「歌詞を味わう」体験をアップデートする
歌詞が浮き出る革新的スピーカー『Lyric speaker』インタビュー

『Lyric speaker』は、名器となりうる「魂」の通った製品

—— 今回『Lyric speaker』を作るにあたって、アイデアの端緒はどこにあったのですか?

斉藤:多くの人にある経験だと思いますが、たとえば、失恋したとき、たとえば、仕事が異常に大変な時、音楽に励まされながらなんとか乗り切る、そんなことってありますよね。僕もそういう経験があったのですが、その心に力をくれているのって、音楽のどこかというと、やはり「歌詞」なのだなということにある日気づきました。

そうしたときに、音楽は、これまでハイレゾというより音質の方を追求していくデバイスはたくさんありましたが、音楽のもう半分のところである「歌詞」の体験をもっと伸ばしていくものがあったら面白いと思いました。それが『Lyric speaker』を着想したきっかけです。ですから、『Lyric speaker』は個人的に「こうなったら嬉しいな」というところから始まっているんです。



—— 斉藤さんご自身の理想を形にしたのが『Lyric speaker』なんですね。発案から完成まで期間はどれくらいかかっているのですか?

斉藤:最初「歌詞が出るスピーカー」と書いた企画書を社内会議に出したのが、2013年の11月でしたので、3年くらいだったと思います。

—— 開発で一番苦労したところはどこですか?

斉藤:苦労はたくさんありますが、特に歌詞を気持ちよく見せるというところには、時間を費やしています。

—— それは「Lyric Sync Technology」ですか?

斉藤:はい、歌詞をビジュアライズしてみせる技術で僕らは「Lyric Sync Technology」と呼んでいます。気を配って開発したところは、歌詞を気持ちよく見られるためには、そのタイミングであったり、どんな歌詞であれ自動で美しくレイアウトするなど、多岐にわたります。

—— キッコサウンドさんはもともと音楽系のデバイスを開発していらっしゃったということですが、今回の『Lyric speaker』の開発で感じたことは何でしょうか?

廣井:まずは、 『Lyric speaker』は、名器となりうる、楽器作りと通じる「魂」の通った製品だと感じました。多くの工業製品が、仕様書通りの機能が入ったら完成となりますが、楽器の場合は、そこに「魂入れ」と呼ばれる行為が入ってきます。

—— 「魂入れ」ですか?

廣井:これは以前所属していたヤマハの先輩たちが使用していたローカル用語ですので、一般的な言葉ではありませんが、製品に機能を入れたら終わりではなくて、テスターやプレイヤーさんからフィードバックを受けるのはもちろん、それ以前に開発者自身が試してみて、感じて、少し直して、また試して、と納得するまで何度も繰り返すことで、楽器としての完成度を高めていきます。ちなみに仕様書はあとで開発者が書き換えていましたけど(笑)。

—— (笑)。

廣井:もちろん正式な開発スケジュールに、この「魂入れ」をタスクとしては入れてもらえませんので、こうした行為のための時間は、開発メンバーがやるべきことを必死で片付けたうえで、自主的に捻出する必要があって、この情熱は作り手が本当に製品を愛していて、「良いもの作りたい」「パフォーマーやユーザーに使ってもらって喜ぶ顔がみたい」と思う気持ちからあってこそ初めて生まれると思っています。

『Lyric speaker』の開発メンバーを見ればわかりますが、土日も夏休みもこの製品のことしか頭にありませんし、実際、休みなしにブラッシュアップを続けています。多くの工業製品、あるいは楽器でさえ、最近はそうした「魂」が感じられることが少なくなってきましたが、『Lyric speaker』にはその「魂」があるんじゃないでしょうか。




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