【後半】『ニッポンの編曲家』出版記念インタビュー
スタジオ・ミュージシャンの生演奏の素晴らしさを伝えたい
梶田昌史


2.

—— スタジオで一流プレイヤーの凄さを肌で感じられたんですね。

梶田:そうです。当時のディレクターさんでは、ポニーキャニオンの田中洋子さん(工藤静香担当)、CBSソニーの稲葉竜文さん(河合その子担当)、高野利幸さん(国生さゆり担当)、ポリスターの水橋春夫さん(Wink担当)には、とても良くして頂きました。河合その子さん、工藤静香さんがデビューシングルを出したときにプレイヤーの問い合わせを稲葉さん、田中さんにしたら「いまアルバムを作っているので、クレジット全部載せますよ」って言ってくれたんです。「本当かな?」と思ったんですけど、実際見たら、クレジットがされていて、とても嬉しかったですね。当時のディレクターに聞いたシングルの参加ミュージシャンは、全部記録に留めていまして、この本にも載せる事ができなかった曲がいっぱいあるんです。

—— それはとても貴重な記録ですよね。梶田さんしか把握していない情報も多いんじゃないですか?

梶田:そうですね。調べていくと、当時の記録はコーディネーターの手元に残っていなかったり、ある程度の年代で捨てられていたりするんです。僕はたまたまリアルタイムで記録していて、そういうものが積み重なっていきました。

僕は日本テレビに入社して、報道局に在籍中は、日テレNEWS24イメージソング 松浦亜弥さんの「笑顔」や、NEWS ZEROでもOAされた、沖縄のシンガー大城友弥さんの企画、news every.サタデーのお天気テーマをスタジオバイオリン、ヴィオラの方に作曲オファーしたりといった、音楽、プレイヤーたちと繋がる事をやってはいたんですが、何か恩返しをしたいという気持ちがずっとありました。ですから、自分の中ではこの本を出すということが、いままでお世話になったプレイヤーの方々への恩返しだと思っています。プレイヤーの皆さんは、自分が何の曲に参加しているのか、ほとんど覚えていないんです。でも、90年代の後半くらいから仕事量も減少していく中で、自分がやってきた仕事を見つめ直したいと、思うようになった方もいました。
トランペットの数原晋さんやキーボードの難波正司さんからは、「梶田くん、当時の音源持っていますか? 聴きたいんです、僕持っていないから」と声をかけてもらい、音源をチョイスして差し上げたりもしました。

—— ほぉ〜。

梶田:今の時代だからこそ、当時の記録を残していかなければ、消滅してしまうものだと思いますし、何人かの方からは「私たちがやってきたことを、後世に伝える意味でも形に残して欲しい」という声も頂いて、ディスクユニオンに書籍の企画を持っていきました。

『ニッポンの編曲家』出版記念インタビュー 梶田昌史×田渕浩久
▲DU BOOKS 田渕浩久さん

—— それは何年前の話ですか?

田渕:約2年前です。

梶田:作詞作曲家に比べると職業編曲家、アレンジャーの評価というのは低かったと思うんです。テレビでも作詞・作曲家しか名前が出ないですし、雑誌を見ても編曲が掲載されることはあまりないですよね。

僕も編曲家の偉大さを知るのは、高校生くらいのときで、プレイヤーから入って「この人はどのアレンジャーの作品に参加しているのか?」と掘り下げていくと、傾向がわかってくるわけです。このアレンジャーだからこのプレイヤー、さらに突き詰めていくと、アーティスト、インペグ、アレンジャーの3点から分析した上で、参加ミュージシャンが見えてきます。

当時のレコーディングのスタイルで言うと、レコーディング時は、「M1」「M2」「○○曲」って呼ばれていたものが、僕が問い合わせをすることによって「このタイトルになった」と逆にわかったりもするので、録ってから後のことは、僕の方がわかっているという側面もあったのではないかと思います。この本は、僕のライフワーク最終章として、全力で取り組みました。

—— タイトルが「ニッポンの編曲家」ですから、そこにスポットライトが当たっている感じですけど、本当にプレイヤーの話がいっぱい出てきて、日本の音楽が生まれた熱い現場っていうのを知ることができますよね。

梶田:そうですね。今回インタビューしたアレンジャーを選定させて頂いた後に、やはりプレイヤーの部分も絶対に外すことはできないと思いましたし、そこをキチンと残さないといけない。データの確認を慎重に進めた上で、ミュージシャンの主要参加作品を掲載させていただきました。当時のアルバムのクレジットに、シンセサイザー・プログラマーの名前が載っていなかったり、コーラスが入っているのにコーラスのクレジットが抜けていたりとか、実は結構あったんですよ。今回そこを救済する形でクレジットを追記したりしています。

—— 間違ったことは書けないですから、相当苦労があったんじゃないですか?

梶田:細心の注意を払ってやりました。アレンジャーやプレイヤーの方が覚えている一次情報がすべて正しいと言い切れないんです。ですから、二次情報、三次情報がやっぱり大事になってきます。二次情報はたとえば当時のディレクターさんの記憶だったり、三次情報はエンジニアさんだったり。もちろんインペグさんもそうです。

—— 各情報を突き合わせていく作業になるわけですか?

梶田:そうです。あとはレコーディング時のトラックシートですよね。ミュージシャンの名前が記載されているものもあるので。僕が持っている記録、それにアレンジャー、プレイヤーの方から伺った話、そしてディレクターさん・エンジニアさん・インペグさんの話、そしてトラックシート、これまでの経験に基づく音源の分析ということになります。




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