【前半】『ニッポンの編曲家』出版記念インタビュー
「熱い音楽をどうやって作っていくか」
川瀬泰雄×吉田格


4.

『ニッポンの編曲家』出版記念インタビュー 川瀬泰雄×吉田格
—— 一緒にこの本を書かれた梶田さんは、中学生の頃から裏方のミュージシャンに興味を持っていたそうですね。

川瀬:彼は、日本テレビの局員なんです。最初はYMOのファンから入って、そこからスタジオ・ミュージシャンに興味を持って、島村英二さんのドラムにはまって、島ちゃんの追っかけみたいになって。

—— スタジオ・ミュージシャンのおっかけが存在していたんですね。

吉田:珍しいですよね。しかも、中学くらいから島ちゃんも公認で、スタジオに遊びおいでって言うので、島ちゃんのスタジオで色んなミュージシャンを知って、自分でメモするようになって。シングル盤とかに何もクレジットがない頃から、「このアレンジは○○さんだ」「このドラマーは○○さんだ」みたいなことをずっとやっていたんですよ。

—— そういう経歴をお持ちの方は見たことがないです。

川瀬:彼と出会ったのは、僕がラジオをやっていたときなんですけど、ラジオ日本って日本テレビグループなんです。当時、日テレから来たラジオ日本の編成局次長の倉林由男さんから、「部下にものすごいスタジオ・ミュージシャンマニアがいるから川瀬さんに連絡させてもいいか?」って聞かれて、「いいですよ」って言ったら電話がかかってきて、会うことになって。それで色々話を聞いてみると本当にミュージシャンに詳しいんですよ。ストリングスだとか、コーラスだとか、スターみたいな活動をしてないようなミュージシャンにも興味を持っていて。

—— 業界側の川瀬さんみたいな方が語れるのはわかりますけど、そうじゃない人がここまでと。

川瀬:そうなんです。ですから、格さんと2人でこの本を作ろうと思ったときに、声をかけたんですよ。

吉田:本人は編曲家本というよりミュージシャンの履歴の本を作りたかったようなんですが、一人では無理ですし、ここに相乗りさせてもらって、自分のページを下さい、みたいなところで思惑が一致して。われわれも当然、ミュージシャンのページが増えるならいいんじゃないかということで、一緒にやることになりました。彼が凄いのは、島ちゃんが参加したものは、何を聴いてもわかるんですよ。ミュージシャンは必ずそうらしいんですけど、自分の足跡っていうかクセを残すって言うんですよね。

—— そんなにミュージシャンが好きなのに音楽業界には入らなかったんですね。

吉田:あえて業界に入らなかったってことですよね。入っちゃうと好きなことができないので。

川瀬:それと、親しいミュージシャンから「入るな」って言われたそうです。放送局の社員で仕事をした方が良いからって。

—— 梶田さんが誰も興味を持たないようなことを細かく記録していたのが、今となっては役に立ったということですよね。弾いた本人も忘れているわけですよね。M1、M2って順番に弾いているだけで、誰の何を弾いたかも覚えてないみたいな時代ですよね。

川瀬:よくミュージシャンに「これって俺が弾いたやつだっけ?」って言われましたよ。

—— お二人も自分が作ったものはわかっても、人が作ったものは全然わからないですよね。

川瀬:自分で作ったものだって、タレント3人、4人同時に進行していくじゃないですか。どのアレンジャーでどのミュージシャン使ったかまでなかなか覚えてないですよ。

—— しかも10年、20年経ったらわからないですよね。

川瀬:下手すりゃ1週間経ったらわからないですよ(笑)。

—— それを全て記録していた男ってことですね。素晴らしいですね! 彼の存在なくしてこの本は誕生していなかった。

川瀬:それもインペグに電話して聞いたりしたって言うんだから、もうマニアもいいところですよね。僕たちもクレジットするようになって初めて、インペグに「あのときのギター誰だっけ?」って聞くようになるくらいで、それまではクレジットする習慣がなかったですからね。

—— 改めて、この本はどのような人に読んでもらいたいとお考えですか?

吉田:専門学校や音楽大学でアレンジを勉強している方、ミュージシャンやエンジニアを目指す方にも読んでもらいたいですね。そして、一つのものを作るための連携みたいなものを感じ取ってもらいたいなって思います。部屋で1人で作る音楽も、それはそれでいいものがあるんだろうけど、音楽は、作詞家、作曲家、編曲家がいて、そこに歌が乗っかって、それに対してミュージシャンが演奏して、その複合体の良さみたいなところをちゃんと感じてもらって、彼らにも体現してもらえたら嬉しいですね。

—— 最後に、このインタビューを読んでいる学生さんや業界関係者の方にメッセージをお願いします。

川瀬:結局この本で何を伝えたいかと言うと、昔に戻るということではなくて、熱い音楽をどうやって作っていくかがテーマなんですね。

—— 熱を持った若者に出てきてほしい、ということですか?

吉田:そうですね。僕はアイドル系をよくやっていましたが、斉藤由貴さんや薬師丸ひろ子さんがライバルだったんですよ。ライバルがいて、向こうがこの作詞家を使ったら、あえて違う作家を使っていた。素人でもバトルしながらコンペさせてもらって、そこから亀田(誠治)くんのようなすごい作家とかアレンジャーも出てきたりして。そういうフィールドを僕も作っていたし、彼らものし上がりたいという気持ちを持っていた。やっぱり残るものってみんなが熱を持って作ったものだと思うんですよ。

川瀬:でも今は妙に冷めちゃっている気がして。なにか目標があれば熱くなれるだろうし、音楽にもっと魅力を感じてほしいと思っています。


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