FOCUS

【後半】『ニッポンの編曲家』出版記念インタビュー
スタジオ・ミュージシャンの生演奏の素晴らしさを伝えたい
梶田昌史


『ニッポンの編曲家』出版記念インタビュー 梶田昌史×田渕浩久
70〜80年代の活気に満ち溢れたレコーディング・スタジオで音と格闘を続けていた編曲家に焦点を絞り、たくさんの名楽曲を生んだ頭脳と、レコーディング時のエピソードに迫った書籍『ニッポンの編曲家』が話題だ。編曲家だけに留まらず制作ディレクターや、スタジオ・ミュージシャン、エンジニアの他、多方面から証言を収集した本書は、音楽業界人のみならず、業界を目指す若者やミュージシャン&エンジニアの卵、そして音楽ファンまで多くの人にとって興味深い内容になっている。

著者インタビュー後編は、本書のキーマンであり、中学生の頃からプレイヤー視点での楽曲研究を行い、現在もライフワークとしてスタジオ・ミュージシャンのサポート活動を続けている日本テレビ 梶田昌史さんのインタビューをお送りする(本書編集担当のDU BOOKS 田渕浩久さんにもご同席頂きました)。

(インタビュアー:Musicman発行人 屋代卓也/山浦正彦)
2016年7月1日 掲載

インタビュー前半はこちらから!
【前半】『ニッポンの編曲家』出版記念インタビュー
「熱い音楽をどうやって作っていくか」川瀬泰雄×吉田格
PROFILE
梶田 昌史(かじた・まさし)
1971年生まれ 東京都荒川区出身。東海大学工学部通信工学科卒。
日本テレビ放送網株式会社 メディア戦略局ネットワーク部主任。技術、報道等を経て、現職。
小学生の時に聴いたYMOがきっかけとなり、スタジオ・ミュージシャンに興味を抱く。
中学生の頃、ドラマー島村英二との出会いによって、難波正司、EVE、山川恵津子、広谷順子、比山貴咏史、木戸やすひろをはじめとした多くのプレイヤー、アレンジャーと親交を深める。
アイドル歌謡曲全盛期80年代には担当ディレクター、コーディネーター(インペグ)に自ら電話をかけ、参加ミュージシャンのリサーチ活動やスタジオ訪問、そしてプレイヤー視点での楽曲研究に傾倒する。
2010年にはスタジオ・ミュージシャン、アレンジャーを主体にしたライブ・プロデュースをボランティアで渋谷JZ Brat にてスタート。
現在はストリングス・プレイヤーの知名度向上に向けて支援を行うとともに、アーティスト活動にあたってのコンサルティングなども行っている。



『ニッポンの編曲家 歌謡曲/ニューミュージック時代を支えたアレンジャーたち』『ニッポンの編曲家 歌謡曲/ニューミュージック時代を支えたアレンジャーたち』
著者:川瀬泰雄+吉田格+梶田昌史+田渕浩久
2016年3月発売
A5 / 336ページ / 並製
2,484円(税込)
DU BOOKS / 9784907583798 / JPN

Amazon
http://www.amazon.co.jp/dp/4907583796
DU BOOKS
http://diskunion.net/dubooks/ct/detail/DUBK115


1.

—— 『ニッポンの編曲家』を読ませて頂いたんですが、梶田さんという希有な方がいたからできた本なんだなと確信しました。梶田さんがスタジオ・ミュージシャンに興味を持つようになったきっかけはなんだったんですか?

梶田:僕は中学生の頃YMOが大好きで、当時、学研が出していた『サウンドール』という毎月YMOが載る雑誌を購読していたんですよ。それにシンセサイザープログラマーとしてYMOに参加していた松武秀樹さんのインタビューが載っていて、「僕はYMOの仕事以外に、アイドル歌謡曲もやっているんです。松田聖子とか、河合奈保子とか」と書かれていたんです。それでレンタルレコード屋で、たまたま河合奈保子さんの『HALF SHADOW』というアルバムを手に取ったら、“シンセサイザープログラマー・HIDEKI MATSUTAKE”と書いてあって、「あ、これだ!」と(笑)。それで借りて聴いてみたら、そのサウンドにすごくハマったんです。それがスタジオ・ミュージシャンを好きになったきっかけですね。

