“音楽オタク”としてファンの望む音楽映像を届け続ける
WOWOWエンタテインメント(株) 取締役コンテンツ本部長 山下浩志郎氏インタビュー

洋楽番組の買い付けは即決が鉄則

WOWOWエンタテインメント(株) 取締役コンテンツ本部長 山下浩志郎氏
—— 洋楽のお話に戻りますが、グラミー賞以外ではどのようなアーティストが印象に残っていますか?

山下:やっぱりローリング・ストーンズじゃないですかね。2006年のさいたまスーパーアリーナ公演を一回だけ放送できたんですが、やっぱりカメラが入るとミック・ジャガーって違うんですよね。「嗚呼、この人にはターボスイッチみたいものがあって、カメラが入るとさらにググッと上がるんだな」と思いました。だからといって普段、手を抜いているわけではないんですよ。100%だったのが140%くらいまで上がるんだ、って実感しました。

他に大変だったのが、2014年12月に開催されたエルヴィス・コステロのEXシアター公演の生中継ですね。このライブは基本、途中途中でお客さんにルーレットをやらせて、出た曲を演奏したので、セットリストがなかったんです。照明さんもPAさんもコステロのスタッフだから、ヒントを聞きに行ったんですが「僕らも出たとこ勝負だよ」って(笑)。曲にテロップを出さなくちゃいけないんですが、もうほとんどイントロあてクイズですよね。

260曲タイトルを用意しましたが、曲のタイトルはフルネームで入っていますから、例えば「Peace,Love And Understanding」って指示を出しても、正式には最初に「(What's So Funny 'bout)」って入っているのでテロップの人間が「えっ、そんな曲はないですよ…」「あー、頭ね。What's So Funny 'bout!」って(笑)。その間に曲はどんどん進んでいくという。

—— 260曲の中から判別するんですから大変だったんじゃないですか?

山下:元々マニアだったから大体は分かるんですよ。一番新しいのだけはちょっと分かんないなー、みたいな。なかなか面白かったですよ。

—— 洋楽番組の買い付けはどのようにされているんですか?

山下:音楽だとMIDEM、映像だとMIPTV(カンヌで開催される国際映像コンテンツ見本市)という2つのマーケットがあって、そこで話をしたりしていますね。

—— 毎年海外に買い付けに行かれているんですか?

山下:毎年行っています。基本は年2回ですね。あとはいくつか内緒のルートがあったりもします。値段もピンキリですね。

—— 値段は交渉なんですか?

山下:交渉です。当然向こうは「これくらいで売れたらいいな」という金額があり、こっちはこっちで見合った適正価格を分かっていないといけません。向こうは当然「いいものを持っている」という感覚で来ますから、「どうだ」と言われたときに「ごめん、知らない」とは言えないんです。だから、日本のマーケットにおいて、そのアーティストがどのくらいのポジションなのか、その場で判断できるように常に知識は入れるようにしています。

—— ちなみに買い付ける映像の権利を持っているのは向こうの放送局なんですか?

山下:向こうの放送局だったり、制作会社だったり、はたまた映像ソフト会社だったり。色々ですね。2009年から始まった『洋楽ライブ伝説』は、今でもネタが尽きていないのが凄くて。最近だと78年のイアン・デューリーが最高でしたね。ノリノリでね。78年のイアン・デューリーなんて日本だとレコードでしか聴けなかったじゃないですか。


膨大な音楽知識を駆使してスピーディーに動く

—— WOWOWの洋楽番組は『洋楽ライブ伝説』以外の番組もありますよね。

山下:はい、そっちはどっちかというと鉄板のアーティストというか、今月でいうとエリック・クラプトンの去年のライブだとか、ザ・フーの特集だとか。『洋楽ライブ伝説』でやっているのはどっちかというとノスタルジーに寄ったものが8割なんですが、他の番組はここ1、2年の新しいものを見せていこうという買い方をしていますね。

—— 映像がたくさんあると買い付けも大変でしょうね。

山下:そうですね。同じものを買ってしまうことを避けなくてはならないので、一度買ったものは、常に頭の片隅に入れておかなければならないですね。

—— 視聴者の声とかはWOWOWに結構届きますか?

山下:たくさん届きますし、やはり参考になりますよね。初回放送が注目されることが多いんですけど、ボズ・スキャッグスみたいに夜中の4時からやっても「こんなに食いつきいいの?」みたいなのもあるわけです。あと、ストライクボールを投げたつもりでも引っかからないときもあるわけです。それはたまたまそういうタイミングだったのかなと思いつつも、「もうちょっと日本では人気があると思ったんだけどなぁ…」という回もありますね(笑)。

—— 番組の編成は山下さんの一存で決めるんですか?

山下:もちろん最終的には編成に相談しますが、自分の知識と感覚でスピーディーに判断するようにしています。例えば、1月なんかでいうと、デヴィッド・ボウイが亡くなったじゃないですか。あのとき、日本は3連休でしたが、映像のストックは頭に入っていますから、月曜日にすぐ動き出して、どれをピックアップするか決めて、『ジギー・スターダスト 1973』と彼が主演した映画『ラビリンス 魔王の迷宮』の2作品でデヴィッド・ボウイの追悼特集を急遽やりました。

—— 山下さんの膨大な知識があってこそのスピード感ですよね。

山下:そうですね。できるだけリアルタイムで対応しています。




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