インターネットテレビの視聴“体験”を“習慣”に変える AbemaTV 編成制作局長 藤井琢倫氏 インタビュー

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2016/11/29 (火) - 02:30
AbemaTV 編成制作局長 藤井琢倫氏

株式会社サイバーエージェント 執行役員
株式会社AbemaTV 編成制作局長
藤井 琢倫


 2016年4月に開局したインターネットテレビ局「AbemaTV」が11月に1,000万ダウンロードを突破した。ニュースやバラエティ、アニメ、ドラマ、スポーツなど約30チャンネルを展開しており、でんぱ組.inc 最上もがら人気アーティストが出演するオリジナル番組をはじめ、MTV、スペースシャワーTVとの提携チャンネルといった音楽番組も充実している。また、ライブの生中継も好調だ。急成長を遂げた「AbemaTV」において、音楽コンテンツはどのような役割を担っているのか、番組編成を統括するAbemaTV 編成制作局長 藤井琢倫氏にお話しを伺った。

2016年11月28日掲載

AbemaTV
サイバーエージェント

 

斬新なUIと唯一無二のリニア型モデルで急成長

 

—— 改めて「AbemaTV」の特徴を教えてください。

藤井:「AbemaTV」は、テレビのように24時間編成された約30チャンネルをいつでも無料で観ることができる動画サービスで、今年4月のスタートから約7ヶ月弱で1,000万ダウンロード(2016年11月現在)を突破しました。元々は代表の藤田(藤田晋氏)がテレビ朝日の早河会長(早河洋氏 テレビ朝日会長兼CEO)と親交が深く、「新たな動画配信事業を一緒にやりませんか?」と藤田から早河会長に相談したことから開局することになりました。テレビのように24時間編成された番組表にのっとって映像が配信されるリニア型のモデルは世界的にみても「AbemaTV」しかないので、かなり独創性の高いサービスだと思います。

—— 11月に1,000万ダウンロードを突破し急成長を遂げましたが、その理由はどこにあると思われますか?

藤井:2つあると思いますが、1つはUIが斬新でユーザビリティが高いことです。サービスを使う上でストレスに感じるであろう部分をすべて排除したのは大きいかなと。それともう1つは約30チャンネルにも及ぶコンテンツが全て無料で見られるということです。月額有料で提供する動画サービスも多数ある中、すべて無料で提供するサービスは珍しい。それが話題を呼んで、気軽さもあり、口コミでも広がっていったんじゃないかと思います。

「AbemaTV」1000万DL突破 年表
—— テレビ朝日さんと共同で制作されているニュースなど、オリジナルコンテンツにかなり力を入れているそうですね。

藤井:「AbemaTV」が世間的に認知されたのもニュースがひとつのきっかけで、本開局してすぐに熊本の震災が起こった際は、緊急で地震情報を伝える特別番組を48時間以上にわたって生放送しました。また、高畑淳子さんによる記者会見の一部始終を生中継するなど、世の中の注目が高い記者会見や突発的に発生するニュースなどを放送尺にとらわれず全て生中継したことで、タイムリーにニュース情報を得ることができるメディアとしても「AbemaTV」という名前を知ってくれた方が多かったのではないかと思いますね。

 

▲PPAP ピコ太郎 初CM|AbemaTV 1,000万ダウンロード突破記念 ピコ太郎篇 30秒

 

 

インターネットテレビの視聴“体験”を“習慣”に変える
AbemaTV 編成制作局長 藤井琢倫氏 インタビュー


番組編成の柱となる音楽コンテンツ

 

—— 音楽系のオリジナル番組も配信されていますが、「AbemaTV」の中で音楽コンテンツはどのような位置付けと考えていますか?

藤井:音楽はキラーコンテンツとして捉えています。アーティストと音楽はコアなファンを抱えているので、アニメと同様で高い視聴数を集めることができます。このジャンルのコンテンツを配信すればこれくらいの視聴数になるだろうという予測をたてられるようになってきたので、音楽コンテンツは番組編成の柱になっていると思いますね。

—— 番組の企画はどのように立てられているんですか?

藤井:オリジナル番組に関してはテレビ朝日から出向してくださっている方がプロデューサーとして立ち、外部の制作会社の方々と番組の制作をしています。音楽ライブは経験者がほぼゼロの状態からスタートしていて、ほぼ独学で、試行錯誤しながらノウハウを蓄積していきました。

—— では最初の頃はかなり大変だったのでは?

藤井:そうですね、8月は月に60本ほど音楽ライブの生中継をしました。その1ヶ月の生中継を経て、経験値を積み、成功モデルがある程度見えたので、それを元に9月・10月は音楽コンテンツの番組数を半分くらいに減らし、人気の高いコンテンツに絞ってライブを調達したり、生中継を実施しました。

—— 話題になった「TOKYO METROPOLITAN ROCK FESTIVAL 2016」の中継に関してはいかがですか?

藤井:「TOKYO METROPOLITAN ROCK FESTIVAL 2016」も「AbemaTV」本開局時のサービスブーストに大きく貢献してくれたと思っています。当時は本開局して1ヶ月だったんですが、2日間で約200万視聴という大きな視聴を獲得しました。想定を大きく上回る数字だったので、ライブの生中継に積極的に取り組むきっかけにもなりました。

—— コメントの数も相当多かったそうですね。

藤井:音楽ライブやアニメ、ドラマもそうなんですが、コメントが多い番組ほど数字がいい傾向があります。「AbemaTV」でそのときにしか見られない価値のひとつとして、「みんなで同時に共有して盛り上がっている」というのが大きいと思うんですよ。ライブに行けないけど、家でただDVDを見るよりもコメントをしながら番組を見ていると一緒に盛り上がっているような気がするんですよね。「自宅でも盛り上がってる人達と一緒に楽しめる」という楽しみ方は新しいなと思っています。

—— スペースシャワーTVとMTVのチャンネルもありますが、今後オリジナルの番組のクオリティを上げれば上げるほどバッティングしてしまうということはないでしょうか?

