【後半】YGブランドを通じて360度のライフスタイルを提案 株式会社YG ENTERTAINMENT JAPAN CEO 代表取締役 渡邉喜美インタビュー

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2017/04/29 (土) - 03:00
【後半】YGブランドを通じて360度のライフスタイルを提案 株式会社YG ENTERTAINMENT JAPAN CEO 代表取締役 渡邉喜美インタビュー

【後半】YGブランドを通じて360度のライフスタイルを提案
YG ENTERTAINMENT JAPAN CEO 代表取締役 渡邉喜美インタビュー


株式会社YG ENTERTAINMENT JAPAN CEO 代表取締役
渡邉 喜美

 


2016年、韓国デビューから10周年を迎え、初のスタジアム公演やドームツアーなどその勢いが止まらないBIGBANGを筆頭に、WINNER、iKON、BLACKPINKなど次々と人気アーティストを送りだすYG ENTERTAINMENT。その日本法人「YG ENTERTAINMENT JAPAN」が今年10周年を迎える。今回は同社 CEO 代表取締役 渡邉喜美さんに、2016年のYGを振り返って頂きつつ、2017年の展望や、全世界へ飛び立つ韓国の音楽業界の現状までじっくり話を伺った。

 

2017年4月28日 掲載


インタビュー前半はこちらから!
【前半】YGブランドを通じて360度のライフスタイルを提案
YG ENTERTAINMENT JAPAN CEO 代表取締役 渡邉喜美インタビュー

 

PROFILE
渡邉 喜美(わたなべ・よしみ)  


YG ENTERTAINMENT JAPAN 代表取締役社長
1968年 福島県生まれ
1999年 Avex Entertainment Inc. 入社
2012年 YG ENTERTAINMENT JAPAN 入社

avex時代にはDo As Infinity、dreamや数々の海外アーティストのマネジメントを担当。
現在は韓国に本社があるYG ENTERTAINMENT日本支社の代表取締役社長として、BIGBANGをはじめとする韓国人アーティスト、韓国人・日本人俳優のマネジメントを中心に、自社のアパレルブランドであるNONAGONやコスメブランドmoonshotなどの日本展開を手掛けている。

 

 

日本と韓国の音楽業界の違いは「ハングリー精神の差」

 

—— 韓国では行政事業として音楽を支援している印象があります。

渡邉:エンターテイメントに対して国がバックアップをしてくれるので、そういう意味では日本よりはやりやすい環境ではあるんですが、レコード会社やプロダクションといったエンターテイメント企業が韓国だけで商売ができるならば、別に海外でやろうと思わないじゃないですか。韓国では日本のように商売ができないから「海外に行くしかない」という発想なので、各自で世界に出て行かなくてはという気持ちはみんな持っています。

では、「世界に出て行くにはどうする?」となったら、最高のパフォーマンスができて、その国の人たちとコミュニケーションが取れなければいけないので、言葉は当たり前のように覚えますよね。明洞とか観光地の店員でさえ日本語を覚えるじゃないですか? そして今度は中国人観光客が増えたら、みんな中国語で話しているんですよ。でも日本ってそうじゃないですよね。だから国の支援もあるんでしょうけど、個人が海外で成功するためには、というところに対してすごくストイックな気持ちを持っているのが韓国の特徴かと思います。裏を返せば、日本はまだマーケットが大きくて、日本のアーティストは国内で売れていれば食べていけると思うんですね。韓国は国内で売れていても、そんなに大きなビジネスにはならなかったりするので。国内だけでビジネスが出来なかったら外に行くしかなくなる。もちろん韓国が悪い国というわけではなくて、やはり人口が少ないので、自然と外を向きますよね。

—— 日本と韓国を同じ尺度で見ても仕方ない?

渡邉:ええ。それでも日本のアーティストが海外に出て行くんだといったときに、韓国のアーティストとどう勝負していくかとなったら気持ちの問題でしかないと思うんです。彼らは世界で勝負するために、少なくとも5年から10年練習生をやって、すべて身につけてやっとデビューするんですが、日本だとオーディションをやってあっという間にデビューすることが多いですよね。

—— ちなみに韓国の練習生はどのように採用しているんでしょうか?

渡邉:そのあたりは日本のプロダクションと全く一緒で、オーディションやスカウトですね。

—— では新人開発の過程が違うということでしょうか?

