各社新人開発スタッフが語る“アーティストの才能を見抜くコツ”
SONIC ACADEMY FES 2016「デビューを目指すアーティストのための”オーディション必勝講座”」開催

エイベックスの危機を救った若手クリエイター

SONIC ACADEMY FES 2016「デビューを目指すアーティストのためのオーディション必勝講座」
エイベックス・マネジメント 伊東宏晃氏

ハグ:伊東さんは関わったアーティストで印象に残っているのは誰ですか?

伊東:うちのグループもSMAさんと同じようにアーティストとタレント、モデル、スポーツ選手だと本田圭佑、ダルビッシュ有、最近だとピコ太郎なんかのマネージメントをやっています。僕自身は小室哲哉さんのマネージャーからスタートしているんですが、小室さんとアメリカで一緒に生活しながら、あらゆる雑用をやっていて、毎日「辞める」って言ってたんですけど(笑)、小室さんのスタジオでヒット曲が出来るまでの過程を教わったり、かなり濃い時間を過ごしました。実は97年に小室さんとエイベックスは契約を解除をするんです。

ハグ:それは一大事ですね。

伊東:当時、売上の7割が小室プロデュース作品だったんですから大変ですよね、その売り上げがなくなるんですから。そのときエイベックスは小室さんに代わる音楽プロデューサーを探そうとしたけど、あんな天才は他にいるわけがないんです。ですから、小室さんと一緒にやっていく中で教わった作詞、作曲、アレンジ、宣伝、プロモーション、ライブ、マーケティングなどを分業化することにして、これが今のエイベックスの骨子になっています。

そこで「作家を探せ」という使命をもらって、捨ててあるデモテープを聴き漁ったんですね。そこから生まれたのが、後にDo As Infinityのメンバーになった「長尾大(D・A・I)」だったり、浜崎あゆみの曲を作った「菊池一仁」、それから「多胡邦夫」(木山裕策の「home」など)。全員当時はアルバイトの青年で、長尾大については、カセットテープのケースは捨てて中身だけを白い封筒に入れて「長尾大」って書いてるだけなんですよ。切手50円で送れるから。皆さんデモテープを聴いたことはあると思うんですが、2秒くらいで良いか悪いか分かるんです。で、カセットを聴くと31曲入っていて全部良いんですよ。その場ですぐ電話して「すぐ来て」と。それで原宿で会って、竹下通りでラーメン食べて「契約しよう」と。そうしたらラーメンなんか奢られたことないって喜んで契約してくれて(笑)。

ハグ:安く上がりましたね(笑)。

伊東:実際その31曲はその後全部使われましたね。そのくらいクオリティが高かったんです。最初に声掛けてくれたのがポニーキャニオンさんで、当時チェキッ娘というアイドルがいて、2曲渡したうちの1曲を選んでそれがデビュー曲になったんです。でも、返してくれた曲に、浜崎のブレイクのきっかけになった「TO BE」って曲があったんですよね。ちょっと運命的な話ですけど。

ハグ:長尾さんは他にも送ってたんですか?

伊東:『Musicman』って本、知ってます? あれのレコード会社とかプロダクションの一覧に”あいうえお順”で片っ端から送ったらしいんですけど、当時エイベックスのプロダクションは「アクシヴ」という名前だったので、届くのが早かったんですよ。その後どんどん電話がかかってきたらしいんですが、早い者勝ちなので。長尾とか菊池一仁が作家として浜崎とかEvery Little Thing、hitomiとか、ヒットを作っていった相乗効果でエイベックスのクリエイティブ面のレベルが上がっていきました。それによって作家からもどんどん「所属したい」っていう連絡がくるようになりましたね。

ハグ:ありがとうございます。では唯一の女性、奥口さん。

奥口:皆さんお話が面白くて聞き入ってしまいました(笑)。私がビクターエンターテイメントに入ったのは実は2年前でして、その前は冨永さんと一緒の会社、SMAという会社でマネージメントをやらせていただいてました。

ハグ:大手から大手に転職するのは、音楽業界あるあるですね。

奥口:12年くらい前に初めて音楽のマネージメントしたのが「木村カエラ」で、彼女のデビュー時から初の武道館ライブが終わるまで担当しました。自分も現場マネージャーとして駆け出しで、学ぶことが多く「一緒に成長していったな」という感じです。その後、新人バンドを担当したんですが、そのバンドと対バンしていたバンドを観て、「凄いな、この声」って圧倒されて。自分は担当出来なかったので別のマネージャーに紹介しました。当時「banbi」という名前で活動していて形を変えて今は「sumika」というバンドで活動しています。今凄く人気なので間違ってなかったなと思います。

ハグ:では、ヤマハの石田さん。

石田:私は「Music Revolution」など歴史あるオーディションの現場に15年ほど携わってきました。印象に残ったアーティストは「吉澤嘉代子」(4回目の「Music Revolution」グランプリ受賞者)。彼女の音源はAG弾き語りだったのですが、そのメロディと詞のマッチングが素晴らしかったんです。何百曲も聴いた中で、その曲がずーっと耳に残ってて、そこにいたスタッフが皆「あの曲のあの歌い出しがもう耳から離れない」と。それで、実際イベントに出てもらったら、あれよという間にジャパンファイナルのグランプリを獲り、デビューされました。やはりメロディと詞が上手くマッチングしてるというのは奇跡的なものだと思うんです。

ハグ:それはなかなかない話ですね。では最後に加茂さん。

加茂:一番は「氣志團」の綾小路翔ですね。氣志團のビデオを観てコンタクトを取って会ったら、白のダブルのスーツに革ジャン着て2時間くらいずっとひとりで喋っていて、その話がかなり面白い。最高でしたね。あと「Base Ball Bear」もデモを聴いて来てもらったんですが、当時4人とも学生で、ドラムの子が「明日デートをする。初デートだ」と。「それがどうなるか」って話だけを2時間。