—— きっかけは河合奈保子さんだったんですね。

梶田:ええ。そのアルバムに収録されていたシングル『エスカレーション』と『UNバランス』は、筒美京平さんが曲を書いて、アレンジが大村雅朗さんでした。それで「ドラムの音がめちゃくちゃカッコいいな!」と思ったら、“ドラム・島村英二”と書いてあったんです。他のメンバーを見たら、ベース・高水健司、富倉安生、ギター・松原正樹、キーボード・山田秀俊、ストリングス・加藤JOEグループ、トランペット・数原晋、荒木敏男、コーラス・EVEと書いてあって、そこからスタジオ・ミュージシャンの魅力にはまって、当時、リリースされるアイドル歌謡曲を片っ端から聴きまくり、特にドラムは、プレイヤーの識別ができるまでになったんです。あるときに「なんでこの人たちは、シングルやアルバムに名前が載っていないんだろう?」と思って、レコード会社のディレクターに電話をしたんです。「この曲って誰がやっているんですか?」「ドラムは島村さんの音だと思うんですけど?」って言ったら、「なんでわかるんですか? 当たりです」と言われました(笑)。

—— それってまだ中学生の頃の話ですよね?

梶田:中学校2年生くらいですかね。そのときのディレクターさんも親切な方で「参加ミュージシャンは、僕らも覚えていないので、インペグというところを紹介するので、そこで聞いてみてください」と言われたんですね。でも、最初の頃なんかは、中学生がいきなり電話してきて「メンバーを教えてください」って言ったところで、相手にしてもらえなくて、冷たくあしらわれました。でも、諦めないで何回も電話していると「そこまで好きなのならば、しょうがないな」って感じで教えてくれるようになったんです。その頃から、スタジオ業界では「梶田」という名前は有名になっていたようです(笑)。その後、島村さん、EVEさん、山川恵津子さん、広谷順子さん、比山貴咏史さん、木戸やすひろさんなど、サインが欲しいと思うようになるんですね。それでどうしたらいいんだろうと思って、何社かインペグに電話を掛けたんです。すると当時、新音楽協会(新室)にいらした、松倉さん(現:ダットミュージック)、杉山さん(現:ウィッチクラフト)が丁寧に対応してくださったんです。お二人は、僕の大恩人です。それで僕は島村さんやEVEさんの自宅に連絡をして、手紙をお送りしたらサインを書いて送ってくださったんですよ。とても感激して、額に入れて飾っていた程です。

—— お手紙にはなんて書いたんですか?

梶田:この曲のプレイに感激したなど思いを書いたファンレターです。そしてサイン下さい!と。その後、僕が高校1年生くらいのときに島村さんは斎藤ノヴさんたちと「NOBU CAINE」をやりだして、父と一緒に六本木ピットインヘライブを観に行ったんですよ。そのときに島村さんに話しかけたら、覚えていてくださっていて「手紙をくれた梶田くんだよね」って。それで島村さんと話している中で、「レコーディングを観に来なよ」って言ってくださって、スタジオに何回かお邪魔して、大ファンになりました。

—— スタジオ・ミュージシャンに向かっていく中学生って、やはり聞いたことがないですよね。自分がプレイヤーになりたくて、尊敬する師匠みたいな感じならまだしも。

梶田:プレイヤー志望でもないですし、楽器をやっていた訳でもなかったですからね。島村さんを通じて、いろいろなプレイヤーの方をご紹介いただいて、スタジオレコーディングを見学していく中で、衝撃的だったのは、CBSソニー信濃町スタジオでの郷ひろみさんのシングル「Wブッキング」のレコーディングでした。難波正司さんがアレンジ、ドラム・青山純さん、ベース・伊藤広規さん、ギター・是永巧一さん、ピアノ・倉田信雄さんで、出音の凄さにシビれました。「レコードの音そのまんまだ!」「テイク1でもう完璧」と思いました。「これで何を直すんだろう? この人たち」と思いましたね(笑)。身体に電気が走って、それがきっかけに、スタジオ・ワークにも興味を持つようになりました。




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