渡邉:それもたくさんの方に聞かれるんですが、実は今、日本も新人開発に力をいれていますし、あまり変わらないんですよ。avexさんは練習生をアメリカに行かせたり、力を入れているじゃないですか。YGも全てのジャンルのダンスをやりますし、ボイストレーニングもグループレッスンからソロまでやりますし、語学も英語・中国語・日本語をやります。全寮制で食事の管理もして、それを5年間とか10年間やっているので、期間の差はあるかもしれないですが、今は日本のプロダクションの方もそれくらいのトレーニングはしていると思います。

ただ1つ違うのは本人たちの気持ちの問題なんですよね。ハングリー精神というか。徴兵制もありますし、練習生の期間が長いと活動できる期間が限られてしまうので、1日でも早くデビューしたいと思うと、懸命に練習するんですよ。30歳くらいまでの考え方が日本の男の子とは全く違いますよね。期限があるのでみんな子供ながらにずっと考えていますよ。男女問わず世界に出て行くためにはどうするか、という頭で練習生をやっていますから。

例えば、日本のプロダクションでも練習生が定期的に成果を見せる評価会みたいなものがあると思うんですが、日本だとアドバイスをするくらいで終わると思うんですね。でもYGだと、そこがデビューできるかできないかが決まる場なので、練習生は全部完璧にして評価会に出るんですよ。自分が大きなステージに立っているアーティストのつもりで衣装も全部揃えて。なので、全てはそのハングリー精神の差だと思います。


 


【後半】YGブランドを通じて360度のライフスタイルを提案
YG ENTERTAINMENT JAPAN CEO 代表取締役 渡邉喜美インタビュー

 

 


海外に行ったらそこに何万人のお客さんがいたという状況を作る

 

—— 韓国のアーティストはSNSや動画を積極的に取り入れていますし、プロモーションにも外に出て行こうという意識が反映されていますね。

渡邉:これも一長一短あって、日本はアーティストの権利がきちんと守られているじゃないですか? ですから音楽に関しても映像に関しても誰かが管理してくれてお金が入ってくるシステムが整っていたり、ファンクラブなどの会員制ビジネスもしっかりしていて、それでアーティストが収入を得られたりするんですね。

韓国にももちろんそういった権利を管理する団体はありますが、コンテンツそのものをお金に換えようという考え方ではないので、歌番組1つとっても、番組が終わるとテレビ局がネットにあげるんですよ。YGもそうですし、韓国のプロダクションはプロモーションビデオ(PV)ができたらYouTubeに全編アップします。日本はPVをCDの映像特典にしてマネタイズする事が多いんですが、韓国は無料で出しているのでそれができないんですね。

その代わり、YouTubeは世界中の人が観るじゃないですか? 世界中にBIGBANGのファンが生まれて、世界中で「江南スタイル」が歌われて踊られました。韓国ではコンテンツをお金には換えられないけど、出すことでどこの国に行ってもファンがいるので、ライブができて、マーチャンダイジングが売れる。ただし、こういうやり方をしていると会員制ビジネスは難しくて、ここ10年くらいアドバイスしているんですが、日本のようにうまくはいってないです。

—— コンテンツをPRの手段にすることで、世界規模のプロモーションができている?

渡邉:そうですね。例えば日本のドラマも海外の人はあまり知らないんですよ。 でも、韓国のドラマは世界中で観られていて、特に中国ではものすごい人気なんですよ。それは観られる環境を中国で作っているからなんですが、日本は色々と保護されていて難しいですよね。日本の監督とかプロデューサーって本当は素晴らしいんです。でもいろんな国の人に観てもらう機会がない。観たら「日本のクリエイターはすごい!」ってみんな言うのに、日本の制作陣は「日本に良いクリエイターがいない、韓国の監督を使いたい」とか言うんです。きちんとコンテンツが観られる環境を作ることができれば、日本もグローバル化することは非常に簡単だと思います。

—— 日本の音楽業界に対して「もうちょっとこうしたら良いんじゃないか?」と思っていらっしゃることはありますか?

渡邉:すごく大それたことを言うと、日本の根本的なシステムを変えなきゃいけないと思います。良くも悪くも日本はエンターテインメント業界に歴史があり、先輩たちが築き上げてこられたものがあるわけですが、韓国ってまだ業界の歴史が浅いので、それで起きるトラブルも実はたくさんあります。ただその一方で、古い既成概念に囚われない新しい発想で積極的にチャレンジする力があるんですよ。日本は我々の先輩たちがすごく時間をかけて作ってきたアーティストやクリエイターの権利を守るためのシステムがきちんとできている。でも、それが足かせになっちゃっている部分もある。これは本当に難しい問題です。このシステムを崩しちゃうと、やはり痛みはありますから。

