【後半】『ニッポンの編曲家』出版記念インタビュー
スタジオ・ミュージシャンの生演奏の素晴らしさを伝えたい
梶田昌史


4.

『ニッポンの編曲家』出版記念インタビュー 梶田昌史×田渕浩久
—— 『ニッポンの編曲家』刊行後の周りの反応はどうですか?

田渕:「そもそも売れるのか?」というところで言うなら、本当に出してみないとわからないという状況だったんですが、発売から2か月で3刷までハイピッチで重版されたことに正直びっくりしています。

梶田:業界の視点を持っている方であれば、抵抗なくこの本の世界に入れると思うんですけど、たとえば南野陽子さんのファンが、萩田さんのアレンジはすごいとTwitterなどで話題にしていたりする。それがきっかけになって関心を持ち、本を購入いただたりもしているようです。

ディスクユニオンには「昭和歌謡館」というお店がありますが、そこには当時の音楽を聴いて「いいよね」って思っている若い人たちがいて、当時を遡って聴いてみようと思って来店している。そういった方々と『ニッポンの編曲家』の読者は繋がっているのではないでしょうか。当時は僕みたいにマニアックな聴き方をしている人ってほとんどいなかったでしょうから、掘り下げがいがある時代だったとも思います。

—— 当時の、例えば、アイドル音楽っていうのは、そこまでの価値がないと思っていた方がたくさんいたわけじゃないですか。

梶田:制作現場の空気感としてはあるように感じましたね。

—— それが、きちんとしたデータが残っていなかったり、そういう人たちが意外に大切にされていないみたいな原因ですよね。

梶田:当時、問い合わせをして思ったのは、明らかに「ニューミュージックとアイドル歌謡曲は違う」という捉えかたをされていて、一部のディレクターの方々には、「所詮、アイドル歌謡曲ですよ」って言われました。「ファンの人で、梶田さんみたいに、ミュージシャンのことに興味がある人はいないので、クレジットを載せていないんですよ」って言われたこともあって、「プレイヤーが好きで聴いている人もいるわけで、そういうことじゃないでしょう!」って思いましたね。

—— その感覚はミュージシャン側にもあったわけですよね。

梶田:たぶんそうだと思います。しかも365日、1日4セッション、M-1などタイトルが決まっておらず、歌い手本人がいない状況でレコーディングをしていたら、まったくわからないですよね。

—— 作品を残しているっていう感覚が、ミュージシャン本人にもなかったときに、そこに光を当てた梶田さんってすごいですね。

梶田:未だにクレジットがされていないのが、演歌の参加ミュージシャンとストリングスのメンバーですね。特にストリングスは、○○ストリングスという形でグループ表記がほとんどです。皆さん、素晴らしい人たちばかり。この場を借りて、各レーベルの担当ディレクターの皆様にクレジット表記をお願いしたいです。プレイヤーの方の知名度UPやモチベーションUPにも繋がり、業界の活性化にも繋がるのではないかと僕は思っています。

—— そして、続く後進たちへの何かのきっかけにもなりますよね。

梶田:まさにそうです。例えば、プレイヤーの方に、最近の参加作品を聞いたときに、「何をやったかわかりません」って言われると、ファンとしてはとても残念で、悲しい気持ちになりますね。もっと自分のやった仕事をアピールして頂きたいですね。

—— 書籍「Musicman」にある個人の情報ページでも、色々書いてアピールしてきている人もいれば、「僕はいいです」っていう人もいるんですよ。だから、ミュージシャンなり何なり、人それぞれの性質だとか、アピールを好まないのか、あるいは「お前これもやっていたのか」って言われるのがイヤとか、色々な事情もあるような気もします。

梶田:それは間違ってないとは思いますが、音楽業界の中では正論であっても、一般の音楽を聴いている人達にとっては、それって違うんじゃないかって思うんです。これから自身の活動を活性化していったり、知名度をあげていくという意味では、音楽業界以外の方に知っていただくことも、僕は大切だと思うんですよね。それをやっている方と、やっていない方というのは、やっぱり知名度などの点で差が出てしまうんじゃないかと思いますね。

—— 皆さん実力のある方々ばかりだからもっとアピールしていくべきだと。

梶田:ええ。日本って、いろいろなところとの向き合いや業界内のしきたりだったり、それはテレビの世界もまったく同じですけど、ありますよね。でもスタジオ・ミュージシャンは、業界の中で、演奏家としてトップクラスの方ばかりですし、一般の方にもっと知られるべき存在であるということを皆さんに感じてほしいですね。

—— 最後になりますが、梶田さんが今後やりたいことは何ですか?

梶田:『ニッポンの編曲家』で全てのアレンジャー、プレイヤーの方をフォローできたわけじゃないんですね。今回、泣く泣く掲載を見送った方も多くいますし、そういう意味ではこれは始まりであって終わりでないと思うんです。パズルで言うと一つのピースでしかないかもしれないけども、まずは、それを残すことが大切だと。

音楽業界の皆さんは、スタジオ・ミュージシャンの凄さを分かっていますが、一般の音楽好きの人でも、その事をよく分かっていないと思うんです。僕は幸いなことに当時の現場でリアルタイムで体感出来て、身体に刻み込まれた。それを伝える義務があるんじゃないかと思っています。当時のディレクターは、ご自身が手がけたアーティストのことはわかるんですが、俯瞰でみたときに、プレイヤーがどういう動きをして、誰のレコーディングに参加していたのかまで語るのは難しいと思うんですよね。

—— 確かにそうですね。

梶田:そこを僕は俯瞰で見ていて、アイドル全盛期の作品は全部聴いていましたから、そういう点でも、自分に役に立てる事があれば、どんどんやっていきたいですね。
『ニッポンの編曲家 歌謡曲/ニューミュージック時代を支えたアレンジャーたち』『ニッポンの編曲家 歌謡曲/ニューミュージック時代を支えたアレンジャーたち』
著者:川瀬泰雄+吉田格+梶田昌史+田渕浩久
2016年3月発売
A5 / 336ページ / 並製
2,484円(税込)
DU BOOKS / 9784907583798 / JPN

Amazon
http://www.amazon.co.jp/dp/4907583796
DU BOOKS
http://diskunion.net/dubooks/ct/detail/DUBK115


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