藤井:ないこともないですが、逆に連携できるところもあります。例えば先週[Alexandros]の独占生中継をやったんですね。そのあとに「SPACE SHOWER MUSIC CAST」で[Alexandros]特集を編成していたんですよ。「AbemaTV」での生中継のあとに「この後は『SPACE SHOWER MUSIC CAST』で[Alexandros]特集が放送されます」というように、「AbemaSPECIAL チャンネル」から他チャンネルに誘導することもできるので、連携して展開していくようなことも考えられるんじゃないでしょうか。

詳細なデータ解析でユーザーの行動を可視化—— 8月の60本生中継の経験から得られた独自のノウハウなどありますか?

藤井:最近、3夜連続というのをよくやるんですが、音楽ライブって一時的に視聴数は伸びるのですが、一夜限りの大花火という感覚が強く、一夜だけだとあまり価値がないんですね。たまたま「AbemaTV」で配信しているだけであって、それがその他の動画サービスやチャンネルだったとしてもユーザーにとっては関係ないんです。そうではなくてしっかりと「AbemaTV」に定着させることが重要だと考えています。ですから、まずは3夜連続で「AbemaTV」に来てもらえるコンテンツを用意して、視聴体験を少しでも積んでもらい、さらにそこから色んなコンテンツに促すようなことは意識的にやっています。

—— 実際にユーザーは目的の番組以外のチャンネルも視聴しているんでしょうか?

藤井:皆さん自分のお目当ての番組以外の他の番組やチャンネルに流れていますね。ここに関しては全てデータが取れています。例えば、3ヶ月連続でEXILEさんの番組を放送しているんですが、2ヶ月前のEXILEさんのコンテンツを5本以上観てくれたユーザーにだけ「プッシュ通知」を送るなど、一度離れたユーザーに再び視聴してもらえるような仕組みを積極的に取り入れ、継続的な視聴に結び付けていきたいと思っています。

—— ユーザー1人1人のデータを取れるのはインターネットならではですよね。

藤井:ユーザーの動向は細かく見ていて、例えば1ヶ月以内に同系統の複数コンテンツに対し、どれくらい継続して視聴しているかなど、細かく分析しています。「このコンテンツからこのコンテンツへの継続率は56%だけど、このコンテンツからこのコンテンツへの継続率は23%」と全て可視化することで一番関連性の高い番組をユーザーに提供していくことができるんですね。

—— マネタイズは広告収入とお伺いしていますが、テレビの広告モデルとは全く違うんでしょうか?

藤井:編成の仕方や施策はテレビの考え方とは全然違いますが、広告はテレビCMと同様にスポット枠で販売しているので、テレビの広告モデル非常に近いんですよ。1人1人にターゲティングしているのではなくて、Aという番組に配信されている広告はいつ誰が観ても同じになります。何故かというと、ターゲティングするとそのCMがリーチできる対象が狭まってしまうからですね。
 

 

インターネットテレビの視聴“体験”を“習慣”に変える
AbemaTV 編成制作局長 藤井琢倫氏 インタビュー


視聴“体験”を“習慣”に

 

—— 現場で番組を作られていて、現状の日本の音楽をどのようにご覧になられていますか?

藤井:「分散している」という言い方が正しいと思うんですが、昔みたいに一極集中型でCDが売れるというよりは、アーティストが自分でソーシャルメディアを使ってプロモーションもできるので、マニアックな人達が局所的に集まって盛り上がっている印象です。「盛り上がっている」という定義が非常に難しいですが、みんなが同じ音楽聴いている世界ではないような気がしますよね。

—— そうなると、やはり先ほどおっしゃったターゲットを絞った番組と、ジャンルが幅広いフェスの2本が強いのかなという感じがしますね。

藤井:いや、実はフェスよりも単独ライブの方が数字がいいことも多いです。そういった結果からも一極集中型じゃなくて分散型になっていきていると感じています。

「AbemaTV」10月AbemaTVオリジナル制作番組月間視聴数ランキング

▲10月AbemaTVオリジナル制作番組月間視聴数ランキング


—— 今後はどのような展開をされる予定でしょうか?

藤井:音楽コンテンツは、韓流、若手ロック、アイドル、ヒップホップなど人気のジャンルを強化していきます。あとは一発の大きい花火で終わらないように「AbemaTV」に定着性を持たせるため、データに基づいて効果的な音楽コンテンツを提供できるようにしていきたいですね。

—— 今は視聴“体験”となっているところを、“習慣”にしていくようなイメージでしょうか。

藤井:そうですね。そのために“週末スーパーライブ枠”という枠を新たに作り「週末AbemaTVでは何かしらアーティストの音楽コンテンツを放送している」という印象をユーザーに定着させようと思っています。繰り返しになりますが、音楽はコアなファンもマスもとれるキラーコンテンツです。今後事業を拡大する上で重要な柱になると考えているので、「AbemaTV」ならではの音楽ライブを関係各所と協力しながら一緒に作っていけたらいいなと思っています。

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