—— おっしゃる通りだと思います。

渡邉:そこを越えて、K-POPは世界に広がっていっていると思うので、世界に出て行こうと考えているなら言語を覚える、というようなことは当然するべきだと思うんですが、例えば、英語も中国語も韓国語もできるようになったアーティストが、海外に行ったところで、そこにファンがいなかったら商売にならないですし、そこで1から日本でやるみたいにライブをコツコツやりますと言っても時間もかかります。ローカライズしてやっていくと言っても簡単ではないので、だったらBIGBANGみたいに、行ったらそこに何万人のお客さんがいたという状況を作るべきだと思うんです。そうすると「作ったものをどう世界に知らせるか?」という、業界全体の問題じゃないかなと思います。

—— 言葉は悪いですが、韓国は「損して得取れ」みたいな感じですよね。

渡邉:韓国はそうですよ。PVとかバンバン撒いておいて、後で一気に持って行く感じですね。

—— 端から見ると順調に見えるK-POPも、一方で痛みを伴っているんですね。

渡邉:そうですね。日本はコンテンツの権利に関して、しっかり守ってもらえる良い環境がありますからね。例えば、K-POPのアーティストのPV、特にYGのアーティストのPVを観ていただくと、すごいかっこいいと思いませんか?

—— そうですね。すごくお金をかけているなとも思います。

渡邉:自画自賛で申し訳ないですが(笑)お金もかけていますし、めちゃくちゃかっこいいと思うんです。日本は当然、日本でビジネスをするために作っているPVであるのに対して、韓国はそのPVをきっかけに世界に売ろうとしていますから、とんでもないお金をかけます。でも、日本のアーティストがYGくらいお金を使ってPVを作ったところで、今は日本でしかビジネスができないですから、元が取れないですよね。BIGBANGはPVにたくさんお金を使っていますが、アメリカ、ヨーロッパ、中国といった世界中の人たちがそのPVを見てライブに足を運んでもらえるという費用対効果を考えたら全然高くないんですよね。



—— なるほど…。

渡邉:と言っても、日本はまだまだパッケージが売れてはいるじゃないですか。配信でもちゃんとお金を払ってもらえますし、そういう意味では、音楽業界全体がもっと本気になってきたら何かが変わってくるのかもしれないし、テレビ局のみなさんとかはそろそろ考え始めているんじゃないでしょうか。やはり、ドラマを作ったところで、日本人しか見ないとなると、制作費を下げざるを得ない。でも韓国は日本や中国で観られることも踏まえてドラマを作っています。ですから制作費が高いですし、さらにそこに出ている役者のギャラも当然良くなりますよね。日本の役者さんって今色々と取りざたされていますけど、プロダクションが悪いんじゃなくて、本当に役者のギャラが低い。お金だけじゃないですけど、夢がないですよね。制作費にお金をかけられないと、クオリティも…。

—— 負のスパイラルに陥ってしまう。

渡邉:そうなんですよね。だけど、誰かが悪者にならなきゃみたいなところで、プロダクションが悪い、みたいな。それについては一言申したいんですけど(笑)。

—— (笑)。もうちょっと大きくビジネスを見たほうがいいということですね。

渡邉:そうですね。でも、見る必要もないかも知れません。日本だけでやっていくんだったら、日本でやっていくことをしっかり考えれば良いと思いますしね。だって、日本はマーケットが大きいですから、みんなここでビジネスができるじゃないですか、今は。でも、世界へ出ると決めるんだったら、何かを大きく変えて進まなきゃいけないですし、1プロダクションががんばってやっていくとか、そういうレベルの話ではないのではないか? と個人的には思います。


 


【後半】YGブランドを通じて360度のライフスタイルを提案
YG ENTERTAINMENT JAPAN CEO 代表取締役 渡邉喜美インタビュー

 

 


「面白いことを考えて、一番最初にやる」YGジャパンのチーム力

 

—— 最後に、YGジャパンとして、今後、どういった方向性でビジネスを展開していこうとお考えですか?

渡邉:YGのアーティストを日本でブレイクさせるというのが私のミッションだとは思うんですが、次のステップとして、アーティストやYGというブランドを通じて、音楽だけじゃない360度のライフスタイルを提案していきたいと思っています。実際にそれは本社も考えていて、音楽はもちろん、NONAGONというファッションブランドをやったり…実は私が今日はいているスカートもNONAGONなんですけど(笑)。moomshotというメイク・ブランドを展開したり、あとはYG Republicという飲食もやっていたりしているんですね。それが今、韓国からアジア各国に展開していますので、日本でも展開しようと思っています。ですから、今後はYGブランドをいろいろな角度から日本に提案するのが次のステップかなと思っています。

NONAGON オフィシャルサイト

NONAGON オフィシャルサイト


—— 本国とのミーティングというのは、どのくらいの頻度でやられたりするんですか?

