インターネットテレビの視聴“体験”を“習慣”に変える
AbemaTV 編成制作局長 藤井琢倫氏 インタビュー

番組編成の柱となる音楽コンテンツ

—— 音楽系のオリジナル番組も配信されていますが、「AbemaTV」の中で音楽コンテンツはどのような位置付けと考えていますか?

藤井:音楽はキラーコンテンツとして捉えています。アーティストと音楽はコアなファンを抱えているので、アニメと同様で高い視聴数を集めることができます。このジャンルのコンテンツを配信すればこれくらいの視聴数になるだろうという予測をたてられるようになってきたので、音楽コンテンツは番組編成の柱になっていると思いますね。

—— 番組の企画はどのように立てられているんですか?

藤井:オリジナル番組に関してはテレビ朝日から出向してくださっている方がプロデューサーとして立ち、外部の制作会社の方々と番組の制作をしています。音楽ライブは経験者がほぼゼロの状態からスタートしていて、ほぼ独学で、試行錯誤しながらノウハウを蓄積していきました。

—— では最初の頃はかなり大変だったのでは?

藤井:そうですね、8月は月に60本ほど音楽ライブの生中継をしました。その1ヶ月の生中継を経て、経験値を積み、成功モデルがある程度見えたので、それを元に9月・10月は音楽コンテンツの番組数を半分くらいに減らし、人気の高いコンテンツに絞ってライブを調達したり、生中継を実施しました。

—— 話題になった「TOKYO METROPOLITAN ROCK FESTIVAL 2016」の中継に関してはいかがですか?

藤井:「TOKYO METROPOLITAN ROCK FESTIVAL 2016」も「AbemaTV」本開局時のサービスブーストに大きく貢献してくれたと思っています。当時は本開局して1ヶ月だったんですが、2日間で約200万視聴という大きな視聴を獲得しました。想定を大きく上回る数字だったので、ライブの生中継に積極的に取り組むきっかけにもなりました。

—— コメントの数も相当多かったそうですね。

藤井:音楽ライブやアニメ、ドラマもそうなんですが、コメントが多い番組ほど数字がいい傾向があります。「AbemaTV」でそのときにしか見られない価値のひとつとして、「みんなで同時に共有して盛り上がっている」というのが大きいと思うんですよ。ライブに行けないけど、家でただDVDを見るよりもコメントをしながら番組を見ていると一緒に盛り上がっているような気がするんですよね。「自宅でも盛り上がってる人達と一緒に楽しめる」という楽しみ方は新しいなと思っています。

—— スペースシャワーTVとMTVのチャンネルもありますが、今後オリジナルの番組のクオリティを上げれば上げるほどバッティングしてしまうということはないでしょうか?

藤井:ないこともないですが、逆に連携できるところもあります。例えば先週[Alexandros]の独占生中継をやったんですね。そのあとに「SPACE SHOWER MUSIC CAST」で[Alexandros]特集を編成していたんですよ。「AbemaTV」での生中継のあとに「この後は『SPACE SHOWER MUSIC CAST』で[Alexandros]特集が放送されます」というように、「AbemaSPECIAL チャンネル」から他チャンネルに誘導することもできるので、連携して展開していくようなことも考えられるんじゃないでしょうか。

詳細なデータ解析でユーザーの行動を可視化

—— 8月の60本生中継の経験から得られた独自のノウハウなどありますか?

藤井:最近、3夜連続というのをよくやるんですが、音楽ライブって一時的に視聴数は伸びるのですが、一夜限りの大花火という感覚が強く、一夜だけだとあまり価値がないんですね。たまたま「AbemaTV」で配信しているだけであって、それがその他の動画サービスやチャンネルだったとしてもユーザーにとっては関係ないんです。そうではなくてしっかりと「AbemaTV」に定着させることが重要だと考えています。ですから、まずは3夜連続で「AbemaTV」に来てもらえるコンテンツを用意して、視聴体験を少しでも積んでもらい、さらにそこから色んなコンテンツに促すようなことは意識的にやっています。

—— 実際にユーザーは目的の番組以外のチャンネルも視聴しているんでしょうか?

藤井:皆さん自分のお目当ての番組以外の他の番組やチャンネルに流れていますね。ここに関しては全てデータが取れています。例えば、3ヶ月連続でEXILEさんの番組を放送しているんですが、2ヶ月前のEXILEさんのコンテンツを5本以上観てくれたユーザーにだけ「プッシュ通知」を送るなど、一度離れたユーザーに再び視聴してもらえるような仕組みを積極的に取り入れ、継続的な視聴に結び付けていきたいと思っています。

—— ユーザー1人1人のデータを取れるのはインターネットならではですよね。

藤井:ユーザーの動向は細かく見ていて、例えば1ヶ月以内に同系統の複数コンテンツに対し、どれくらい継続して視聴しているかなど、細かく分析しています。「このコンテンツからこのコンテンツへの継続率は56%だけど、このコンテンツからこのコンテンツへの継続率は23%」と全て可視化することで一番関連性の高い番組をユーザーに提供していくことができるんですね。

—— マネタイズは広告収入とお伺いしていますが、テレビの広告モデルとは全く違うんでしょうか?

藤井:編成の仕方や施策はテレビの考え方とは全然違いますが、広告はテレビCMと同様にスポット枠で販売しているので、テレビの広告モデル非常に近いんですよ。1人1人にターゲティングしているのではなくて、Aという番組に配信されている広告はいつ誰が観ても同じになります。何故かというと、ターゲティングするとそのCMがリーチできる対象が狭まってしまうからですね。