デジタルネイティブのスキマ時間にカルチャーを届ける。日本初Instagram Storiesメディア「lute」がローンチ【前半】

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2017/08/31 (木) - 12:00
lute株式会社 代表取締役社長 五十嵐弘彦氏

lute株式会社 代表取締役社長

五十嵐弘彦氏

 

2016年にスタートし、YouTubeを中心としたカルチャー系動画分散メディアとして運営していた「lute(β版)」が、lute株式会社を設立し、8月17日、国内初のInstagram Storiesメディア「lute」としてローンチされた。これまでβ版として、アーティストMVやライブ映像、ドキュメンタリー、バラエティ動画などを制作し、YouTubeを中心に公開・運営をしてきたluteがなぜメディアの中心をInstagramへ移行したのか? 今後は映像制作事業やアーティストマネジメント事業も行うという同社の代表取締役社長 五十嵐弘彦氏に、luteのこれまでとこれからをご自身のお話も交えつつじっくり伺った。本日と明日の2日連続で公開。

 

lute Instagram

https://www.instagram.com/lutemedia/

 

 

動画メディアで日本の音楽カルチャーを伝えたい〜「lute」の誕生

 

―― 最初に少し五十嵐さんご自身のことをお伺いしたいのですが、どのようなご家庭で育ったんですか?

 

五十嵐:実は、僕はレコード業界3代目なんですよ。祖父(五十嵐泰弘氏)がトーラスレコードという会社をやっていて、父(五十嵐弘之氏)は今ドリーミュージックにいます。叔母もキティレコードにいましたので、家族行事で集まると自然と音楽業界話になりますし、お正月はみんな仕事でいないんですよ(笑)。そんな家系で育ったので、仕事をするイコール音楽の仕事だとなんとなく思っていました。それでエスカレーター式の学校に通っていたんですが、ドロップアウトして、ニュージーランドに留学をして、それから8年間くらい住んでいました。

 

―― なぜ、ニュージーランドだったんですか?

 

五十嵐:当時、すごくパンクな気持ちがあって、アメリカへは行きたくなかったんですよね、なぜか(笑)。本当はイギリスに行きたかったんですけど、イギリスはほかの英語圏に比べて学費が高かったんです。それでオーストラリアかニュージーランドというチョイスになってくるんですが、東京近郊で生まれ育った身としては「牧歌的な場所に行ってみたい」と思って、ニュージーランドにしました。

 

―― パンクな気持ちだけど、行ったのは田舎という(笑)。

 

五十嵐:そうなんです(笑)。その留学を通じて、仕事やライフスタイルというところで海外っぽい思想を培ったのかなと思います。それでニュージーランドの大学を卒業して、日本に帰ってきてしばらくフラフラしていたら完全に就活をミスって…(笑)。

 

―― 音楽業界も受けられたんですか?

 

五十嵐:ええ。トライはしたんですけど、何か生意気なことだけ言って弾かれちゃった、

という感じでした。当時の音楽業界はレコード、CDと来て「次はなに?」というのが今ほど見えてない一番厳しい時期で、祖父も父も「音楽業界に入ってくるわけないよね」というスタンスでした。対してIT・ベンチャーという言葉がメチャクチャ流行っていて、そんな中、先輩のベンチャーに潜り込むところから僕の仕事のキャリアはスタートしています。そのときはカルチャーとは関係ない、どちらかと言うと、会社として事業を回すみたいなことを勉強させて頂きつつ、仕事が終わると遊びに行くといった感じでした。

 

結果、3年間そのベンチャーで働いたんですが、やっぱりカルチャーや音楽のことをやりたいという気持ちがあったので、「ではなにができるか?」と考えたときに、なんとなく「メディアというフォーマットで音楽を伝えられるんじゃないか?」と。非常にフワッとした気持ちではあったんですけど。

 

ですからレコード会社の門を叩くというよりは、メディアの勉強をしようと思ってメディアジーンという会社に入社し、ライフハッカー編集部に配属されるんですが、その編集部には、今は「WIRED」の副編集長やっている年吉(聡太)さんや、サイバーエージェントで「SILLY」というメディアをやっていた尾田和実さんとか、ロックな人が集っていたんです(笑)。

 

―― ロックな人たちですか(笑)。

 

五十嵐:ええ(笑)。しばらくそこで働かせて頂いていたんですが、現在luteの広報を担当している芳賀(仁志)は当時エイベックスにいて、彼から「デジタル領域の新規事業をやるんだけど、人を探しているから来ない?」と誘われて、そこからエイベックスにお世話になるという流れです。

