Qsicman追跡レポート 第1回 レコーディングエンジニア 編

追跡第1回2

-この仕事をやってて、辛いことって何ですか?

来栖:うーん辛かったら、まず続かないと思いますね。まず不規則な生活は当たり前になるし。仕事自体がまず「寝れない」「帰れない」それから「彼女ができない」と3苦そろってますからね(笑)。あ、あと離婚率も非常に高いみたいですね。ですので、彼女がいてもパートナーには理解のある人じゃないとダメなんじゃないかと思いますね、マジで・・・。


-お休みの日とかって何やってるんですか?

来栖:まず休みの日には、レコードショップに出かけて新譜を片っ端からチェックします。職業柄、情報だけは頻繁に耳に入ってくるんですが、買いに行く暇が全くないんで、休みの日の時までに買いたいCDの相当なリストができあがってるんです。それをまとめ買いします。けど、音楽だけにこだわるのではなく、かなり幅広く遊びます。感動する心を常に忘れないようにしたいんです。音楽に向かうときに、まずその事をいつも頭に置いてますね。


-ハードディスクレコーディングについてどう思いますか?

来栖:うーん。難しい質問ですねー(笑)。ハードディスク・レコーディングが徐々に普及してきて、一番録音の現場で変わったなというのは、メリットを上げれば、何度でもやり直しがきく、どうにでもなるってことですね。昔だったら、いちいちテープを巻き戻してから音出しして、セッティングが残ってなかったら、音質も変わってしまう分、どうしてもやり直せない状況があった。けど今は、タイミングだってピッチだって何でも直せる凄い時代です。反対にデメリットを上げれば、たとえば、みんな歌がうまくなりましたよね。うまくなったっていっていいのかわからないけど。今だったらなんでも直せちゃうんで。あと、オペレーターについても、パンチインの能力も後でいくらでも直せるんで、あんまり問われない。逆にいうと、演奏する側がプロツールスだとわかっていると、それこそおいしいとこどりもできちゃうし自然な感じで繋げちゃうこともできる。だから、『この一発にかける』みたいなものがなくなり、現場の緊張感がなくなるってことです。やっぱり録音の現場は、「この一瞬にすべてをかける」っていう一発取りの意気込みが曲の勢いだったり、そういうものが音楽の原点だと僕は思ってるんで。CDはすごくうまいけどライブは最悪、とかそういうのが業界内ですごく広がってると思います。アナログ24CHの時とかは、カセットテープみたいなもんなんで、同じところを何度も録り直しとかしてるとそこだけ音質がどんどん劣化してしまう。なので、なるべく一発で録りたいっていうのが根底にあったんです。プロツールスは何回録っても同じ音が出るんで、そういった音楽的なノリや緊張感みたいなものはなくなってきてるような気がします。ただ、プロツールスで半分の時間でできることをわざわざアナログでやる必要もないと思うし、アナログメディアでは作り出せないトリッキーな新しい音楽とかも生まれたりしてるわけだし。共存していけたらいいなと思います。


-レコーディングエンジニアとPAエンジニアって対極にあるんですか?

来栖:もともと、レコーディング技術の発達って、たとえば、PAエンジニアとレコーディングエンジニアがいたとして、どっちが音楽的にピュアかといったら、やっぱり『ライブ』が音楽って本物だと思うんですよ。それこそ、音っていうのは本来一瞬そこで派生してすぐ消えていくっていうものだから、その日その場所でしかその音を体感できないものじゃないですか。で、そこに行けない人や聞けない人のために、そのライブを擬似的に自宅や好きな時にヘッドホンでも体感できる目的で生まれたのが、CDだったり記録メディアだったりすると思うんです。だから、レコーディングエンジニアの方が後者にあると思うんですよ。生の空気を封じ込める時にPAの方が一瞬で発生して消えていく音の方に携わっていると思うし、レコーディングエンジニアっていうのは、作り手でもあるけど、自分が最高だと感じたバランスでその音を聞き手に提供するっていう聞き手の代表でもあると思います。そう言う意味で、RECもPAも音をナリワイとして生きる者として、どちらも重度の音中毒者であることはまちがいないですね。


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