独立系レーベルの楽曲をメジャーと同等の条件で世界に配信
デジタル・ライツ・エージェンシー「マーリン」インタビュー

約7割の会員の売上が回復

デジタル・ライツ・エージェンシー「マーリン」インタビュー
山口:日本に何度もいらしてますが、日本の音楽レーベルの状況はどのように見えていますか?

チャールズ:一つ目に、失われていたと思っていた音楽の価値が戻ってくるだろうと確信しています。次にニッチなマーケットが世界の主流となっていくだろうということ。独立系レーベルのコミュニティという部分で言えば、単にそれぞれの会社が利益を上げて競争していくことだけではなくて、現在のトレンドとしてグローバルなコミュニティができ上がっていて、個々のレーベルのビジネスは存在しつつも、それぞれにとってベストな契約を選択できるコミュニティ体制ができ上がりつつあると思います。

山口:そんな状況でなぜ日本オフィスを作ったのでしょうか?

谷口:世界で独立系レーベルが置かれている立場がどうなっているか、次に世の中がどう動いていくのかなど、日本にいると情報として入ってこないですし、肌感覚としても全然感じないじゃないですか。このまま行くとガラパゴス化が進んでしまう。ですから少なくとも情報として、世界の独立系レーベルはこういうことをしていて、それに対してマーリンはこういうサービスを提供してるんですよということを、まずは日本の音楽産業に従事する皆さんに伝えていきたいというのが第一歩です。その機会をさらに増やしていくために積極的に情報発信をして、また日々疑問や質問があれば気軽に連絡していただければ、お答えできるという環境を整えていきたいんです。

山口:ニッチが世界の新しいマーケットだとおっしゃってましたが、ストリーミングサービスが出てきたことによって音楽の多様性が担保されたと思います。マーリンは、音楽には多様性が大切だという考えをお持ちのように感じられるのですが、音楽の多様性と独立系レーベルの存在意義についてはどう思われますか?

チャールズ:多様性というところでお答えすると、確かに消費者にとってより多くの独立系レーベルの音楽を楽しめる環境になりましたし、メジャーの音楽と同じように扱われるべきだと強く思っています。独立系レーベルは市場の片隅で細々とやっているようなイメージの時代もありましたが、実は今ではそういうレーベルが主流で、音楽サービスにとっても、独立系レーベルの占める割合というのが非常に大きくなってきている。音楽文化において重要な役割を果たすと考えています。

山口:時代の要請なんですね。デジタル化が音楽文化の多様性を担保しているというのは音楽を創っている側にも勇気が出る話です。独立系レーベルの役割が上がっているのですね。

チャールズ:そうですね。マーリンの定義としては、3大メジャーに管理されていないレーベルであれば、日本では大きな国内メジャーであって独立系レーベルに入ります。

山口:既に複数のレーベルとお話されてると思いますが感触はいかがですか?

チャールズ:独立系レーベルに対して、デジタルマーケットにあるバリューを伝えるということが大前提なので、参加するか否かの意思決定はあくまでレーベルのものです。マーリンとしては、デジタルマーケットの価値を伝えていくべきであると考えています。独立系レーベルが、3大メジャーと同等に知るべき情報があるというのがフィロソフィーです。レーベルの権利を選ぶ権利も含めて、選択の自由を保証するのが我々の役割です。

山口:日本のデジタルマーケットはSpotifyが5年遅れて日本でサービスを開始しました。ストリーミングが主流の世界標準の市場になっていくと、海外市場に展開しやすくなると思います。その際にマーリンというのは援軍になってくれますよね?

谷口:そうですね。マーリンの話を聞きたいとおっしゃってくれる会社というのは先見性のある方がいる会社だと思うんですよね。

山口:先見性というか世界標準の感覚ですね。

谷口:同じ事を今までやってきて間違ってなかったのに「なんで明日からやっちゃいけないの?」というのは、皆さん根底に持っている感覚だと思うんですよね。ただ、音楽産業の歴史を見てみるとレコード産業が中心となったのはここ50年くらいないんですよ。残念なことに僕も含めて5〜60年の世界しか知らないから、「今まではこうです」「これからもこうです」とどうしても思い込んでしまうんです。

山口:音楽の歴史は人類の歴史と同じくらい長いですが、レコード産業はその中のたった5〜60年の話ですからね。

チャールズ:国際レコード産業連盟(IFPI)も発表していますし、マーリンでも毎年調査を行っているんですが、一時的にかなり低迷していた幾つものグローバルマーケットが成長の兆しを見せていて、今は回復している時期に差し掛かっている。これはすごく良い傾向だと思います。マーリンの2/3のメンバーのビジネスも、今実際に成長している事が調査でわかっていますので、マーリンというビジネスモデルが実際に機能している証明だと思います。

どこの国でも、大体マーケットの成長や落ち込みのパターンは類似しています。ひとつ言えることは、ここに付加できる価値が存在するということがわかれば、一気に市場が安定することが確実になる。日本のマーケットで言うと、デジタルということも含めて懐疑的になっていて、新しいビジネスモデルやサービスが登場したときに、前例がないとどうしても「やってみよう」という気にならない。しかし、そこがクリアにされていくことで、新しいサービスやビジネスモデルは今まであった価値を奪うものではなくて、さらに付加していくものなんだということが共通認識として広がれば、よりマーケットとして潤っていくんじゃないかと思います。

山口:今後音楽サービスにおいてこういう機能が伸びていきそうだとか、出てきて欲しいというものはありますか?

チャールズ:新しいスタイルのビジネスが増えていくかなとは思います。デジタルマーケットがグローバルなものだという考え方が定着してきたので、デジタルなサービスそのものが新しかった頃は、みんな「Spotify」のようなサービスを始めようとしていましたが、サブスクリプションだけじゃなくて、今後はもっと多様になっていくだろうと考えています。

インタビューを終えて

 オーストラリアでCDディストリビューターをしていたとういうチャールズ・カルダス氏は、レーベルとアーティストの役に立ちたいという思いが伝わってくる人でした。

 Spotify、Apple、Googleと音楽を届けるプラットフォームがグローバルになっている時代にそれぞれの内国法をベースにした音楽ビジネスの仕組みが有効性を失いつつあるのは紛れもない事実です。

 一方で、BABYMETALの成功を見るまでもなく、日本の音楽に世界中で支持される可能性があり、ビジネスチャンスが眠っています。

 マーリンの日本オフィス開設を好機と見るか、黒船来襲とみるかは、立場や考え方によって違ってくるでしょう。欧米で作られた仕組みではなく、オールジャパンでまとめるべきだという考え方もあって然るべきです。いずれにしても、Spotifyが日本で始まった2016年が、世界中でJ—POPが活躍する元年になることを期待したいと思います。

 日本人アーティストと独立系レーベルにも大きなチャンスがあるのです、マーリンが眠れる獅子を目覚めさせてくれるのなら、本当にありがたいことですね。

バグ・コーポレーション 代表取締役 山口 哲一


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