 

当時エイベックスに対しては、体力がある数少ない内資の企業で、かつ、360度ビジネスもやっているし、tearbridgeとかcommmonsのようなレーベルの存在を見ていて「すごい会社だな」という思いがあったので転職しました。そこでサブスクサービスの立ち上げに関わったんですが、そのうちに事業を別の人にまわしてもらう形となっていき、何というか…子供が離れていくみたいな感じになったんですね。

 

―― サービスが安定期に入ったんですね。

 

五十嵐:そうです。それでなんとなく燃え尽き症候群じゃないですけど、くすぶっていたときに、改めて「メディアでなにかできることがあるんじゃないか?」と考えたんです。僕は毎年SXSWに行かせてもらっていたんですが、その中で「もうそろそろプラットフォームの話をするのはやめよう」という風潮になっていて、「プラットフォーム上にどういうコンテンツを乗っけていくか」といった議論が生まれてきていたんです。

 

当時「VICE」や「Tastemade」といった動画メディアがスタートアップ的にお金を集めて動いているのを見て「これを日本の音楽を中心としたカルチャーでやりたいな」と。そのアイディアをエイベックスの上司に伝えると、彼自身も次は動画が来ることを見抜いていて。そこで新人開発ができればいいという考えが根底にあったので、「僕がやろうとしている動画メディアをやれば、そこで新しいカルチャーの固まりみたいなものができて、そこから新人も出てくるかもしれないじゃないですか」と提案したら、OKをもらって、社内ベンチャーという形で始めたのが「lute」です。

 

 

「ここに所属していたら大丈夫」と安心できるようなレーベル

 

lute株式会社 代表取締役社長 五十嵐弘彦氏

 

―― 「lute」は社内ベンチャーだったんですね。それが2015年ですか?

 

五十嵐:はい。ただ「lute」は“分散型動画メディア”という考え方なので、基本的に何かを作って出したというよりは、コンテンツの1つである動画がYouTubeに上がった時点から、サービスローンチだと思っていました。「アプリ作りました!」「出ます!」みたいな感じではなくて、1本目のマルチネさん(Maltine Records)の動画を撮らせていただいて、YouTubeに上げた時からスタートという認識です。

 

現在、エイベックスは社内改革を行っていて、思想としてシリコンバレーなどのスタートアップの考え方に倣ってやろうという風潮がありました。なので、社内ベンチャーであるluteに対しても「フレキシブルに動いていいよ」というスタンスをずっと取ってくれていました。「社外から投資家を募ってもいい」という話ももらったので、資金調達に動いたら社外からのお金が集まりましたので、法人化しました。

 

―― 「この時期には独立しよう」という目標で動いていたんですか? それとも体制が整ったからという感じなんでしょうか?

 

五十嵐:正直に言いますと偶然なんですよね。エイベックスもすごくサポートしてくださったので、「ありがたい」「残ろう」という気持ちもありましたし、ただ、世の中の流れを見たときに、これからは動画ベンチャーの群雄割拠の時代に入るので、これは攻めなきゃいけないなという気持ちもあったんです。出資をしてくれる会社の方たちとブレストをしている中で、我々がやっていくビジネスモデルや、新しい動画メディアの運営の仕方を見出せたことも大きかったです。色々なタイミングが重なったんです。

 

―― luteがスタートしたときに思想やコンセプトと言いますか、「これだけは譲れない」みたいなものは何があったんですか?

 

五十嵐:これはあんまり定量的じゃないんですが、「レーベルとしての価値をきちんと確立させて、レーベルに属している人たちが『ここに所属していたら大丈夫』と安心できるようなものにしたい」という想いがありました。レーベルという言い方をすると、いわゆる“ミュージックレーベル”という捉え方になってしまいがちですが、僕らはそういう意味で言っているわけではないんですね。

 

僕たちは“レコード会社”というビジネスモデルを全然否定しているわけではなくて、もちろん必要なものだと思うんです。ただ、ある程度の数を売らないといけない大きな屋台骨がレコード会社だとすると、逆にすごくスモールな形で音楽ビジネスをやる人って増えていると思うんですね。パッケージを売ることだけにとらわれずに、360度ビジネスを小さい形でやろうという人たちもいっぱいいるだろうし、ライブや物販の比重を多めにするといった工夫をしている人も少なくない。これは読者の皆さんには「釈迦に説法」になってしまうと思うんですけど(笑)、数人規模の会社ならそれは成立するんですね。そんな中で、luteはレコード会社のアーティストが所属してもいいし、個々でやっているような人たちに使ってもらっても全然いいものだと思っています。あたらしい形で「所属」することにトライできる、一つの場所としての「レーベル」だと思っています。

