優れたマネージメントがアーティストを世界へ導く
【13th TIMM】ビジネスセミナー「Keynote Conversation ~ 今後の日本アーティストの海外展開」丸山茂雄氏×Kaz Utsunomiya氏

あらゆるところで自問自答しないと生き残れない

80〜90年代の海外進出へのあらゆる取り組みを踏まえた上で、Kazが海外進出成功への現状把握を語る。キーワードは映像、楽曲制作も含めたローカライズ、そしてマネージメント。

Kaz:今は媒体がたくさんありますし、特にアニメは強力な映像コンテンツですよね。アニメは世界中に広がりつつあって、それに付随している音楽は、注目されるようになっている。あるいはヴィジュアルを絶対に無視できない、BABYMETALのような存在が出てくる。また、今のK-POPも映像と切り離せない。80年代初頭の音楽と、今の僕らが考えている音楽は、たぶん内容と質が大きくチェンジしているんじゃないかと若干思います。

もう1つは、丸さんが海外にどんどんアーティストを送り込んだ例じゃないですが、現地で一生懸命戦うのはすごく重要なことだと思います。YOSHIKIはもう20年くらいロスにいますが、本当にがんばっていると思います。英語を全然しゃべれなかったのが、英語をしゃべれるようになり、新しいメディア、例えば、アニメを使ったり、ドキュメンタリー映画を作ったり、何回もトライしようとするじゃないですか。

日本で大成功しました、ハイ世界に行く、という考え方って、乱暴に言うとアメリカ人の考え方なんですよね。アメリカ人って、スタンダードがアメリカだから、アメリカで成功したら、自動的に世界中にディストリビューションして、モノが売れる、文化も売れるという風に思っています。最近のアメリカはそうじゃなくなっていますが、恐らく70〜80年代くらいのアメリカの思想はそういうことだと思います。でも、「自分のところが終わったら、その次に世界に行く」と自動的に考えるクセが、日本では成立しないんだと思うんですよね。だからこそ、向こうで生活するということをやらなきゃいけないのかもしれません。

また、海外に行くにはアーティストも重要だけど、何より重要なのはマネージメントです。バンドを見つけるより、優秀なマネージメントを見つけるほうが難しいかもしれない。だから、本当にマネージャーを育てるのはものすごく必要だと思います。でも、本来マネージャーってすごくおもしろい職業ですし、海外では優秀なマネージャーはバンドと同じくらい儲かるし、インセンティブがありますからね。

あと、アメリカとかイギリスでやるためには、その土地にあった曲の書き方にあると思うんですよね。それを乗り越えるために、例えば海外のパートナーとCo-Writeするのは、次のドアを開ける手段になるかもしれません。

丸山:上手くはいきませんでしたが、我々が80〜90年代にやったことって決して無駄ではなくて、今もう1回見直せばヒントになることもあると思いますし、アニメやゲームなどのコンテンツや、SNSなど新しいメディアもありますから、新しい試みができると思います。加えて、今コンサートにお客さんがすごくよく入るので、そういう意味でも日本のアーティストにとって前よりはチャンスがあるんじゃないかと僕は思います。

レコード会社は、80年代から90年代の終わりくらいまで、大変な力を持っていたわけですが、2000年に入り、その力が落ちてきて、落ちてきた分どうなっているかと言えば、アーティストとマネージメントが「どうやって生き抜いていくか?」と考えるようになったわけです。そして、自分たちで色々な方法を見つけて、決断して、行動に移すことで、新しいことが生まれるわけですが、音楽業界の構造は、まだそこまで変わっているわけではないと思うんですよ。

YouTubeなんかをもっと利用できるはずなのに、利用できないのはなぜなのか? とか、原盤を自分たちで持っているのにもかかわらず、レコード会社に頼るところが大きいのはなぜか? 原盤を持っているんだったら、もっと自分たちが責任を持って頑張らないといけないのではないか? とか、あらゆるところで自問自答してやっていかないと、今の時代を生き抜いていけないという時期に来ていると思います。

世界に広がったYouTubeは、明らかに正しい著作権の運用ではなかったわけですよね。ただ、正しくはないんだけど、現行法の中で全部処理しようと、この20年近く音楽業界はギャンギャン言っているばかりで、それですべて改善したかというと、明らかにあらゆる事態で全敗しているんですよね。例えば、「着メロはおかしい」と言っていながら、それは基本的に今の日本のITの基礎を作ってしまったわけで、現行の著作権や法律の部分で言えば「あれはおかしいよね」と言っている間に、現実はどんどん動き、それが成果を生み、新しい時代を切り開いている事実に、私も含めてここにいる音楽業界の方々はもう少し敏感になったほうがいいんじゃないかと思います。

後半、質疑応答に入り、インディーズアーティストの海外進出について質問について、丸山氏は「昔のレコード会社はB to B to C でCとは直接つながっていなかった。でも、今は真ん中にいるBを飛ばしてCにつながることができるんだから、どうやったら一番効果的なつながりができるか考えるべき。」と答え、最後に「でもね・・・それを俺なんかに聞くなよ(笑)。はっきり言って、ここにいる若い人のほうが一番それをわかっているんだから。がんばって!」と若い世代への期待を込めて対談を終了した。

【13th TIMM】ビジネスセミナー 丸山茂雄氏×Kaz Utsunomiya 氏