渡邉:実は、うちの会社は先ほども言ったように自由な会社なので、会社っぽいことをあまりしてなくって(笑)。良くも悪くも、本社からすごく任せてもらえているんですよ。普通だと頻繁にテレビ会議をしたりとか、他の外資系の方々はやってらっしゃると思うんですが、そういうことはほとんどしませんし、月に1〜2回韓国へ行ってミーティングするくらいです。

—— 渡邉さんが率いるYGジャパンの特色は何だと思われますか?

渡邉:何でしょう…うーん、難しい質問ですね(笑)。

—— 今回お会いして、渡邉さんのキャラクターというか、パーソナルが反映された部分もあるのかなと感じたもので。

渡邉:うちの会社に限らず、YGの仕事をしていただく方には、みんなYGを愛してもらいたいですし、何か熱い気持ちのない人とは仕事をしたくないんですよね。私だけ盛り上がっちゃって(笑)、みんながシラーッとしているのとか嫌なんですよ。だから、うちの会社の人間もそうですし、うちに関わってくださるavexさんのYGEXというレーベルがあるんですが、そのチームのみなさんもそうですし、宣伝してくださるみなさんとかも、熱い気持ちでやってくださっているので、そこが他と違うかなと思っているんですね。

みんな遊ぶことより「何か面白いことをやろうよ!」みたいなことを話しているときが一番盛り上がるというか。仕事が終わって、せっかくみんなで飲みに行っているんだったら、くだらない話でもすれば良いのに「こんなことやろうよ」「じゃ、こんなのはどう?」と仕事の話ばかりしています(笑)。でも、その雑談が実際、今のビジネスに繋がっていて、例えば、KRUNK(クランク)というYGのキャラクターがそうで、すごく人気があって、そのキャラがアーティスト並に活動していたりして(笑)。

KRUNK

KRUNK


—— キャラクタービジネスもやられていたんですね(笑)。

渡邉:そうなんですよ。KRUNKも忙しくてスケジュールがなくて。今、お台場のジョイポリスでカフェをやっているんですが、常に色んなことをしていて、挙げ句の果てにタワーレコードでハイタッチ会とかやっちゃうんですよ(笑)。

—— (笑)。

渡邉:そんな感じに、みんなが面白がって話したことが現実になったりしますし、ありがたいことにうちのお客様はそれを楽しんでくれるタイプのお客様なんですよ。ですから、YGのアーティストが良い結果を残せているのは、ヤン会長のプロデューサー力やアーティストの魅力はもちろん、そういうみんなのちょっとしたアイデアだったり、熱い想いだったり、そういうところにあるんじゃないかな? と思うんです。手前味噌ですけどYGでやったことって、結果みなさんに真似をされちゃったりするんですが、真似をされることは光栄だと思っていて、YGがおかしなことを考えて、最初にやって、それが盛り上がって真似されたら、私たちはまた別の新しいことをする、ということを絶えずしているチームですね。

—— チーム力が高いですね。

渡邉:高いです。そこに熱い想いのない人は多分いられないと思いますし、もしかしたら「何バカなことを話しているんだろう?」って思われているのかもしれないです(笑)。くだらないことを熱心に、必死に怒っていたりもしますしね。そして、面白いことにBIGBANGは、そんなアイデアに乗ってくれるんですよ。

ライブをするときは、もの凄く格好いいですし、ライブの制作に関して、ちょっとでもミスがあったらすごく怒るし、とてもストイックな人たちなんですが、歌っているとき以外のBIGBANGって、本当に面白い子たちなんですね。もう、みなさんびっくりするくらい。それで、私たちが面白いことを提案すると、それを倍で返してくるんです。ですから、例えばファンクラブイベントとかで、メンバーがちょっとゲームをしたりとか、まあ、それはどこのプロダクションのアーティストもやっていますが、BIGBANGはそれを勝手に広げちゃうんですよね。散らかしてくれるというか(笑)。なので、ファンのみなさんは良く分かっているんですけど、BIGBANGは本当に人を楽しませる天才です。

—— BIGBANGは生粋のエンターテイナーなんですね。

渡邉:BIGBANGはそういうアーティストなので、私たちもやりがいがあるというか、面白いことをもっと考えてみようと思っちゃうんですよね。そもそも、みなさんと同じことをしていても面白くないですし、ビジュアルだけで売っているんだったらそれはそれで良いかもしれないですけど、YGはやっぱりBIGBANGの人間味というか、笑いのセンスとかも彼らの魅力だと思うので(笑)、そういうところを引き出していけるように、これからもチームで力を合わせてやっていきたいですね。

株式会社YG ENTERTAINMENT JAPAN CEO 代表取締役 渡邉 喜美氏