「チケットの高額転売反対の共同声明」を受けて
再び、チケットの転売について考える
コンサート文化について考え直す岐路に立たされている
ACPC会長/ディスクガレージ代表取締役社長 中西健夫氏インタビュー

今まで以上にユーザーの意見に耳を傾ける

—— このタイミングで声明を発表したのはなぜですか?

中西:それは我慢の限界を越えたからです。

—— 前回、中西さんにチケットの転売問題についてお話を伺ったのは半年前でしたが、そのときはもう少し柔らかいタッチで語られていたと思うんですよ。

中西:この半年、もの凄いスピードで転売サイトがポピュラー化していったというのは事実なんです。それが公式みたいに見えているところがあって、何が僕らの認めているサイトで、何が認めていないサイトなのか、みんなが分からないという所まで行ったと思うんです。

—— IT業界はトライ&エラーを繰り返しながら、もの凄いスピードでサービスを進めて行きますからね。

中西:僕らはミーティングをすればするほど、アーティストごとに色々な考えがありますから、全員の意見をまとめることは難しくなっていきます。ただ、事態が深刻かつ加速度的になってきたので「それでも何とかまとめていかなくてはいけない」とみなさん思ってくれています。「共同で意見広告を出したい」という提案に対しても、音事協もチケッティング協議会も「是非やりましょう」と快諾して下さいました。今回の声明に賛同してくれたアーティストはあくまでも第1陣で、ここから第2陣、第3陣と発表していく予定です。

—— アーティストの言葉があるとまた説得力が増しますよね。

中西:坂本龍一さんが「音楽のファンでもない者たちによって、本当に音楽を楽しみたい人たちの機会が奪われている現状に憤りをおぼえます」とコメントされていますが、あれが僕らの本音だったりするんですよ。音楽に関係ない人に転売目的でチケットを買われて、それで良いのかと。そういうところで利益を得ている人がいるのも明白なので、それは何としても解消したいという気持ちが強いです。

—— 中西さんも以前から転売というよりは、“高額”転売が問題なのだと仰ってましたが、ネットの意見を見ていると誤解されている部分もあるのかな?と思うんですよね。キャンセルの考え方ですとか。

中西:そうですね。ただ「意味もなくキャンセルされては困る」ということなんです。キャンセルを認めるには、何をもって認めるのかということを明確にしないといけないですし。ダフ屋行為をしている人が500枚チケットを買い占めて、「チケットが売れなかったのでキャンセルします」と言われても困るわけで、こういう事態も当然考えなければいけないわけじゃないですか。実際、昔の話ですが、チケットは売り切れているのに席がポッカリ空いていたなんてこともありました。そういう対策も踏まえた上で「認めます」と言わなければいけないので難しいんですよ。

—— 今回、声明を発表されると同時にハッシュタグ「#転売NO」で違法転売について意見を募集されていますよね。色々な意見があったかと思うんですが、寄せられた意見を見た率直な感想は?

中西:もちろん賛否両論ありますが、「もっともだな」という意見も多いです。「高額転売には心を痛めていた」というファンの方たちの意見もありましたし、「そもそもキャンセルができないとか、何も考えていない業界がダメ」「体質が古い」とハッキリ言われる方もいて、それも仰る通りなんです。

あと、「今さら気付いてどうすんのよ」というご意見もありました。僕は半年前から転売サイトに対して懸念していましたが、この半年でものすごい勢いになった。我々が何十年もかけて構築してきたものに対して、今のIT業界は1年で構築できてしまう。そこに対応できていない我々がダメだねということは、重々理解しています。「トライ&エラー」でも良いんですが、前に進むことがとにかく大事で、少々意見の違う人も同じ方向を向いて行こうよと。あと、今回我々はネガティブな意見もきちんと取り上げていくつもりなんです。そういう意見に対して拒絶するのではなくて、ちゃんと耳を貸そう、と。それが一番抜けていたことかもしれないですし、これはフィフティ・フィフティで考えていかなければならないです。

—— ユーザーの意見にもっと耳を貸そうと。

中西:その上で、ユーザーの皆さんに是非お願いしたいのは、否の意見は全く問題ないんですが、ネガティブに言わないで欲しいんですよね。100人いて100人を満足させる方法がないから悩んでいるんです。95人が満足していて、5人が思い切り文句を言って、その声が大きくなると、95人の方が辛くなってくる。今は何もかもが炎上気味になってしまいますから。だから非難ではなくて意見して欲しいんです。ネット上だと「何やってんだよ、バカヤロー」みたいな言い方をされることが多いんですが、「次にこうしてくれたら良い」「これだったら解決できる」といった意見をユーザーサイドから言ってもらえると、アーティストも含め非常に前向きになれます。