「ナイトエンターテイメント」と「フェス」、注目シーンの最先端から見た新時代音楽ビジネスの可能性
ニューミドルマン座談会 弁護士 齋藤貴弘氏 × 「Festival Junkie」津田昌太朗氏 × バグ・コーポレーション 山口哲一氏
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【日本の音楽ビジネスの問題点】まだまだ「遠い」ユーザーが音楽にたどり着くまでの距離。ストリーミングで広がる音楽の楽しみに期待したい(津田)

ニューミドルマン座談会 Charlotte inc. 津田昌太朗氏
山口:僕が経済産業省監修の『デシタルコンテンツ白書』の編集委員をもう6年位やっていて、最近、2015年分が発行されるのですが、日本の音楽市場の最新状況ということでいうと、やはり、2015年は「ストリーミング元年」だったいうことになります。ストリーミングサービスについての見解を聞かせてもらえますか?

津田:ストリーミングサービスは、海外にいた時からずっと使っていたので、あって当たり前なんですよ。日本が遅すぎてよくわからなくなっています(笑)外国の友達に日本のデジタル普及の状況を話すと驚かれます。「CDってそんなに売れてるのとか、YouTubeで音楽聴くのって主流なの?」って。

山口:日本は、音楽に興味を持った時の、行き先がYouTubeになっているのが不幸なことだよね。そこから脱出するためにもストリーミングサービスを早く広めなければいけないのに、レコード会社がずっとストップさせてきた。去年、やっと始まったんだけどね。まだまだ一般には広まってないよね。

津田:ユーザーが音楽やアーティストに触れるまでが「遠い」って感じます。やや分断されている感じ。例えば、フェスでいうと、スペインのSonarというフェスは、Deezerと組んでいて、出演アーティストの曲とかアプリですぐ聞ける。グラストンベリーのアプリは、BBCのチューナープレイヤーに飛んでライブ音源が聞けるとか、ユーザーにとってのシームレスな環境が当たり前になっているんです。

山口:本当だよね。斎藤さんは?

齋藤:一般化はできないかもしれないけれど、個人的には、友達との会話から新しいアーティストや音楽を知ることが多いですね。

山口:友人との会話にはSNS上の会話も重要ですよね。日本はどうなればいいですか?

津田:どうなればいいかは色んな意見があると思いますが、まずは普通にSpotifyが始まってほしいですね。

山口:欧米に比べて5年遅いよね。実は僕は、Spotifyの開始をきっかけにストリーミングサービスが一般化するくらい普及しないと日本の音楽業界は終わるなという危機感があって、客観的にとらえられなくなっているんだけれど、日本でもちゃんとSpotify広まるかな?

津田:緩やかに広まるんじゃないですかね。他のサービスより圧倒的に使いやすいと思うので。

山口:それに、フリーミアムはいいよね。ユーザーにとって始めやすいきっかけになっている。無料で試して、音楽をもっと聞きたくなって、有料サービスに移行する人が3割いるって、素晴らしいサービスだと思うんだけどね。日本もそうなると素敵なんですけど。

津田:無料で聴けることはミュージシャンに対して失礼というような意見はもちろんあります。それは海外でもありますが、日本人に対しては、お金の流れとか分配の割合をもっときっちり説明したほうがよいと思います。日本人はそういうことに対して細かいし、ちゃんとしてると思うんですよ。だからこそサービスを提供する側が、自分たちのサービスがアーティストに対して敬意がある、そしてアーティストに長期的に貢献していける自信があるのなら、ちゃんとアーティスト側にどれくらい分配されるとかをきちんと噛み砕いた説明をするのが大事だと思いますね。

山口:乱暴な意見多いよね。ストリーミングの1再生あたりの分配額とCDの売価を比較したりとか、そういう問題じゃなくて、総売上の60〜70%が著作権も含めて、アーティスト側に分配される仕組みだと理解出来てない人も多い。アーティストがちゃんと調べもしないで怒るのとかよくないよね。

津田:向こうだと、Spotifyを批判するアーティストも、Spotifyをうまく”利用”しているんですよ。テイラー・スイフトはSpotifyに載せないというマーケティングで成功したと思うし、Vulfpeckという僕の好きなバンドは、30秒の無音の曲10曲を作って、「寝てる間にSpotifyでかけっぱなしにしてほしい」とファンに訴えて再生回数をあげて話題になったり。

山口:多分日本で今、Apple Musicの有料会員が30万人を筆頭に、全部で100万人位ストリーミングサービスの利用者がいるかなと思うんだけれど、その100万人ってSpotifyが3年前に日本でサービス始めていれば、間違いなく会員になっていた層なんですよ。アメリカでは、SpotifyをApple Musicが追いかける形だけれど、日本は逆でSpotifyが後から走り始めるのが面白い。ユーザー数の競争でハンディキャップがついているみたいになっています。