「キーワードは『等身大』」(田邊氏)
「シアター型VRを野外やスタンディングで」(棟廣氏)
【THE VR PARADE】NHKエンタープライズ田邊浩介氏 ×ヒップランドミュージックコーポレーション棟廣敏男氏 トークセッション

「THE VR PARADE」開催、エンタテインメントxVRキーパーソンが登壇
—— お二方とも結構違うアプローチなのかなと思うんですが、立体感というのは共通していると思うんですよね。その立体感をアーティストや演者と作るときに、どういうコミュニケーションがされているんですか?

棟廣:そこは本当に難しいんですよね。僕自身も出演者も初めての場所でやるわけで、本当に手探りでやっていってたんです。基本的に出てくれる映像作家たちがみんなプログラマーで、いわゆる映像作家とはちょっと毛色が違いますしね。とにかくトライアンドエラーを繰り返して、本番までに何回もみんなで意見を出し合って、1回目を迎えたという感じですね。

—— リハーサルというか、ゲネプロに近い形をひたすら繰り返す?

棟廣:かなりやりましたね。

—— こういう特殊なエンターテインメントの形だと、やっぱり完成形をイメージできないじゃないですか。

棟廣:そうですね。そういう意味で完成形をより持っているのは映像作家の方かなと思うんですが、こっちが常識的に思っていること以外のところでの提案がすごく多いんですね。私も最初は気づかなかったんですが、リアスクリーンをどう使うか?というのが結構肝で、ある作家がリアスクリーンに影しか映さないと。要はフロントのスクリーンに映っている物体の影をリアスクリーンに映す。それだけでかなり立体感が増すんですね。そういうことを提案してくれるのが面白かったですね。

—— 「Aoi -碧- サカナクション」では、演者側とはどのようなコミュニケーションがあったんですか?

田邊:そうですね…割と良い意味で、おまかせっていう感じで(笑)。

—— おまかせ(笑)。

田邊:とにかく、彼らがメチャクチャにスケジュールがタイトだったんですね。また、彼らとの仕事は初めてではなく、以前にもガッツリとコラボした経験もあったので、信頼関係もあり、任せてくれていたところもありました。この作品で難しかったのは、そもそもプレビューできる環境がほとんどないんですよ。

—— そうですよね。

田邊:本番環境の250インチで、等身大のサカナクションという設定なんですが、編集スタジオでは50インチでしかプレビューできない、というのが悩みの1つでした。また、8K3Dを250インチでプレビューできる環境では、音響はステレオのみで。逆に22.2chをミックスしたスタジオでは、映像は8K2Dのみ。本番環境と同じ、8K3Dで、22.2chで、250インチでプレビューできるのは、本番の前日に現場でしか見られない。250インチというサイズでの仕上がりイメージを、演者やスタッフと共有するのはなかなか難しいですね。

—— なるほど。

田邊:シアター型VRでのプレビュー環境を手配することが難しい。これは多分棟廣さんも一緒だと思うんですけどね。

—— どんなものでも完成形のイメージがあって、作り始める前に「こういうものを作りましょう」みたいなコミュニケーションがあるわけじゃないですか。でも、お二方のやられていることはそんなに事例がないことなので、どういう風に共通イメージを持つかというのは重要かもしれませんね。今後、体験型のコンテンツ、エンターテインメントが増えてくると思うんですが、個人的にはどんな風に進化していくと思われてますか?

田邊:個人的には、より没入感の高い体験になっていくと考えています。それにはある程度スクリーンのサイズが大事だなということと、あともう1つは「等身大」が、キーワードかなと思っています。

—— サカナクションのVRでもやっている「等身大」ですね。

田邊:解像度以上に、「等身大」で演者を上映するということが、錯覚を起こさせるマジックの1つだと思っています。あと、なるべくカット編集をしないで、主観映像で構成することがもう1つのポイントかなと思います。大画面のシアター映像で、バーチャルリアリティ的な演出をしていくことによって、より没入感の高い体験を表現できると思います。

—— なるほど、面白いですね。それは体験型ならではの視点ですよね。

田邊:そうですね。

—— 棟廣さんはどんな進化のイメージを持っていますか?

棟廣:田邊さんと近いかもしれないですが、現状、僕たちが表現していることって、DMM VR THEATERがなくてはできないんですよね。それをどう拡げるかを、今後の課題として考えていきたいなです。例えば、DMM VR THEATERでは着席で見るような形なんですが、それを立って見る形にするとか、そういうことも近いうちにできたらなと思っています。

—— 座って見るのと立って見るのとでは体験の質も変わってきますよね。踊ったりみたいなことも含めて。

棟廣:そうですね。例えば、海外のクラブミュージック系のフェスとか演出がすごいんですね。日本でもそういったものを実現させたいなと思いますね。

—— なるほど、面白いですね。体験型VRの未来がとても楽しみになりました。田邊さん、棟廣さん、本日はお忙しい中ありがとうございました。