうですね。オーラトーンっていう小さなスピーカーをカセットで鳴らして、全部の音が聴こえるかとか、バランスを聴いて、全部聴こえたからでかいのでやろうっていうことを、何度もやっていましたね。

吉田:一番いいのは車の中で聴いたときに心地良いかどうかだから、カセットに録って、車の中行って、駐車場で聴いて確かめて。大瀧(詠一)さんもそうしていました。

—— 打ち込みをするのでも、音楽を知ってするのと知らないでするのとでは全く違いますよね。あの時代に戻ろうと言っても戻れないけど、音楽から吸収することはできるはずなので、目一杯音楽を聴き込んだ素養を元に、本物に近づける打ち込みをするとか、そういった方法でも広げていってほしいですよね。

川瀬:例えばストリングスのアレンジも、ただコードを弾くんじゃなくて、コントラバスからちゃんとアレンジしていけば、打ち込みでもそれなりのサウンドになるんですよね。それこそ、亡くなった冨田勲さんは、それだけでオーケストラを作ったわけだから。そういうところまで、細かく作っていけばそれなりのサウンドになるんですよ。以前、ストリングス・アレンジのスコアを萩田(光雄)さんに書いてもらったんですよ。萩田さんも面白がって。ストリングス全部1本1本聴いてくれて、それを打ち込みでやったんですね。そしたら、本物のストリングスみたいに聴こえてくるんですね。こうやれば十分いけるじゃないって。

今までコードでごまかしていたと思うんですね。だからアレンジャーもきちんとアレンジして打ち込んでいけばいいんですよ。若いミュージシャンがそういうことやらなかったら、すでに当時の人たちに負けていますよ。当時のミュージシャンと十分戦えるくらいの技量をつけていかなかったら、やっぱり古い人たちを抜くことはできないですよね。すでにアメリカなんかだと、打ち込みは一つのジャンルとしてあるんだけど、やっぱりミュージシャンが活躍しているじゃないですか。

吉田:打ち込みが主流になってもミュージシャンが出てこられる場所もあるってことですね。

—— 一流の人は60代になっても変わらず第一線でやれているじゃないですか。ミュージシャンもエンジニアも。

吉田:その年代は大活躍ですよね。いい音出してくれるし、引き出しがいっぱいありますからね。

川瀬:その頃のディレクターって、たぶんエンジニアよりいろんな音楽を聴いて勉強していたじゃないですか。「こういう音が欲しいんだよ」と言えば、そのエンジニアもまたそこから勉強する。毎日そういう戦いだった気がしますよね。

—— もしお二人が今20歳だったとして、音楽制作するならどうしていると思いますか?

川瀬:僕は本当に音楽が好きなので、まず、仲間でバンドを作ってやっているでしょうね。それで食っていくという発想じゃなくて、コンビニでバイトしながらでもやっていたと思いますよね(笑)。

吉田:今そういう問われ方をしたら僕も川瀬さんと同じように、許される限り自分が納得するものを面白おかしく作っていると思います。無駄な時間であっても、自分が納得できるものを送り出したいし、そうでないと、自分が消化不良になっちゃいます。当時もそうだったから、ここに至っているんだと思いますけどね。




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