「海外公演に向けて、日本アーティストがすべき準備とは」
【13th TIMM】レヴァレント・ムース氏×アソビシステム・中川悠介氏×ZAZA・南部喨炳氏×BBC Radio 3・ニック・ラスコム氏

日本の音楽は壁を作っている?〜ネットワークを繋ぐことの重要性

ムース:ニックさんにファンの観点から話を聞きたいと思いますが、私の経験上、ファンというのは、アニメやマンガといった日本のカルチャーがすごく好きな人か、音楽だけが好きな人に分かれると思うんですが、いかがですか?

ニック:イギリス人は比較的音楽志向の人が多いんですが、ロンドンにおいても『ハイパージャパン』と呼ばれる日本のカルチャーを紹介するイベントがありますし、そういうものを好む人たちもいます。そういったイベントを通じて、ロンドンで日本のカルチャーを経験できると思いますし、それがミュージシャンにとってのプラットフォームになりえるかもしれません。ただ私のような人間は、もうちょっと深いところまで行きたいですし、多分イギリスの音楽ファンもそうだと思います。

ムース:日本の音楽は壁を作っているように感じてしまうんです。つまり自分たちの音楽と西洋の音楽、この二つを分けている。日本カルチャーのイベント、原宿のスタイリングなんかもそうですが、意図的に二つを分離しているように思えます。それだと、よりグローバルなオーディエンス、単に日本好きのオーディエンスではないところまで、訴求できないと思うのですが。

中川:まず前提として日本のマーケット自体が充実しているというのがあると思います。レコード会社、マネージメント、イベンター、きちんとビジネスが成り立っている中で、日本の中での稼ぎ方がすでに成立していることが、要因としてあると思います。日本人って自分たちをアピールするのが苦手なのかなと思っていて、例えば、フランスの「ジャパンエキスポ」はフランス人の方々が日本の事が好きで始めたイベントだったりするわけです。

ムースさんは「壁」と表現していましたが、日本の中で成功してしまうと、日本の中の価値観で世界に行こうとするというのが、今までだったのかなと思います。例えば、僕たちが日本でアリーナツアーを回っていたら、スタッフは100人で、ホテルもまあまあ良いところに泊まれたりします。でも、僕らが今実際にワールドツアーへ行ったら、一行は10〜15人で、ホテルは本人とスタッフが一緒です。僕らはそれが当たり前だと思いますが、中には「日本で成功したのにこの扱いはない」とプライドが邪魔する人もいるのかな? と。

中川:世界に出たときに、「こんなに日本のカルチャーが好きな人がいるんだ」と驚いたと同時に、ニッチな集まり以外にも、きちんと受け入れてもらう素質があるんじゃないか? とも思いました。きゃりーの場合はニッチな部分と、『DAZED & CONFUSED』に出ているようなおしゃれな人達とも交流していきたいなというのが、自分たちが動き出したきっかけなんです。

ムース:「日本ではビッグだ」というプライドを捨てなければいけないと言うのは、とても重要なポイントだと思います。それをしないとグローバル展開は出来ないかもしれません。アメリカ人というのはとても鈍感で、UKの市場に対してもヨーロッパの多くの市場に対しても、アーティストのニーズに対応せず、どちらかと言えば、ビジネス寄りで物事を判断する傾向があります。そしてそのビジネスの決定権は、地元の会社ですとかクラブのプロモーターが持っています。あたかも上から目線で「俺達がやってやっているんだぞ」という風に思うわけです。ここで南部さんにお伺いしたいのですが、そのような人たちと話し合いをするとき、どのようなアプローチをしているのでしょうか?

南部:ここ3年ほど海外を見据えて活動してきましたが、180度考え方を変えないといけないと思いました。それは北米に限らず、ヨーロッパでも一括りは絶対に良くなくて、フランスとドイツは全然違いますし、北欧もアジアも違います。そういうところをローカライズしていくという言い方が合っているか分からないですが、ワン・コンテンツを、そのまま同じ形で輸出していくのではなくて、そこにいる人たちのチャンネルにキチンと合わせることが大事だと思っています。

そういった感覚は、3年前には全くありませんでした。「日本と同じようにやれば、ある程度結果が出るんじゃないか?」と思っていましたが、特に北米はかなりの壁があり、アメリカの音楽以外は受け入れないというような肌感を正直感じたんです。ではその中にどうやって入っていこうかと考えると、日本と同じ様に人、物、金といったリソースをきっちりかける。というのはマインドも、体制も変えなければいけないところがたくさんあるからなんですが、ただ変えれば入っていけるかというと、そうではなくて、先程申し上げた生きた人脈というか、そのシーンに通じることの大切さは如実にあります。それは日本のアーティストに中々手に入るものではないので、日本で売れるまで時間がかかるように、それと同じくらいの時間を、もし時間で難しいのであれば、それ以外の何かを費やさないと、海外で成功するのは難しいと思います。

ムース:ニックさんは色々な国のレコード会社あるいはマネージャーからたくさんのアプローチをされる立場ですよね。

ニック:はい。やはりネットワークというのはすごく重要だと思います。例えば、エストニアのアーティストがレコードを送ってくれたんですが、すごく美しい音楽で、こういったものを私が受け取れたことに感謝するわけです。私のオーディエンスにも新しい音楽を届けることができますし、そこからまた新しいネットワークを築く事ができるわけですからね。重要なのは点を繋げていくことです。

南部:本当にそうですね。先陣を切って、世界へ切り拓いてくれている中川さんがいて、それに興味があってここにはたくさんの人が集まっています。ここにまたご縁があると思いますし、今後もMWAMだけに留まらず、色々なことをやっていこうと思っていますので、これをきっかけに気軽にコンタクトを頂ければと思いますね。

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