【後半】『ニッポンの編曲家』出版記念インタビュー
スタジオ・ミュージシャンの生演奏の素晴らしさを伝えたい
梶田昌史


3.

—— 企画から2年というと、かなり濃密な2年ですね。仕事量が凄かったたんじゃないですか?

田渕:そうですね。まずラインアップを決めるところから苦労しました。どうまとめたところで「この人が載っていない」という話には必ずなると思いましたし。なので、宮川泰さんや東海林修さん、森岡賢一郎さんとか、何で載っていないんだって言われると、言い訳しようがないんですよね。

—— 歴史を追いだしたらキリがないですよね。

田渕:膨大な量になってしまいます。どこで線引きするかというところで考えると、筒美京平さんが編曲を編曲家に任せるようになる時代以降で割り切った部分はあります。

—— そこはお断り入れておかないと始まらないですよね。

田渕:私はギター誌の編集出身なので、ギタリストはたくさん知っていたんですが、そこと編曲家との密接なつながりについて、梶田さんに話を伺うことで理解していきました。そこは本当に切っても切れない関係なんだなと。なのでこの本は『ニッポンの編曲家&スタジオ・ミュージシャン』というタイトルでもぜんぜんおかしくない内容になっているわけです。

梶田:今回、僕が一番大事にしたかったのは、アレンジャーの皆さんがインタビューで語っている内容プラスα、その当時の現場の臨場感やサイドストーリーを描くことでした。実際に読んで頂くと分かって頂けると思いますが、それぞれのアレンジャーの下の欄に、現場の証言というのを追加しています。それは、当時の現場ディレクター、ミュージシャン、エンジニアの皆さんがどういった想いでレコーディングをしていたのか、ヒット曲誕生の裏にはどんな現場の想いがあったのかを僕が個別にお会いして伺ったエピソードになっています。

—— それによって書籍にぐっと厚みが出ていますよね。ちょっとさっきの話に戻ると、いろいろな方法で検証を重ねて、やはり一番正しかったのは、梶田さんご自身の記録ですか?

梶田:それは難しい質問ですね。当時の記録自体が100%正確であるとは言えないと思います。差し替えも日常的に行われていましたからね。

—— ちなみに今もスタジオ・ミュージシャンのサポートを続けているのですか?

梶田:今もライフワークとして続けています。例えば、僕はアレンジャーの萩田光雄さん、船山基紀さん、若草恵さんも大好きなんですが、そのセッションには当時のプレイヤーが今も参加していますから。渋谷JZ Bratでのライブ・プロデュースをボランティアで始めさせていただいて、今年で6年になります。これはスタジオ・ミュージシャン、アレンジャーをメインにしたライブで、近年はストリングス・プレイヤーの活動も支援しています。

—— もはや梶田さんは音楽プロデューサーですね。

梶田:いや、あくまでもその部分は仕事じゃなくて、趣味ですから。スタジオ・ミュージシャンのアーティスト活動に向けてのコンサルティング的なこともやらせて頂いています。例えば、ヴァイオリン・加藤JOEさんのファーストソロアルバム、直近では、ヴィオラ・萩原薫さんのファーストソロアルバムもお手伝いさせて頂きました。

—— 『ニッポンの編曲家』は70〜80年代の話が中心ですが、決して回顧的にはなっていないですよね。

梶田:ええ。音楽のレコーディングスタイルは、テクノロジーの進化と共に、変わってきていますよね。今の音楽も素晴らしいと思います。ただ、僕は70年代後半から80年代の音楽を聴いて育った世代なので、打ち込みの音楽も否定はしませんが、何といっても生の人間が奏でる、特にスタジオ・ミュージシャンの演奏の素晴らしさを、色々な活動を通じて知っていただくということが僕のライフワークであり、アレンジャーやスタジオ・ミュージシャンへの恩返しと言いますか、僕ができる最大限のことなんじゃないかと思うんです。

自分が愛しているプレイヤーの方たちに「梶田くんと一緒に何かやりたい」とおっしゃっていただけるのなら、僕は全力で支えたい。80年代のプレイヤーの方は、今も皆さん現役で活躍している素晴らしい方たちばかり。その素晴らしさを多くの人たちに伝えたいんです。

それは今だけでなく、後世にも、70年代・80年代っていうのはいい時代だったという時代回顧だけじゃなく、その時代が生んだ音楽の素晴らしさを知ってもらうことで、音楽の楽しみ方も変わると思うんです。僕はこの本を通じて、「こんな素晴らしいプレイヤーがいたんだ」「もう1回昔の曲を聴いてみよう」と思ってもらえたら、新たな発見があったりして、音楽の楽しみ方がより広がってくるのではないかなと個人的に思っています。




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