「海外公演に向けて、日本アーティストがすべき準備とは」
【13th TIMM】レヴァレント・ムース氏×アソビシステム・中川悠介氏×ZAZA・南部喨炳氏×BBC Radio 3・ニック・ラスコム氏

環境の違いを密なコミュニケーションで克服する

【13th TIMM】「海外公演に向けて、日本アーティストがすべき準備とは」
ムース:中川さんはアーティスト抜きで現地に行って、現地のスタッフとミーティングを行ったりする機会は多いですか?

中川:頻度的に多いのか少ないのか分かりませんが、やはり現地に行って知ることは大切だと思っています。例えば、きゃりーはワーナーの所属なので、世界中のワーナーの人たちとミーティングをして、その国の市場と情報を聞いたり、あと若い子たちが集まる街に行ったときに、どういったものが流行っているのかは見るようにしています。ただ正直、自分がどこまでそういった時間を費やしているかと聞かれると、そこまで費やせてはいないなと思います。さっき言ったローカライズではないですが、もっと世界へ自分が実際に行く数を増やしていくことは、これから成長していくために重要なのかなと思っています。

ムース:南部さんはどのくらいの頻度で海外に行っていますか?

南部:定期的にアーティストにはついていきますので、年に数回は行きますが、その度に何らかの打ち合わせやミーティングはするようにしています。またスカイプミーティングは、明日も早朝からあります。時差がありますので、だいたい朝の7時くらいからミーティングしていますね。

MWAMは元々アメリカのマネージメントと契約している時期があって、今はそのマネージメントとは一緒に仕事はしてないのですが、そのときに感じたのは明らかに違う環境で育った人が、同じプロジェクトで仕事をすることの難しさで、それを克服するにはコミュニケーションの回数を重ねていかないとダメなんです。それは日本でも同じだと思うんですけどね。「初めまして」と会った人といきなり仕事ができるかというとそうではなくて、複数回打ち合わせを重ねたり、時には会食したり、そういった言語という壁以外の、人となりを知ることも非常に重要です。どういう趣味で、どういう家族構成で、どういう事をしたら喜ぶのかという事を知ってから、本当の意味での仕事は始まるんじゃないかなと思っています。

とは言え、それを全ての人にできるかというと難しいので、僕の理想は、そういった自分が信じられる自分の分身となるような人が、各主要エリアにいるという形なんじゃないかなと思っています。北米と言っても地域によって全然違うので、東西に複数人、自分の分身がいたらいいなと(笑)。ヨーロッパで言うと、理想は自分がひとりひとり各エリアを任せる人に会って、レコードディールも含めてやるのが良いと思っています。先日たまたまPrimal ScreamやThe Chemical Brothersのエージェントの方と話しているときも、まさにそのような話をしました。

北米やヨーロッパというのは、アーティスト、マネージメントが基本的に100%のライツを原盤権も含めて持っています。自分たちでクリエイティブチームを作って、信頼出来る人とひとつひとつディールを交わして行くという話をされていたので。日本のアーティストはそういう感覚に疎いのかなと思います。日本のアーティストを日本で売ることを考えた場合でも、レーベルにある程度任せておけば勝手に売れるんじゃないか? と思っていることも多いと思うんですが、海外のマーケットを考えた場合、それでは絶対にうまく行かないと痛感しています。

ムース:日本のアーティストはレコード会社を信頼している?

南部:ここにはレーベル関係者の方もいるので「信じていません」とは言えないんですが(笑)。もちろん信頼していますが、中心はあくまでアーティストとマネージメントで、アーティストが360度ライツのどのパートナーと組むかという考え方をしています。

そもそもレコードレーベルは複数のアーティストを抱えていますし、マネージメントみたいに数が限られているわけではないので、ひと月に複数のアーティストが推されます。同じ発売日に複数のアーティストが出ますと。私どもとしたら自分たちのアーティストを、一番力を入れて売っていただきたいので、自分たちのアーティストのプライオリティを上げてもらうための詰将棋は滅茶苦茶しますね。それで嫌われてもかまわないと言ったら語弊がありますが、「アーティストにとって」というところで考えていくとどうしてもそういう発想になります。自分たちはグラミー賞を狙いたいと思っているのですが、そこに到達するための最短距離を行けないことがあるなら、徹底的に喧嘩することもありますね。