 

昨今“仕事の仕方論”や、ライフスタイルの文脈でもよく語られる価値観として「1つに縛られなくていい」「色々なところに帰属すべきだ」という考え方がありますよね。僕はそれってアーティストも一緒だと思っているんです。「ディストリビューションはここからだけど、映像を出すときにはlute」みたいに、いくつもの界隈に所属していてもいいんじゃないかなと。そこで選択されるためには、luteのブランドイメージはやはりカッコイイものじゃなくてはいけなくて、そこは譲れないと考えています。

 

 

luteから“β”を外す意味

 

―― アーティストや作品の選定はどういうプロセスでされているんですか?

 

五十嵐:基本的にみんなで話し合いながら、最終は僕が決めています。選定に関して「どうしてなんですか?」とか「ジャンルなんですか?」とか聞かれるんですけど、明確な基準がないんですよ。

 

―― 最初がマルチネで、次が掟ポルシェ(ロマンポルシェ)さんとなったときに、凄くビックリしたんですが(笑)、文脈は繋がっているなとも思ったんですよ。VICEよりもカルチャー的というか、東京シーンの現在みたいなものを感じました。

 

五十嵐:ありがとうございます。その時々でホットなものに触れていれば、それがどの音楽のジャンルであろうが、それこそディストリビューションレーベルに所属していようが、関係ないかなって思っています。でも、そこは個人の趣味と言い切っています。

 

―― でも法人化に伴って、関わってくる人数も増え、組織が大きくなる中でレーベルのブランドイメージを守るのって結構大変だと思うんですが。

 

五十嵐:そこに関しては、結構ドラスティックに僕が毎回ジャッジをするようにしていこうと思っています。もちろんみんなの意見も聞きますし、やはり僕が分からないジャンルもあるので、それは信用できる詳しいメンバーに僕を説得してもらうという(笑)。すごく偉そうな言い方になっちゃうんですが、そうやって、最終的に僕が「OK」って言うように毎回しています。こういうのって感覚的なものでルール化できないですから。

 

ただありがたいのは、luteにのメンバーって割とそれが共有できている人というか、僕はお酒飲むのが好きなので、結構飲みに行って語り合ったりするからかなと思うんですけど…(笑)。未知のものに出会うのって嬉しい感覚ですが、悪い意味で「何だそれっ?!」という感覚はチーム内にはないです。

 

―― luteってずっと謎の集団だなと思っていたんですよ。意図的なのかなって思うくらい実態の分からない…これは狙っていたんですか?

 

五十嵐:狙いました。もし、「エイベックスの社内ベンチャーとして始めている」と言ったら、ネームバリューで話題は作れたと思うんです。ただそれをやってしまうとエイベックスのプロモーショナルメディアになってしまうし、インディペンデントメディアにならないから、どこがやっているかはひた隠しにしました。あと、裏側の思想とかを最初から語ると、ちょっとイタくなっちゃうから止めようと(笑)。

 

―― 確かに…(笑)。

 

五十嵐:アーティストさんに説明しに行くときに、僕の書いた紙芝居を持っていってプレゼンしても、なかなか伝わらないんですよね。お金は全部ウチで出して撮影するというところに関して、A&Rの方からは「全く意味が分からない。なんでそこまでしてくれるの?」みたいなことを言われますし、「こういう世界観を描きたいんです」と言っても「全部のサムネイルにluteってロゴが入っているけど、それがなんなの?」と。僕は海外のメディアを見るのが好きでよく見ていましたから「これをやるとこういう風な世界になる」というイメージがなんとなくあったんですが、それをどうにか信じてもらえるように説明していく過程で「今、対外的にあまり思想とか語らない方がいいな」と当時考えました。

 

もう1つ補足すると、うちって今までlute“β(ベータ)”という言い方をしていたんですが、ローンチのタイミングでluteから“β”を外しました。それはやっと「luteってこういうことでしょう?」と理解していただけるようになったかなと思ったからなんです。また社外から資金調達をしてやっていくことになりましたので、これからは我々が持っているヴィジョンを外に出してお話していくべきなんだと思っています。

 

lute ファウンダー

lute ファウンダー:左から 本田次郎氏、武田俊氏、古屋蔵人氏、五十嵐弘彦氏

 

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デジタルネイティブのスキマ時間にカルチャーを届ける。日本初Instagram Storiesメディア「lute」がローンチ【後半】